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愛車の価値を見極める週末のコーヒーブレイク
こんにちは。週末の愛車磨きが終わったあとの缶コーヒーが何よりも至福の時だと感じる今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。先日、私の愛車であるBROS(ブロス)のエンジンを久しぶりにかけてみたのですが、あの独特の鼓動感と機械が目覚める瞬間の匂いは、何年経っても色褪せないものです。52歳、田中 恒一です。
さて、今回は海外の掲示板で見かけた、ある一台の興味深いバイクについての話題を取り上げたいと思います。トピックは「1980年式のHonda CB650 Customを売りたいのだが、価格設定はどうすべきか」というもの。走行距離は16,000マイル(約25,000km)、コンディションは良好とのこと。
この相談を見て、私の元業界人としての血が騒ぎました。そして同時に、ホンダ党としての熱い想いがこみ上げてきました。私のバイク人生は16歳のスーパーカブから始まり、CB250RS、X4といった名車を乗り継ぎ、現在はNC750XとBROS、そしてカブという3台体制に落ち着いています。特にこの「1980年」という時代は、私がバイクに憧れ始めた原点に近い時代。そこにある「価値」について、少し深掘りしてお話しさせてください。
結論:そのバイクは「優等生の皮を被った宝」である
まず結論から申し上げますと、このCB650 Custom、安易に手放すべきではありません。そして、もし売るなら「強気」の価格設定からスタートすべきです。なぜなら、40年以上前のホンダ製空冷4気筒が「素晴らしい走行状態(great running condition)」で残っていること自体が、現代においては奇跡に近く、非常に尊いことだからです。
いわゆるCB750FやCBXのような派手なプレミア価格がつくモデルではないかもしれません。しかし、質実剛健な作りと、当時のホンダが北米市場を強く意識して投入した「カスタム(アメリカン)」スタイルの和製クルーザーは、今まさに再評価の波が来ています。安売りして買い叩かれるなんて、正直言って草が生えるレベルのナンセンスです。
業界視点で見る「価格が読みにくい」3つの理由
元業界で25年働いていた経験から、なぜこのバイクの価格設定が悩みどころなのか、そしてどこに価値を見出すべきか、3つの視点で解説します。
1. 「ナナハン」ではない、650ccという絶妙な立ち位置
当時、日本国内では免許制度の関係で750ccがステータスの頂点でした。しかし、この650ccという排気量は、実はホンダの技術屋魂が詰まった「最適解」の一つなんです。私がかつて乗っていたCB-1や現在のNC750Xにも通じますが、ホンダは「カタログスペック」よりも「実用域での扱いやすさ」を追求するメーカーです。
CB650は、名車CB500/550の流れを汲むSOHCエンジンを搭載しています。DOHC全盛期に向かう中で、あえて熟成されたSOHCを選んだ信頼性。この渋さ、分かりますでしょうか。X4のような怒涛のトルクも魅力的ですが、この時代のSOHC4気筒が奏でる「ヒュルルル」という滑らかな排気音は、まさに芸術。マニアにとっては、CB750Fよりもこの「枯れた技術の完成形」こそが沼なのです。
2. 走行距離16,000マイルの重み
約25,000kmという距離は、現代のNC750Xなら「慣らし運転が終わった程度」と言えますが、44年前のバイクとしては奇跡的な少なさです。私が所有するBROSも古いバイクですが、ホンダのエンジンは本当に壊れません。適切なオイル管理さえしていれば、地球を何周でもできる耐久性を持っています。
ただし、放置車両であれば話は別です。しかし今回の相談者は「グッド・ランニング・コンディション」と言っています。これが本当なら、キャブレターの同調やゴム類のメンテナンスが行き届いている証拠。この「即乗れる」という付加価値は、レストアベース車とは比較にならないほどの高値を正当化します。
3. オリジナル状態の希少性
80年代初頭の「カスタム」モデルは、段付きシートやプルバックハンドル、小ぶりなタンクなど、独特のスタイルを持っています。これをカフェレーサーに改造してしまう若者も多いのですが、オリジナルで残っている個体は年々減少しています。
私のX4もそうでしたが、純正スタイルのバランスの良さは、メーカーの開発陣が血の滲むようなテスト走行を繰り返して導き出したものです。その純正状態を維持しているだけで、コレクターズアイテムとしての価値は跳ね上がります。
売却価格の目安と戦略
具体的な金額を提示するのは市場(国や地域)によるため難しいですが、私がアドバイスするとすれば以下の通りです。
まず、同年代の「不動車」や「レストアベース」の価格を調査し、その3倍〜4倍の価格をスタートラインとして設定しても良いでしょう。eBayや現地のクラシファイドを確認してください。
安く売り急ぐ必要は全くありません。この手のバイクを探している層は、金額よりも「状態」と「オリジナリティ」を重視する中高年のベテランライダーが多いからです。彼らは価値あるものには対価を支払います。写真映えするクロームメッキの輝きをアピールすれば、必ず良き理解者が現れるはずです。
売却・査定前のチェックリスト
もし売却を進めるのであれば、以下のポイントをクリアにしておくと、買い手に対してプロフェッショナルな印象を与え、高額売却に繋がります。私の経験上、ここがしっかりしていると「おっ、このオーナーは分かっているな」と思います。
・ガソリンタンク内の錆はないか(コーティング済みならアピールポイント)
・充電電圧は正常か(当時のホンダ車の数少ない弱点であるレギュレーター周り)
・エンジンの冷間時始動性は良好か
・タイヤの製造年式(溝があっても古いとマイナス査定)
・純正工具やマニュアルの有無(これがあると尊さが爆上がりします)
よくある質問(FAQ)
Q. なぜDOHCのCB750Fの方が人気があるのですか?
A. 漫画やレースの影響が大きいです。しかし、SOHCのCB650には、よりマイルドで人間味のある乗り味があります。スペック競争から降りた大人の選択肢として、近年再評価されています。
Q. 40年前のバイク、本当に大丈夫ですか?
A. ホンダに関しては「イエス」と言い切る自信があります。私が今も乗っているBROSもカブも、基本的なメンテだけで元気に走ります。ホンダの「優等生」という評価は、決して退屈という意味ではなく、いつの時代もライダーを裏切らないという最高の性能を指すのです。
Q. 売りに出す際の写真はどこを撮るべき?
A. 全体像はもちろんですが、エキパイの集合部、エンジンフィンのアップ、そしてメーター周りの動画を撮ってください。特にホンダのメッキ品質は素晴らしいので、そこが輝いていると非常に印象が良いです。
最後に。
1980年のCB650 Custom、それは単なる古い鉄の塊ではありません。日本のものづくりの魂が宿った遺産です。NC750XのDCTで安楽にツーリングするのも現代の賢い選択ですが、クラッチを握り、キャブレターの息遣いを感じながら走る喜びは、何にも代えがたいものです。もし手放すとしても、その価値を本当に理解してくれる次のオーナーに引き継がれることを、日本の空の下から願っています。
