
週末の朝、ガレージで愛車BROSのキャブレターの調子を見ながら飲むコーヒーが何よりの至福の時間です。少し肌寒くなってきましたが、空冷フィンの冷たさが手に心地よい季節ですね。

こんにちは、モーターサイクルナビゲーターのライター、田中 恒一です。元バイク業界で25年ほど揉まれてきた経験から、今回は初心者の悩みにお答えします。
さて、今回は初めてのバイクとしてホンダのCB125(おそらくCB125FやCB125Rあたりでしょうか)を購入された方からの相談ですね。「ディーラーで勧められたディスクロックを買ったけれど、ホイール(リム)に通らなくて不安だ。ブレーキディスクにしか付かないが、これで合っているのか?」という内容です。初めてのバイク、初めての防犯グッズ。不安になる気持ち、痛いほど分かります。私も16歳でスーパーカブ50に乗り始めた頃は、U字ロックの使い方ひとつで悩んだものです。
結論から申し上げますと、その使い方は完全に正しいです。安心してください。
ディスクロックは、その名の通り「ブレーキディスク」を挟み込むためのロックであり、ホイールのスポークやリムをまたぐ必要はありません。では、なぜそれで盗難防止になるのか、そして私がホンダ車と共に歩んできた経験から、セキュリティの奥深さについて解説していきましょう。
目次
1. ディスクロックが機能するメカニズムと業界の常識
まず、ディスクロックの仕組みについてです。質問者様は「ホイールごとロックしないと動かせてしまうのでは?」と心配されていますね。しかし、ディスクロックの真骨頂はそこにあります。
ディスクに取り付けたロックは、タイヤが回転するとすぐにフロントフォークやブレーキキャリパーに物理的に接触します。つまり、「ガツン」と当たってそれ以上タイヤが回らなくなるのです。これでバイクの移動は不可能になります。
私がかつて乗っていたX4という巨艦のようなバイクは、車重が凄まじく、取り回しだけでも一苦労でしたが、それでもディスクロックは必須でした。あの重たい車体でも、プロの窃盗団にかかれば数人で持ち上げられたり、転がされたりするリスクがあります。特にCB125のような軽量なクラスは、ロックをしていないとヒョイと持って行かれてしまう可能性があります。
もしホイールごとロックしたいのであれば、それは「チェーンロック」や「U字ロック」の役割になります。しかし、出先での携帯性を考えると、ディスクロックは最強の相棒です。この手軽さと防御力のバランス、まさにセキュリティ用品の沼と言えるほど、ハマると奥が深い世界なんですよ。
2. ホンダ純正・推奨品の信頼性と「適合」の意味
ディーラーが「これしか適合しない」と言った点についても触れておきましょう。これは単なるセールストークではなく、技術的な事実である可能性が高いです。
ホンダのバイクは、優等生と言われることが多いですが、それは設計が緻密で無駄がないことの裏返しです。特に小排気量車のブレーキディスクには、放熱用の穴(ベンチレーションホール)が開いていますが、この穴の径がモデルによって異なります。汎用品の太いピンのロックだと、CB125のディスクの穴に入らないことが多々あるのです。
私が現在乗っているNC750Xは、収納スペースであるラゲッジボックスが便利すぎて尊いレベルなのですが、そこに放り込むロックのサイズ選びも重要です。ホンダを知り尽くしたディーラーが選んだロックなら、ピンの太さとディスクの穴のサイズが完璧にマッチしているはずです。「専用品なんて大げさな」と思うかもしれませんが、ホンダの設計思想にフィットさせることこそ、長持ちの秘訣なのです。
3. 心理的な抑止力としての効果
3つ目の理由は、視覚的な効果です。CB125のような原付二種クラスは、海外でも国内でも非常に人気があります。なぜなら、ホンダのエンジンは壊れないから。私が18歳の時に乗っていたCB250RSもそうでしたが、ホンダの単気筒エンジンはオイル管理さえしていれば永遠に走るんじゃないかと思うほどタフです。
それゆえに、窃盗団からも狙われやすい。「ホンダ車=高品質なパーツの塊」として見られているからです。そこで、ブレーキディスクに異物が噛ませてあるという視覚的アピールは重要です。「このバイクは面倒くさそうだ」と思わせるだけで、被害に遭う確率はグッと下がります。
私のガレージには現在、NC750X、スーパーカブ50、そしてBROSの3台が鎮座していますが、たとえカブであっても必ずロックはします。愛車を守るための手間を惜しんで、朝起きたらバイクがない……なんてことになったら、もう草も生えない絶望感を味わうことになりますからね。
セキュリティ導入の費用目安
CB125クラスを守るために必要な予算感を、元業界人の視点でざっくりとお伝えします。
- 高品質なディスクロック: 5,000円〜15,000円(アラーム付きだと高くなりますが、効果は絶大です)
- リマインダーケーブル: 1,000円前後(ロックの外し忘れ防止用。初心者は必須です)
- バイクカバー: 5,000円〜10,000円(車種を特定させないことが第一の防御です)
初期投資としては2万円程度を見ておけば、それなりの安心感が手に入ります。車両価格に比べれば安い保険です。
初心者のためのディスクロック・チェックリスト
取り付けに不安がある場合は、以下のポイントを確認してください。
- ロックのピンが、ブレーキディスクの穴を完全に貫通しているか。
- キーを回してロックした後、手で引っ張っても外れないか。
- 【超重要】ロックを取り付けたことを忘れないための工夫をしているか(リマインダーケーブルの使用など)。
- ディスクの回転方向に対して、キャリパーやフォークに当たる位置を想定して取り付けているか(遊びが大きすぎると、勢いをつけて動かされた時にディスク歪みの原因になります)。
よくある質問(FAQ)
Q: ディスクロックを付けたまま発進してしまったらどうなりますか?
A: これはライダーあるあるですが、絶対に避けてください。「ガシャン!」という音と共に、最悪の場合はブレーキディスクが歪んだり、フロントフェンダーが割れたり、そのまま立ちゴケしてカウルが割れたりします。私の知人もX4でそれをやり、修理費で泣いていました。リマインダーケーブル(ハンドルに引っ掛ける蛍光色の紐)は必ず使いましょう。
Q: リアのディスクに付けてもいいですか?
A: 可能です。ただ、一般的にはフロントの方が目立ちやすく、抑止効果が高いとされています。また、センタースタンドを立てる場合は、リアタイヤが浮いてしまうことがあるので、フロントに付けるのが定石です。
初めてのホンダ車、CB125。そのエンジンの鼓動と、どこまでも走っていけそうな信頼感を長く楽しむためにも、正しいロックの使い方をマスターしてくださいね。あなたのバイクライフが安全で素晴らしいものになることを、日本のガレージから祈っています。









