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FLAT OUT第1話を観た:YZF-R1とR9、MotoAmericaで戦う2台を比較する

FLAT OUT第1話を観た:YZF-R1とR9、MotoAmericaで戦う2台を比較する

ヤマハの新ドキュメンタリー『FLAT OUT』第1話、ご覧になりましたか。MotoAmerica第2戦ロード・アトランタの舞台裏に密着した映像なのですが、ここで主役を張るのがYZF-R1とYZF-R9という、世代もカテゴリーも異なる2台です。Superbikeで戦うR1と、Supersportに投入された新型R9。どちらがレースマシンとして「面白い」のか、どちらが市販車として我々の心を掴むのか。TRX850を10年乗り倒し、今もMT-09で電子制御の進化を体感している私から見ると、この2台の比較はそのままヤマハのスポーツ思想の現在地を映す鏡なのです。今回はFLAT OUTの内容を踏まえつつ、R1とR9を真っ向から比較していきます。

YZF-R1とYZF-R9、スペックで見る両者の立ち位置

まず両車の基本スペックを整理しておきます。YZF-R1は998ccのクロスプレーンクランク直列4気筒、最高出力は約200psクラス、車両重量は装備で200kg前後。一方の新型YZF-R9はMT-09と同じ890ccのCP3エンジン、3気筒で約117ps、軽量なフレームを纏ったミドルスーパースポーツです。

数字だけ見れば「上位機種と中間機種」の構図ですが、FLAT OUTを観ると話はそう単純ではありません。Strack RacingではSupersport2冠のMathew ScholtzがR1でSuperbikeに昇格し、同チームのBlake DavisがR9でSupersportを戦う。さらにLiberty Yamahaの南アフリカ出身Dominic Doyleが新型R9を駆る。つまりR9は単なる入門スポーツではなく、戦闘力で評価されるレーサーの素材として位置づけられているわけです。

私がTRX850に乗っていた頃、270度クランクのツインで「鼓動を残しつつ高回転で回す」という思想に痺れました。R1のクロスプレーンも、R9のCP3も、その延長線にある「不等間隔爆発で路面追従を稼ぐ」というヤマハの一貫した設計思想です。気筒数こそ違えど、トラクション重視という哲学は共通しているのが面白いところ。スペック表の数字を超えて、両車には血脈の繋がりがあるんです。(出典: https://www.youtube.com/watch?v=ZwlagDVdZNI)

エンジン特性の違い:CP4の獰猛さ vs CP3の俊敏さ

ここが両車の最大の分岐点です。R1のCP4(クロスプレーン直4)は、低中速で粘り強くトラクションを稼ぎつつ、1万rpmから上で炸裂するような加速を見せます。FLAT OUTでBobby FongやJD BeachがR1 Superbikeを駆る映像では、立ち上がりでリアがしっかり路面を捉えて前に進む様子が見て取れます。あれは出力の暴力ではなく、トラクション制御と燃焼の妙が生む「掴んで前に出る」感覚です。

対するR9のCP3は、私がMT-09で日常的に味わっている特性そのもの。3気筒は2気筒と4気筒の良いとこ取りと言われますが、実際に乗ると低速トルクのツイン的な押し出しと、高回転の伸びの両立が魅力です。Supersportというカテゴリーでは、コーナー進入から立ち上がりまでの軽快さが武器になる。117psという数字は控えめですが、車重とのバランスで考えれば十分すぎる戦闘力です。

ガレージにあるTRX850のパラレルツインと、MT-09の3気筒を乗り比べると、CP3は明らかに「ツインの良さを残した4気筒未満の何か」だと感じます。R9がSupersportで通用するのは、この特性が短いストレートと連続コーナーの組み合わせに刺さるからでしょう。逆にR1のCP4は、ロード・アトランタのような中高速サーキットでこそ本領を発揮する。同じヤマハでも、得意な土俵が違うのです。

価格と維持費:購入後にかかるリアルな差

市販車として考えた場合、価格差は無視できません。日本市場でのYZF-R1は税込250万円前後、YZF-R9は国内導入の正式アナウンスはまだ流動的ですが、北米の価格から推測すると150万円台に収まる可能性が高いと見ています(価格は正式発表前のため断定はできません)。100万円近い差は、初期投資としてかなり大きい。

維持費でも差が出ます。R1はハイオク必須、タイヤも前後で年間10万円コースは覚悟が必要。私の知人でR1を所有している方は、サーキット走行込みでタイヤ代だけで年間30万円使うと笑っていました。一方R9はMT-09と部品の多くを共有するため、消耗品コストはぐっと下がるはずです。私のMT-09の維持費感覚で言えば、リアタイヤは8000kmは持つし、車検も特別高くはない。

保険料も排気量区分は同じでも、車両保険の評価額が違うため月々の負担に差が出ます。さらに電子制御の世代差を考えると、R1は最新のIMU連動制御をフル装備、R9も同等のパッケージを継承していますが、サスペンションがR1のセミアクティブ(Mモデル)ほど高級ではない分、メンテナンスコストは現実的。コスパで見るならR9に大きく軍配が上がるのは間違いありません。

用途別おすすめ判定:誰にどちらが向くか

用途で切り分けると判定は明確です。サーキット主体で年間10日以上走る、タイムアタックに本気で取り組みたい、最高峰の電子制御とパワーを味わいたい——こういう方にはR1一択です。FLAT OUTでScholtzがSupersportからSuperbikeにステップアップしている描写は象徴的で、R1はライダーの腕を引き出す「上の世界」のマシンとして設計されています。

一方、峠とツーリングが7割、たまにサーキット走行会、というリアルな使い方ならR9が圧倒的に正解です。私がMT-09で感じている「公道で使い切れる楽しさ」を、よりスポーティな姿勢とカウルで包んだのがR9のはず。Supersportで戦えるポテンシャルを持ちながら、街乗りでも疲れにくい。これは大きい。

体格との相性も触れておきます。R1は前傾がきつく、低速での取り回しは正直しんどい。私は身長172cmですが、過去にR1を試乗した際、信号待ちで手首に体重が乗る感覚がありました。R9はR1よりやや起きたポジションが想定されており、日常使用のハードルは低いはずです。

もうひとつ、初めての大型スポーツとしてどちらか選ぶならR9を推します。CP3の素直さは、TRX850でツインを学んだ私から見ても「裏切らない」素性。電子制御に身を委ねつつ、自分の入力に対する反応を学べる優秀な教師になるでしょう。

総合判定:FLAT OUTが示すヤマハの本気度

総合的に「どちらが買いか」を一言で言えば、多くの読者にとってはYZF-R9です。理由は走りの楽しさ・軽快さ・電子制御・コスパの4項目で、現実の使用シーンに即した満足度が高いから。残る足回りの項目ではR1のセミアクティブサスが圧倒しますが、その性能を引き出せる場面は限定的です。

しかしFLAT OUTを観て改めて感じたのは、R1というフラッグシップがあるからこそR9のような中間機種が輝く、という構造です。Attack Performance Progressive YamahaがR1でSuperbikeを戦い、Liberty YamahaがR9でSupersportを攻める。この二段構えがあるからヤマハのスポーツ思想は厚みを持つ。私のガレージにFZX250 ZEAL、TRX850、MT-09と世代の違うヤマハが並んでいるのも、同じ理屈で説明できます。一台一台に役割があり、その積み重ねがブランドの芸術性を作っている。

もし私が今、ガレージにもう一台追加するならR9を選びます。MT-09のCP3を熟知している身として、あの素性をスーパースポーツの車体に載せたらどう化けるのか、興味が尽きないからです。R1は「いつかの夢」として大切に取っておきたい。レースの世界で戦う両車を市販車として手元に置く——これこそヤマハ党の醍醐味だと、FLAT OUT第1話を観て改めて思いました。

まとめ

YZF-R1とYZF-R9、どちらを選ぶか。判定はシンプルです。サーキット本気勢・最高峰志向のライダーにはR1。公道メインでスポーツ性も諦めたくない、コスパも重視したい多数派にはR9。CP4の獰猛さとCP3の俊敏さ、それぞれに明確な個性があり、優劣ではなく適材適所の関係にあります。FLAT OUT第1話は、その両車がMotoAmericaという同じ舞台で違う役割を担う様子を活き活きと描いていました。次のアクションとして、ぜひFLAT OUTの映像をご自身の目で確認してみてください。そしてR9の国内正式発表が出たら、最寄りのヤマハ正規ディーラーで試乗予約を入れることをおすすめします。私もMT-09との違いを確かめに行くつもりです。

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