最近、ガレージで飲むコーヒーが一段と美味しく感じる季節になりましたね。みなさん、愛車の調子はいかがでしょうか。
改めまして、ライターの田中恒一です。元バイク業界で25年、現在はNC750Xとスーパーカブ50、そして変わり種のBROSという3台のホンダ車に囲まれて暮らしています。
さて、今回は「カフェレーサーを作りたい」という、若き情熱を持った方からの相談ですね。「最初のバイクとして、自分で手を加えてカスタマイズしたい」というその心意気、業界に長くいた人間として非常に嬉しく思います。しかも、参考画像でホンダ車が多いことに気づかれたとのこと。さすが、お目が高い。
カフェレーサーといえば、1960年代のイギリスでロッカーズたちが公道レースを楽しむために改造したのがルーツですが、現代ではそのスタイリングの自由度が魅力です。私の所有するBROSも、実は海外ではカフェレーサースタイルのベースとして人気があるんですよ。アルミフレームにVツインという構成が、メカニカルで美しいからです。しかし、初心者の方が「壊れず」「苦労せず」楽しむには、もっと適した選択肢があります。
結論から申し上げますと、あなたが探している25~50馬力、650cc以下のクラスで、カフェレーサーのベースとして最適なのは、間違いなくHondaの空冷シングル、またはVツインエンジン搭載車です。具体的には「GB250クラブマン」「CB400SS」、そして少しマニアックですが「GL400/500(CX500)」あたりが鉄板です。なぜホンダなのか、その理由を私の経験と業界視点から紐解いていきましょう。
目次
1. 「優等生」だからこそ、カスタムのキャンバスになれる
よくホンダ車は「優等生で面白みがない」なんて言われることがあります。しかし、私は声を大にして言いたい。優等生であることこそが、最高の性能であると。
カフェレーサー作りというのは、外装を剥がし、ハンドルを下げ、シートを変える行為です。つまり、バイクのバランスを崩す行為でもあります。ベース車両が気難しいバイクだと、カスタムによるバランスの変化で途端に調子を崩したりします。
その点、ホンダのエンジンはとにかくタフです。私が16歳から乗り続けているスーパーカブもそうですが、ホンダの技術屋魂は「誰が乗っても、どんな環境でも走り続ける」ことに注がれています。カスタムという名の「改変」を加えても、文句ひとつ言わず回り続けるエンジンの健気さ。これこそが尊いのです。カスタムに集中したいなら、機関部の信頼性は絶対条件です。
2. 水平基調のフレームラインとエンジンの造形美
カフェレーサーの肝は、タンクからシートへと続く一直線のラインです。私が以前乗っていたX4や現在のNC750Xのような現代的なバイクは、フレームが複雑に湾曲しており、この古典的なラインを出すのが非常に難しい。いわゆるカスタムの沼にハマりやすいのです。
一方で、先ほど挙げたGB250やCB400SS、そしてGL系は、タンクを外した時のフレームラインがシンプルで美しい。特にホンダの空冷エンジンは、冷却フィンの一枚一枚まで計算され尽くした造形美を持っています。スカチューン(不要な部品を取り外すカスタム)をした時に際立つエンジンの存在感は、ホンダならではの機能美と言えるでしょう。
3. パーツ供給と情報の圧倒的な多さ
初めてのカスタムで最も恐ろしいのは、「部品がない」「直し方がわからない」という事態です。私が所有するBROSもパーツ確保には苦労していますが、これがマイナーな外車や不人気車だと目も当てられません。
ホンダのCB系やGB系は、世界中で愛されています。そのため、アフターマーケットパーツが山のように存在します。ポン付け(加工なしで取り付け可能)できるカフェシートやセパレートハンドルが豊富なのは、初心者にとって最大の味方です。加工の泥沼に足を踏み入れず、プラモデル感覚で理想の形に近づけることができるのは、ホンダという巨大メーカーの恩恵なのです。
カフェレーサー製作にかかる費用の目安
夢を形にするには、現実的な計算も必要です。初心者がショップに依頼せず、ある程度自分でやる(DIY)前提での概算です。
- ベース車両代(中古): 40万~80万円
※最近はGB250なども高騰しており、状態の良いものは価格が上がっています。正直、この価格高騰には草が生えますが、それだけ価値があるということです。 - カスタムパーツ代: 15万~30万円
※セパハン、バックステップ、シート、ウインカー、マフラーなど。 - 整備・消耗品費: 5万~10万円
※タイヤ、チェーン、オイル、バッテリーなど。ここをケチると痛い目を見ます。
合計で60万~120万円程度は見ておいた方が良いでしょう。安すぎるベース車はエンジンのオーバーホールが必要になり、結果的に高くつく「安物買いの銭失い」になりがちです。
ベース車両購入時のチェックリスト
プロの視点から、カフェレーサーベース車選びで絶対に外せないポイントを挙げます。
- タンクの凹みと内部の錆:
カフェレーサーにするならタンクを塗装し直したり交換するかもしれませんが、純正タンクを使うなら凹みは致命的。内部の錆はキャブレター詰まりの原因になります。 - フレームの加工歴:
すでに誰かがループフレーム加工(シートレールを切断・溶接)している車両は避けましょう。素人の溶接は強度が未知数で危険です。 - エンジンの異音:
ホンダのエンジンは静粛性が高いのが特徴です。「カチャカチャ」「ゴーッ」という異音が大きい場合、カムチェーンやベアリングが死んでいる可能性があります。 - 電装系の継ぎ接ぎ:
配線がビニールテープでぐるぐる巻きにされている車両は要注意。電装トラブルは初心者が最も挫折しやすいポイントです。
よくある質問(FAQ)
Q: 車検のない250ccの方がいいですか?
A: コスト面では有利ですが、400cc以上(例えばCB400SSやGL400)のトルク感は捨てがたいです。カフェレーサーは「速そうに見える」だけでなく、実際にトルクでグイグイ走ると気持ち良いものです。ご予算次第ですが、維持費を気にするなら250ccのGB250などが賢明です。
Q: 自分でカスタムするのは難しいですか?
A: ホンダ車は整備性が良いので、基本を学ぶには最適です。ただし、ブレーキや保安部品に関わる部分は、最初はプロに相談するか、経験者と一緒に作業することをお勧めします。命を乗せて走るものですからね。
Q: 結局、おすすめの一台は?
A: 私の独断と偏見ですが、「GB250クラブマン(5型)」です。単気筒ながらDOHCエンジンを積み、高回転まで回るその様はまさにホンダスピリットの塊。カフェレーサースタイルが最も似合う一台です。
あなたの最初の相棒が、素晴らしいホンダ車になることを願っています。ガレージで油まみれになる週末も、また一興ですよ。

