週末の朝、ガレージで愛車たちを眺めながら飲む缶コーヒーが一番の贅沢だと思いませんか?どうも、モーターサイクルナビゲーターのライター、田中恒一です。
私のガレージには現在、実用性の極みであるNC750X(DCT)、近所への足であるスーパーカブ50、そして若き日の思い出が詰まったVツインのBROSが鎮座しています。この3台体制、我ながら完璧な布陣だと自負しているのですが、妻には「身体はひとつしかないでしょう」と呆れられています。しかし、バイク乗りにとって車両の増車とは、人生のアルバムを増やすようなもの。やめられないんですよね。
さて、今回はそんな私の元に飛び込んできた、ミドルクラスネイキッドの興味深いニュースについてお話ししましょう。Hondaの「CB650R」と、中国の新興勢力CFMotoの「675NK」の比較です。業界歴25年の私の視点から、この対決を紐解いていきます。
目次
結論:4気筒の浪漫と安心感は、何物にも代えがたい
結論から申し上げましょう。スペックや価格でどれだけ迫られようとも、私はHonda CB650Rを推します。これは単なるメーカー愛だけではありません。
CFMoto 675NKが搭載する並列3気筒エンジンは、確かにトレンドを押さえた魅力的なパッケージです。しかし、CB650Rが守り続けている「並列4気筒」というレイアウトは、もはや絶滅危惧種であり、内燃機関の宝石です。私がかつて乗っていたCB-1やX4で感じた、あのシルキーでドラマチックな吹け上がり。それを2020年代に新車で味わえること自体が、尊い(とうとい)としか言いようがありません。
業界視点で見る、Hondaを選ぶべき3つの理由
1. 「優等生」という名の究極性能と4気筒の沼
よくHonda車は「優等生で面白みがない」と揶揄されますが、私はそれを聞くたびに「草」が生える思いです。なぜなら、機械として「壊れず、誰が乗っても扱いやすく、それでいて速い」を作るのがどれほど難しいか、業界の裏側を知っているからです。
特にCB650Rの直列4気筒エンジン。私が18歳で乗ったCB250RSの単気筒の鼓動も良かったですが、30歳で手にしたX4の大排気量4気筒の、あの怒涛のようなトルクと滑らかさは別格でした。CB650Rは、その「緻密に組まれた精密機械が回る感覚」を色濃く残しています。低回転では従順に、高回転ではF1由来の技術屋魂を感じさせる咆哮を上げる。この「4気筒の沼」に一度ハマると、他の形式では満足できなくなるのです。対するCFMotoの3気筒も元気でしょうが、Hondaの4気筒が持つ官能的なフィーリングは、一朝一夕で模倣できるものではありません。
2. E-Clutchに見る、ユーザーへの「愛」
今回のトピックで外せないのが、Hondaの最新技術「Honda E-Clutch」です。私が現在乗っているNC750XはDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)ですが、これに行き着いたのは、長年のライディングで「操作の楽しさ」と「疲労軽減」のバランスを求めた結果です。
E-Clutchは、マニュアル操作の楽しさを残しつつ、渋滞や発進時のストレスだけを取り除くという、まさに魔法のような機構です。CFMotoもクイックシフターなどの装備は充実していますが、Hondaのように「ライダーがどうすればもっと楽に、長く乗れるか」を突き詰めて、トランスミッションの構造そのものに手を入れるメーカーは稀です。ST1300パンヨーロピアンで長距離を走り回っていた頃にこれがあれば、私のツーリング人生はもっと距離を伸ばしていたことでしょう。
3. 25年の業界歴が保証する「アフターサービス」の差
CFMotoのデザインやスペックは確かに魅力的で、KTMとの提携などにより品質も向上しています。しかし、私がバイク業界で働いていた経験から言わせていただくと、バイクは「買った後」が本番です。
部品の供給体制、整備士の知識レベル、全国どこでも均一なサービスが受けられるディーラー網。これらにおいて、Hondaの右に出るメーカーはありません。特に長く乗り続けたい場合、10年後にパーツが出るかどうかは死活問題です。私の所有するBROSなんて、もう古いバイクですが、Hondaの頑丈さとパーツ供給の良さに助けられて今も現役です。新興メーカーの場合、この「安心感」という目に見えないスペックにおいて、まだHondaの背中は遠いと言わざるを得ません。
費用の目安と維持の現実
現実的なコストの話をしましょう。
- Honda CB650R (E-Clutch):
- 車両価格:約110万円前後
- リセールバリュー:非常に高い。Hondaの4気筒は資産価値すらあります。
- 部品代:適正価格。流通量が多いので中古パーツも豊富。
- CFMoto 675NK:
- 車両価格:予想では100万円を切る戦略価格の可能性あり。
- リセールバリュー:未知数。一般的に新興メーカーは値落ちが激しい傾向。
- 部品代:輸入コストや待ち時間が発生するリスクあり。
初期投資で数万円安くても、売却時の価格や部品待ちの時間を考慮すると、トータルコストではHondaの方が安く済むケースが多々あります。
購入前のチェックリスト
どちらを選ぶべきか迷っている方へ、私の独断と偏見によるチェックリストです。
- CB650Rを選ぶべき人
- 「フォン!」という直4サウンドに脳髄を刺激されたい人。
- ツーリング先でのトラブルを極力避けたい慎重派。
- 最新技術(E-Clutch)を体験しつつ、所有欲も満たしたい人。
- 長く乗って、愛車と共に歳を重ねたい人。
- CFMoto 675NKを選ぶべき人
- とにかく人と違うバイクに乗りたい個性派。
- 3気筒のパンチある加速感を安価に楽しみたい人。
- 自身で整備ができる、あるいは信頼できるショップとのコネクションがある人。
よくある質問(FAQ)
Q: 中国製バイクの品質は本当に大丈夫ですか?
A: 昔に比べれば飛躍的に向上しています。しかし、塗装の質感や樹脂パーツの耐久性、電装系の信頼性といった「経年劣化」の部分で、日本車との差が出ることが多いです。Hondaの塗装品質は、それこそスーパーカブからゴールドウイングまで一貫して高品質です。
Q: 4気筒は街乗りで扱いにくくないですか?
A: 昔のレーサーレプリカならいざしらず、CB650Rは低速トルクもしっかりあります。さらにE-Clutch仕様なら、エンストの恐怖から解放されるので、むしろ最強の街乗りバイクと言えるでしょう。NC750X乗りの私が言うのですから間違いありません。
Q: 初心者ですが、どちらが良いですか?
A: 迷わずCB650Rです。教習車にも使われるほどの扱いやすさと、Hondaドリーム店のサポート体制は、初心者にとって最強の保険です。
最後に。バイク選びに正解はありませんが、Hondaのタンクエンブレムには、創業者からの熱い魂が込められています。その歴史と技術の結晶を、ぜひその手で体感してください。

