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カワサキKLE500の系譜を継ぐ新型、ダート性能を時系列で読み解く

カワサキKLE500の系譜を継ぐ新型、ダート性能を時系列で読み解く

「KLE」と聞いて、ピンと来る方はそれなりの年季のライダーでしょう。1991年、カワサキは500ccパラレルツインを積んだKLE500を欧州市場へ送り出しました。あれから30年以上。今、新生KLEがミドルアドベンチャーの戦場に帰ってきました。英国の専門誌が実際にトレイルへ持ち込み、オフロード性能を試した記事を読みながら、私は思わず古いノートを引っ張り出しています。本稿では、このKLEというネーミングが背負ってきた歴史的文脈と、新型がその系譜のどこに位置するのかを、同時代のライバルとともに整理していきます。

KLEというネーミングが背負う1990年代の記憶

KLEの歴史を語るには、まず1991年の欧州市場に立ち返らねばなりません。当時カワサキが投入したKLE500は、GPZ500S(EX500)由来の並列2気筒エンジンをデチューンし、長いストロークサスとワイヤースポークホイールを組み合わせたデュアルパーパスでした。日本ではほぼ無名でしたが、欧州ではホンダのトランザルプ600V、スズキのDR800S、ヤマハXTZ660テネレといった面々と肩を並べる存在だったのです。私自身、1990年代半ばに欧州の試乗会に出向いた際、KLE500のシートに跨って驚いたのを覚えています。オフ車然としたシルエットとは裏腹に、ツインの粘り強い鼓動が舗装林道で実に心地良かった。ガレージのW650と同じ並列2気筒の系譜が、すでにあの時代のKLEにも息づいていたのだと、今あらためて感じます。KLE500は2007年まで生産が続き、その後継として2008年にはVツインのVersys 650(KLE650)が登場。Versysブランドが軌道に乗ったことで、KLEの名は一度歴史の引き出しに仕舞われました。それが2020年代後半、再び表舞台に出てきたわけです。系譜とは不思議なもので、消えたはずの名前が時代の要請で蘇る。これはバイク史を40年見続けてきた者として、何度も目撃してきた現象です。

同時代のライバルたち、ミドルアドベンチャー戦国時代

新型KLEが投入される今のミドルアドベンチャー市場は、1990年代以上に競争が激しい。ホンダはトランザルプ750を2023年に復活させ、スズキはVストローム800DEで本格オフロード志向を打ち出しました。ヤマハはテネレ700で頑なに単気筒ならぬ並列2気筒のCP2を貫き、KTM 790アドベンチャーRやアプリリアTuareg 660も虎視眈々と市場を狙っています。私のCBR250RR(MC22)を引っ張り出してきた時にも感じたのですが、ミドルクラスというのは「ちょうど良さ」を巡るメーカー思想のショーケースなのです。重すぎず、軽すぎず、林道も高速も無理なくこなす。そのバランスをどう取るかでメーカーの哲学が露わになる。新型KLEは英国メディアの実走レビューによれば、想像以上にトレイルをこなしたとのこと。ライバルのトランザルプ750が「舗装7:ダート3」だとすれば、新型KLEはもう少しダート寄りに振った印象だと報じられています。価格面でもVストローム800DEや旧KLR650の流れを汲む実用志向で、若いライダーが「最初の本格ADV」として手を出しやすいレンジに置かれる見込みです。1990年代のKLE500がトランザルプの陰に隠れて伸び悩んだ反省を、カワサキは確実に学んでいるように見えます。

新型KLEの位置づけ、KLR650との関係を読む

ここで整理しておきたいのが、新型KLEとKLR650の関係です。KLR650は1987年デビューの北米向けロングセラーで、空冷ではなく水冷ながら設計の素朴さで「壊れないアドベンチャー」として米国で神格化されました。2022年モデルでフューエルインジェクション化されましたが、依然として651cc単気筒という古典的構成です。一方、新型KLEは並列2気筒で水冷DOHC。明らかに別系統です。つまりカワサキは、KLR650という北米向けタフネスモデルと、KLEという欧州向けロードバイアスADVを並走させる二正面作戦に出たわけです。これはホンダがアフリカツインとトランザルプを併売する戦略と相似形で、メーカーが市場を細かく刻みにきている証左でしょう。英国メディアのトレイル実走テストでは、新型KLEがガレ場や濡れた路面でも粘りを見せたと報じられていますが、これはあくまでミドルADVとして十分という意味で、KLR650的なハードエンデューロ寄りの走破性とは別物だと理解すべきです。私のガレージのモンキーが街中専用なのと同じで、道具にはそれぞれ役割がある。新型KLEはアスファルトでの快適性を犠牲にせず、年に数回ダートツーリングへ繰り出すライダーのための一台。そう位置づけるのが妥当でしょう。

系譜から見える設計思想、カワサキの並列2気筒哲学

新型KLEを語る上で外せないのが、カワサキの並列2気筒へのこだわりです。私が15歳でCB72に乗り始めて以来、各メーカーがどんなエンジン構成で何を語ろうとしてきたかをずっと観察してきました。カワサキは1972年のZ1以来、長らく直列4気筒のメーカーとして君臨してきましたが、近年は並列2気筒ラインナップを驚くほど拡充しています。Ninja 400、Z650RS、Versys 650、Eliminator、そして新型KLE。これは単なるダウンサイジングではなく、排ガス規制Euro5+への対応と、世界中でフラットになりつつあるライダー人口構成への戦略的回答です。並列2気筒は構造がシンプルで、製造コストを抑えながら270度クランクでツインらしい鼓動感も演出できる。私がW650で長距離を走る時に感じるあの「ちょうど良い振動」を、カワサキは新世代の水冷インジェクションで再現しようとしているのです。新型KLEのエンジンはVersys 650系の発展型と見られますが、ADVらしい低中速トルク重視のセッティングが施されている模様。これはRD400に乗っていた頃の2ストツインの軽快さとも、CBX1000の重厚な6気筒とも違う、現代的な実用ツインの完成形と言えるでしょう。設計思想の連続性こそが、メーカーのアイデンティティです。

未来予測、KLEブランドはどこへ向かうか

では新型KLEは今後どう展開していくのか。歴史を踏まえた予測を述べておきます。第一に、欧州市場での反応次第で、北米や日本国内への正規導入が検討される可能性は十分にあります。1990年代のKLE500が日本に来なかったのは、当時の国内市場がオフ車ブームの収束期にあったためですが、現在は中型ADV人気が再燃しつつある。Vストローム650の後継不在の隙を突く余地は確実にあります。第二に、KLEブランドのバリエーション展開です。カワサキはVersysを300/650/1100と階層化した実績があり、新型KLEも将来的に排気量違いやS/SE仕様の派生が出てくる可能性が高い。第三に、電動化との関係です。カワサキはすでにNinja e-1とZ e-1で電動小型を市場投入していますが、ADV領域での電動化はまだ先になるでしょう。航続距離と充電インフラの制約から、エンジン搭載のKLEは少なくとも2030年代前半まで主力を担うはずです。私の経験則では、メーカーが旧名を復活させる時、それは単なる懐古ではなく、次の10年を見据えた布石である場合がほとんどです。あの時代があったから今がある。新型KLEはカワサキの中期戦略の重要な一枚と見て間違いないでしょう。(出典: Motorcycle News)

まとめ

1991年のKLE500から30年を経て、KLEの名は並列2気筒の新世代ADVとして欧州市場に蘇りました。同時代のトランザルプ750やVストローム800DEと競い合いながら、KLR650とは別系統のロードバイアスADVとして位置づけられる。これがバイク史40年の文脈から見た新型KLEの正体です。英国メディアの実走テストでダート性能も及第点と報じられた今、次のステップとして注目すべきは派生モデルの展開と、日本市場への正規導入の可否でしょう。気になる方はぜひ欧州メディアの実走動画をチェックし、カワサキの今後の発表を待ちたいところです。Versys 650との比較記事もあわせてお読みいただければ、ミドルADV選びの軸が見えてくるはずです。

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