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ヤマハの至宝YZF-R6。ハンドリングの鬼が語る高回転の尊さと人馬一体の極地

皆さん、こんにちは。週末の朝は愛車のFZX250 ZEALのマフラーを磨きながら、コーヒーを啜るのが至福のひとときとなっている、ライターの井上 亮です。

さて、今回取り上げるのは、まさに「鉄の馬」と呼ぶにふさわしい、ヤマハが世界に誇るミドルスーパースポーツ「YZF-R6」です。ネット上で美しいR6の画像を見かけたのですが、思わず画面の前で唸ってしまいました。ヤマハ党として、このマシンの造形美と、そこに詰め込まれた「ハンドリングのヤマハ」の哲学について語らずにはいられません。

私のガレージには現在、TRX850、MT-09、そしてZEALという3台が鎮座していますが、もし私が「快適性」という概念を完全に捨て去ることができるなら、4台目にこのR6を迎え入れたいと本気で思うことがあります。それほどまでに、R6は尊い存在なのです。

結論:R6とは「公道を走れるレーシングマシン」ではなく「ナンバーが付いた楽器」である

まず結論から申し上げますと、YZF-R6というバイクは、移動手段としての利便性を一切排除し、コーナリングと高回転域の官能性だけに特化した、ある種の狂気を孕んだ芸術品です。

私が10年間連れ添ったTRX850が「対話しながらコーナーを駆け抜けるツインの相棒」だとするなら、R6は「ライダーの技量を極限まで試してくる、切れ味鋭い日本刀」のようなものです。ヤマハが掲げる人馬一体の思想ですが、R6の場合は馬の気性が荒すぎて、乗り手が相応の覚悟を持たないと振り落とされます。しかし、その先にある景色は他の何物にも代えがたい。

電子制御満載のMT-09に乗っている私が言うのもなんですが、R6のアナログ的な(現行は電子制御もありますが)「操作に対する忠実さ」は、まさにスポーツライディングの沼です。

徹底比較:R6 vs 歴代の愛車たち

ここで、私のバイク遍歴に基づいた視点で、R6の立ち位置を整理してみましょう。理論派を自負する私なりの分析マトリクスです。

比較項目 YZF-R6 (The Beast) MT-09 (Current) TRX850 (Best Partner)
エンジンの性格 超高回転型直4。
16,000rpmの絶叫。
低速はスカスカ(褒め言葉)。
トルクフルな直3。
全域で楽しい。
電子制御の恩恵が凄い。
鼓動感の直2。
270度クランクの元祖。
トラクションを感じる。
ハンドリング フロント重視。
カミソリのような切れ味。
入力に対して即応。
モタード的軽快さ。
ヒラヒラ舞う感じ。
接地感はR6に譲る。
リアステア重視。
アクセルで曲がる快感。
伝統的なヤマハ味。
居住性・ポジション 土下座スタイル。
手首と腰への拷問。
正直、街乗りは草。
アップライト。
殿様乗り。
一日中乗れる。
適度な前傾。
スポーツツアラー的。
長距離もこなせる。

なぜR6はここまで「尊い」のか? 数値と官能評価による分析

1. 官能的な「音」と「回転数」

私がTRX850で学んだのは、エンジンの爆発間隔が生むトラクションの面白さでした。しかし、R6の魅力は真逆のベクトルにあります。レッドゾーンが16,000rpmを超える(年式によりますが)超高回転型エンジン。これはもはや工業製品というより、楽器です。

アクセルをワイドオープンにした時の吸気音と、チタンバルブが奏でるメカニカルノイズのハーモニー。これはヤマハが楽器メーカーでもあることを思い出させてくれます。MT-09のトリプルサウンドも野性的で好きですが、R6の「突き抜けるような高音」は、脳内麻薬がドバドバ出るレベルです。まさに尊い。

2. ヤマハハンドリングの真骨頂「デルタボックスフレーム」

私の愛するTRX850はトラスフレームでしたが、ヤマハのスポーツバイクの王道といえばやはりデルタボックスフレームです。R6の車体剛性は、サーキットでの高荷重に耐えるために設計されています。

フロントタイヤから伝わってくる情報の解像度が異常に高いのです。「あ、今タイヤが潰れているな」という感覚が、手のひらに直接伝送されてくる感覚。これは、私がMT-07に乗っていた時期に感じた「軽快さ」とは異なり、「精密さ」と呼ぶべきものです。理屈で語るなら、キャスター角やトレール量の設定が絶妙なのですが、感覚で言えば「思ったラインをミリ単位でトレースできる」快感です。

おすすめの構成と楽しみ方

もしあなたがR6を手に入れるなら、以下の構成をおすすめします。

購入前の注意点(という名の愛ある警告)

R6は素晴らしいバイクですが、いくつか覚悟が必要です。

まず、ポジションがきつすぎて笑えます(草)。「土下座スタイル」と形容されますが、タンクに覆いかぶさるような姿勢は、腹筋と背筋がないと手首が死にます。TRX850の前傾が可愛く思えるレベルです。

次に、低速トルクの薄さです。MT-09のように「適当にアクセルを開ければドカンと進む」バイクではありません。適切なギアを選び、回転数をキープする。ライダーがサボると、R6は途端に不機嫌になります。しかし、その「操っている感」こそが、ヤマハ党を惹きつけてやまない理由なのです。

「人馬一体」とは、馬の能力をライダーが引き出し、ライダーの意思を馬が瞬時に理解する関係性。R6は、その究極の形の一つだと私は確信しています。ヤマハの芸術性に陶酔したい方は、ぜひ一度、この孤高の存在に触れてみてください。ただし、その後の人生がR6中心に回るようになっても、私は責任を持ちませんよ。

それでは、良きバイクライフを。私も今から、3台の愛車たちのチェーンメンテという名の沼にハマってきます。

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