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XSR900のシートカスタム論!700ドルの壁と安価な選択肢をヤマハ党が分析

こんにちは、モーターサイクルナビゲーターのライター、井上亮です。

最近、朝のコーヒーを淹れるときの湯気の立ち上がり方で、その日の湿度がなんとなく分かるようになってきました。これこそまさに官能評価、機械に頼らないセンサーの感度向上ですね。さて、今回は海外のXSR900オーナーから寄せられた「シートカスタム」に関する悩みについて、私なりの視点で回答していきたいと思います。

相談者は2022年以降の新型XSR900乗り。「Corbin(コルビン)のシートが理想だけど700ドル(約10万円強)は高すぎる。200〜350ドル程度で似たようなルックスのシートカバーやシートはないか?」という切実な相談です。

わかります。私もTRX850に10年乗り、現在はMT-09とTRX、そしてZEALの3台体制ですが、ヤマハ車の「お尻とハンドリングの関係」は永遠のテーマですからね。特にXSR900のようなネオレトロな機体にとって、シートはスタイリングの要であり、乗り味を決める重要なインターフェースです。

結論:見た目だけならカバー交換、機能美を求めるなら妥協は「沼」の入り口

まず私の結論から申し上げますと、予算を抑えてCorbinのような「ガンファイター的ルックス」を手に入れたいなら、Luimotoなどの高品質な「シートカバー張り替え」が最適解です。しかし、座り心地やホールド感といった機能面までCorbin並みを求めるなら、安価なコンプリートシートに手を出すのは危険です。

なぜなら、ヤマハのハンドリング哲学において、シートはサスペンションの一部だからです。

価格帯別 XSR900シートカスタム比較表

まずは、市場に出回っている選択肢を整理してみましょう。論理的に比較することで、どこにお金をかけるべきかが見えてきます。

タイプ 価格帯 メリット デメリット
Corbin等(ハイエンド) $600 - $800 至高の快適性とホールド感。所有欲を満たす質感。ポン付け可能。 とにかく高い。重量が増す場合がある。財布へのダメージが深刻。
シートカバー(Luimoto等) $150 - $250 純正スポンジを活かしつつ見た目を激変できる。コスパ最強。 タッカーでの張り替え作業が必要(DIY難度中)。座り心地は純正のまま。
格安社外シート(中華製等) $100 - $200 安い。ベースごと交換なので楽。 表皮が滑る、スポンジが硬すぎる/柔らかすぎる。チリが合わない可能性大。

TRX850とMT-09から学ぶ「ヤマハのシート学」

私が20代のすべてを捧げたTRX850は、ツインエンジンの鼓動をお尻で感じながら、トラクションを掛けていくバイクでした。このとき学んだのは、シート表皮のグリップ力がハンドリングに直結するということです。

そして現在乗っているMT-09。これはXSR900の兄弟車ですが、ご存知の通りCP3エンジンのトルクは強烈です。電子制御が入っているとはいえ、加速時に体が後ろに持っていかれる感覚があります。このとき、お尻が滑ったり、スポンジが腰砕けになったりすると、せっかくの「人馬一体」感が台無しになってしまうのです。

XSR900は、MT-09以上に「見た目」が性能の一部を担っているバイクです。あの水平基調のライン、80年代レーサーを彷彿とさせるカウル形状。これこそがヤマハデザインの真骨頂であり、尊いポイントです。Corbinのシートがあれほど高い評価を得ているのは、単にフカフカだからではなく、この「ヤマハらしい美しいシルエット」を崩さずに、ライダーの骨盤を安定させる形状をしているからです。

相談者が気にしている「700ドルは高い」という点、正直言って私も同感です。シートに10万はさすがに草が生えます。しかし、安価なシートを買って「なんか違う」「お尻が痛い」となって買い直す、いわゆる「カスタム沼」にハマるよりは、最初に良いものを買ったほうが結果的に安上がりになることも、私はTRX時代に痛いほど経験しました。

おすすめの構成と具体的アドバイス

さて、相談者の予算(200〜350ドル)で、Corbinのような高級感とスタイルを手に入れるための現実的な提案をしましょう。

1. 高品質シートカバー+ゲル埋め込み(DIYコース)

これが最もコストパフォーマンスに優れています。Luimoto(ルイモト)などの車種専用設計された高級シートカバーを購入してください。これなら200ドル前後で収まります。デザインはCorbinに負けず劣らず、スエード調やステッチ入りなど、芸術的な仕上がりです。そして、浮いた予算で「ゲルザブ」のようなゲル素材を純正スポンジに埋め込むのです。これなら見た目はカスタムシート、中身は快適仕様という、私のような理屈っぽいライダーも納得の仕様が出来上がります。

2. 純正オプションまたはKelpiなどのミドルレンジ

海外では「Kelpi」のようなカスタムブランドが、XSR900向けにカフェレーサースタイルのシートカバーやリフォーム済みシートを展開していることがあります。これらはCorbinほど高くなく、デザイン性は抜群です。

注意点:ヤマハのハンドリングを殺さないために

最後に、安易な選択をする前に注意してほしいことがあります。それは「シート高」と「スポンジの硬度」です。

ヤマハのバイクは、ライダーが着座してサスペンションが沈み込んだ状態(1G')での姿勢を計算し尽くして設計されています。特にMT-09系プラットフォームは、フロントの接地感が重要です。安価なシートでスポンジが分厚すぎたり、逆にペラペラだったりすると、キャスター角への影響こそ軽微ですが、ライダーの重心位置が変わり、ヤマハ特有の「意のままに操れるハンドリング」が失われる可能性があります。

純正の着座位置を基準に、表皮のグリップ力でホールド性を上げる。これがXSR900を味わい尽くすための正解だと、私は考えます。もし相談者がDIYに自信があるなら、まずは高級シートカバーへの張り替えに挑戦してみてください。愛車のシートを自分で張り替える作業もまた、バイクとの対話であり、愛着を深める儀式のようなものですから。

それでは、良きヤマハライフを。ハンドリングの神があなたと共にありますように。

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