こんにちは、モーターサイクルナビゲーターのライター、井上 亮です。
休日にガレージで愛車TRX850のキャブレターを眺めながら、「この造形美だけで白米3杯はいけるな」とニヤニヤしていたら、妻に白い目で見られました。バイク乗りなら分かってくれますよね、このメカニカルな機能美への執着。さて、今回は海外のライダーコミュニティで話題になっていた「大排気量車ばかりの中で、あえてのWR155R」というトピックについて、私の偏愛フィルターを通して語らせてください。
目次
結論:小排気量こそ「人馬一体」への最短ルートである
いきなり結論から申し上げますが、このWR155Rというチョイス、間違いなく「正解」です。むしろ、大型バイクを経験した人ほど、このクラスの深い沼にハマる傾向があります。
私は現在、電子制御の塊であるMT-09と、アナログの極致であるTRX850、そして250cc4気筒という変態的な(褒め言葉)FZX250 ZEALの3台を所有しています。このラインナップからも分かる通り、私は「エンジンの個性」と「ハンドリングのヤマハ」に脳を焼かれた人間です。
「小さいバイクなんて初心者用でしょ?」なんて思っている人がいたら、それは大きな間違いです。かつて私がTRX850で10年間、ツインエンジンの鼓動と格闘し、その後MT-07で「軽さは正義」という真理を再発見したように、WR155Rのようなライトウェイトクラスには、バイクを操る本質的な喜びが詰まっています。アクセルを全開にできる喜び、これこそが小排気量の醍醐味であり、ある意味で最も「尊い」瞬間なのです。
徹底比較:ビッグバイク vs WR155R
なぜ今、あえて155ccなのか。私が愛するMT-09(大型)と、今回の主役WR155R(小排気量)を、私の独断と偏見に満ちた「官能評価軸」で比較してみました。
| 評価項目 | MT-09 (Big Bike) | WR155R (Little Beast) |
|---|---|---|
| スロットル開度 | 自制心との戦い(開けられないストレス) | 全開の快感(使い切る喜び) |
| ハンドリング | 電子制御とタイヤの接地感に頼る | 荷重移動とボディアクションで曲がる |
| 精神状態 | 「俺、速いかも」という錯覚 | 「俺、上手いかも」という実感 |
| 転倒リスク | 修理費と怪我のリスクで震える | 「ごめんね」で済む(※精神的に) |
| ヤマハ愛 | 最新技術への感謝 | 素性の良さへの感動 |
なぜWR155Rなのか?理論派が唸る「VVA」の魔力
ここからは少し理屈っぽい話をさせてください。私がこのWR155Rに注目する最大の理由は、ヤマハがこのクラスに「VVA(可変バルブ機構)」を投入している点です。
普通、オフロードバイクや小排気量車というのは、低速トルク重視で高回転は「ただ回っているだけ」になりがちです。かつて私が乗っていたSRX250も、シングルエンジンの鼓動は最高でしたが、高回転の伸び切り感には限界がありました。
しかし、WR155Rは違います。YZF-R15譲りの水冷エンジンにVVAを搭載することで、低回転の粘りと、高回転のパンチ力を両立させているのです。これ、まさに私がTRX850で追い求めていた「ツインのトラクションと伸びの両立」を、155ccのシングルでやってのけているわけです。技術の進歩って恐ろしいですね、草生えます。
さらに、ヤマハ伝統のセミダブルクレードルフレーム。これですよ、これ。剛性としなやかさのバランス。私がFZX250 ZEALで学んだ「フレームが仕事をする感覚」が、最新の設計で味わえるのです。ヤマハのハンドリング担当者は、本当に良い仕事をしています。
おすすめの構成:モタード化で「ハンドリング沼」へ
もし私がWR155Rを手に入れたら(既に3台あるので妻の許可が下りる確率は0.1%ですが)、間違いなく以下の構成で楽しみます。
1. 前後17インチ化(モタード仕様)
オフロードも楽しいですが、ヤマハのハンドリングを骨の髄まで味わうなら、オンロードタイヤを履かせたモタード仕様が最強です。MT-09のようなパワー任せの走りではなく、進入速度を殺さずにクリッピングポイントを舐めるように通過するコーナリング。これを覚えると、大型バイクに戻った時のライディングスキルが劇的に向上します。
2. フルエキゾースト交換
これは性能アップというより「官能評価」のためです。シングルの歯切れの良いサウンドは、ライダーのドーパミンを分泌させます。音が良ければ、通勤路ですらMotoGPのコースに変わりますからね(法定速度遵守で)。
購入時の注意点:シート高という「壁」
ただし、このWR155Rには一つだけ大きな注意点があります。それは「シート高」です。このバイク、見た目はスリムですが、シート高は880mmを超えてきます。これは私の愛車MT-09やTRX850よりも高い数値です。
「小排気量だからコンパクトだろう」と思って跨ると、足つきの悪さに絶望するかもしれません。しかし、軽い車体(装備重量134kg前後)のおかげで、片足さえ着けば何とかなります。むしろ、この腰高感がヒラヒラとした軽快なハンドリングを生んでいるので、そこはトレードオフとして受け入れるべきでしょう。
まとめ:小さいことは良いことだ
「大排気量こそ正義」という風潮の中で、あえてWR155Rを選ぶ。その選択は、バイクという乗り物の構造を理解し、操る楽しさを純粋に追求する「玄人」の証です。
私のガレージにあるTRX850が「対話するバイク」、MT-09が「刺激をくれるバイク」、ZEALが「癒やしのバイク」だとすれば、WR155Rは間違いなく「成長させてくれるバイク」になるでしょう。ヤマハが作る小排気量車には、ハンドリングへの哲学が凝縮されています。
もしあなたが、パワーを持て余すことに疲れを感じているなら、一度このクラスに戻ってみてはいかがでしょうか?そこには、忘れていた「操る歓び」という名の深い沼が待っていますよ。

