最近、愛車のBROSのチェーンメンテをしていたら、気づけばホイールのスポーク一本一本まで磨き上げてしまい、腰痛が悪化してしまいました。皆さん、愛でるのもほどほどにしないと体が持ちませんね。
こんにちは、モーターサイクルナビゲーターのライター、田中恒一です。元バイク業界に25年身を置き、今はNC750Xとスーパーカブ、そして古き良きBROSの3台と共に暮らしています。
さて、今回は非常に興味深いトピックを見つけました。なんと「46年間納屋で眠っていたHonda CL350 Scrambler」が800ドル(約12万円前後)で売りに出されているというのです。走行距離は9100マイル(約1.4万キロ)。ネズミが配線をかじり、タンク内のガソリンは黒く変色しているものの、キックは降りて圧縮もあるとのこと。
これは……Honda党の私からすれば、宝の山以外の何物でもありません。私の経験と技術屋としての視点から、この車両に対する見解を述べさせていただきます。
目次
結論:迷わず「買い」です。それは最高の「沼」への入り口だから
まず結論から申し上げますが、この個体は間違いなく買いです。800ドルという価格は、現在の旧車高騰相場を考えれば破格と言っていいでしょう。質問者様はノートンのレストア経験をお持ちのようですが、ホンダのレストアはまた違った感動があります。
正直なところ、このCL350の状態を聞いて、私のメカニック魂がうずいて仕方ありません。これこそが、大人の休日にふさわしい最高の「沼」案件だからです。
プロ視点で見る「絶対に買い」な3つの理由
1. ホンダのエンジンは46年程度では死なない
私が業界で見てきた中で、ホンダのエンジンの耐久性は異常とも言えるレベルです。かつて私が乗っていたCB-1やX4もそうでしたが、ホンダのエンジンは基本設計が堅実すぎて、オイル管理さえしていれば半永久的に回るのではないかと錯覚するほどです。
質問者様は「キックが動き、圧縮があるようだ」とおっしゃっていますが、これだけで勝負ありです。ピストンが固着していないホンダの空冷ツインエンジンなら、キャブレターのオーバーホールと点火系の整備で、ほぼ間違いなく目覚めます。私のスーパーカブ50も相当雑に扱われてきた個体でしたが、少し手を入れただけで新車のような鼓動を取り戻しました。ホンダの「優等生」という評価は、伊達ではありません。
2. 配線トラブルはむしろ「好機」
「ネズミがバッテリーボックスに巣を作り、配線をかじった」という記述を見て、思わず「草」が生えました(笑)。しかし、これは悲観することではありません。CL350の電気系統は、現在の私の愛車であるNC750Xのように複雑なDCT制御や電子制御スロットルなどが一切ない、非常にシンプルな構造です。
配線図さえあれば、自分で引き直すのは難しくありませんし、新品のハーネスもリプロ品が手に入りやすい車種です。ネズミの巣ごときで諦めるのはもったいない。むしろ、怪しい古い配線をすべて新品に交換する良い口実ができたと考えるべきです。
3. 「走る廃墟」スタイルの尊さ
質問者様は「ピカピカにはせず、安全に走れる最低限のレストアで、経年変化の味を残したい」とおっしゃっています。この感性、素晴らしいですね。いわゆる「ラットスタイル」や「サバイバー」と呼ばれる方向性ですが、これは本当に「尊い」選択です。
私がかつて所有していたST1300パンヨーロピアンのようなフルカウル車では、外装のヤレはただのみすぼらしさになりますが、CL350のようなスクランブラーは、錆や塗装の剥げがそのまま「歴史」という名のドレスアップになります。新品のクロームメッキよりも、46年の時を経た金属の質感のほうが、今の時代には贅沢なのです。
費用の目安:800ドルはあくまで「入場料」
車両代が800ドルというのは魅力的ですが、安全に走らせるためには追加投資が必要です。私がこの車両を手に入れたと仮定して、ざっと見積もってみましょう。
・タイヤ前後&チューブ:約250〜300ドル(硬化したゴムは即交換必須です)
・バッテリー&電装系パーツ:約150ドル
・キャブレターリペアキット:約100ドル
・ドライブチェーン&スプロケット:約150ドル
・フロントフォークシール&オイル、リアショック:約200〜300ドル
・油脂類、フィルター、ブレーキ周り:約150ドル
合計で、車両代とは別に1000〜1500ドル程度は見ておくべきでしょう。それでも、総額2500ドル以下で、自分だけの一台が仕上がるなら安いものです。私のBROSも維持費がかかりますが、かけた手間の分だけ愛着が湧くものです。
購入時のチェックリスト
明日、実車を確認されるとのことですので、以下の点を重点的にチェックしてください。
1. タンク内のサビの深さ
ガソリンが黒くなっているとのことですが、タンクの底に穴が開くほどの腐食がないかを確認してください。コーティングで救えるレベルならOKです。
2. マフラーの穴あき
CL350の特徴であるアップマフラーは貴重です。サビによる穴あきがないか、裏側までしっかり見てください。
3. 書類の整合性
「タイトル(所有権証明書)がある」と聞いていますが、フレーム番号とエンジンの番号が書類と一致しているか、必ず目視で確認してください。ここがズレていると、登録で泥沼にハマります。
よくある質問(FAQ)
Q:ホンダの旧車部品は手に入りますか?
A:CL/CB350系は世界的に人気があるため、eBayやCMSNLなどで驚くほど部品が出ます。私の所有するX4のような不人気車(失礼!)よりよほど維持しやすいです。
Q:46年放置車を直すのは難しいですか?
A:ノートンのレストア経験があるなら、ホンダの整備性の良さに感動するはずです。「こんなに理にかなった設計なのか」と、本田宗一郎氏の哲学を感じることができるでしょう。
Q:このバイクの価値は?
A:金銭的な価値以上に、「自分の手で46年の眠りから覚めさせた」という体験がプライスレスです。現代のバイクにはない、機械と対話する濃密な時間が待っています。
最後に一言。そのCL350は、あなたに発見されるのを46年間待っていたのです。ホンダのバイクは、乗り手が愛情を注げば必ず応えてくれます。ぜひ連れて帰って、再び大地を走らせてあげてください。応援しています。

