
最近、朝のコーヒーを淹れるときに豆の膨らみ具合でその日の湿度を感じるようになりました。バイクのキャブレターの機嫌を伺っていた頃の癖が、こんなところにも出ているのかもしれませんね。

さて、今回は「最初のバイク」としてHusqvarna Svartpilen 401とHonda CB250Rのどちらを選ぶべきか、という非常に悩ましく、そして微笑ましい相談についてお話しします。どちらも素晴らしいバイクですが、業界に25年身を置き、16歳からカブと共に人生を歩んできた私、田中としての結論を先に申し上げます。
迷わずHonda CB250Rを選ぶべきです。
もちろん、ハスクバーナのデザインが秀逸であることは認めます。北欧デザインの斬新さは、街中で目を引くでしょう。しかし、初めてのバイクライフを「長く、楽しく、安全に」過ごすためのパートナーとして考えるならば、Hondaの右に出るものはいません。なぜそう言い切れるのか、私の過去の愛車遍歴と業界経験を交えて、3つの理由で解説します。
目次
1. 「優等生」という言葉の真の意味
Hondaのバイクはよく「優等生」と評されます。刺激が足りない、面白みがないという文脈で使われることもありますが、これは大きな間違いです。私はこれを最大級の賛辞だと捉えています。
私はかつてCB-1やBROSといった、少し癖のあるバイクにも乗ってきました。特にBROSの鼓動感は今でもガレージでエンジンをかけるたびに心が躍ります。しかし、初心者が最初に触れるべきは「ライダーの意思に忠実な挙動」です。CB250Rに搭載されている水冷単気筒エンジンは、低回転から高回転まで驚くほどスムーズです。アクセルを開ければ開けた分だけ進み、閉じれば素直に減速する。この当たり前のことが、当たり前にできる技術力の高さこそがHondaの真骨頂なのです。
一方でSvartpilen 401はKTMのエンジンをベースとしており、非常にパワフルで楽しいですが、単気筒特有の振動や低速時のギクシャク感が顔を出すことがあります。初めてのバイクで操作に不安がある中、マシンの挙動に気を使うのは避けたいところです。Hondaのエンジンは、まるで執事がライダーをサポートするかのように黒子に徹してくれます。この「気を使わせない性能」こそが尊いのです。
2. 軽さは正義、立ちゴケのリスク管理
私は30歳の頃、X4という巨大なバイクに乗っていました。直列4気筒1300ccの圧倒的なトルクは魅力的でしたが、取り回しはまさに筋力トレーニングでした。初心者にとって最大の敵は「重さ」です。
CB250Rは「Neo Sports Café」というコンセプトのもと、徹底的な軽量化が図られています。車両重量はわずか144kg前後。これは教習車よりもはるかに軽く、自転車の延長線上で扱えるほどの感覚です。対してSvartpilen 401も軽量ですが、シート高がやや高く、足つき性に不安が残る場合があります。
立ちゴケをしてしまった時、重いバイクだと心が折れそうになりますが、CB250Rなら「よいしょ」と起こしてすぐに再スタートできます。私が現在乗っているNC750Xも低重心で扱いやすいですが、CB250Rの軽快さは別次元です。初心者がライディングの楽しさを知る前に、重さという沼にハマってバイクを降りてしまうことだけは避けたい。だからこそのHondaなのです。
3. 業界視点で見る「維持」という現実
元業界人として、ここはシビアに語らせてください。バイクは「買って終わり」ではありません。メンテナンスが必要です。
海外メーカーのバイクは、部品の供給体制や整備性において、国産メーカー、特に世界一のHondaとは雲泥の差があります。もし転倒してレバーを折ってしまったとしましょう。Hondaなら翌日にはパーツが届き、週末のツーリングに間に合いますが、海外メーカーだと本国取り寄せで数週間待ち、なんてこともザラにあります。
また、メカニックの立場からしても、Hondaの設計は整備性が良く、ミスが起きにくい構造になっています。これは工賃の安さや作業の確実性に直結します。「壊れないHonda」という神話は、過酷な環境で使われるスーパーカブが証明していますが、CB250RもそのDNAを確実に受け継いでいます。トラブルフリーで走り続けられること、これ以上の性能はありません。
正直、Hondaの品質管理の厳しさを知っていると、他メーカーの電装系の弱さなどは見ていて草が生えるレベルで心配になることがあります。
費用の目安と現実的な比較
日本国内の事情も含めて考えると、維持費の差は歴然です。
- 車体価格: 投稿者さんの国では同程度とのことですが、リセールバリュー(売却価格)は圧倒的にHondaが高くなる傾向にあります。
- 車検(日本の場合): CB250R(250cc)は車検がありません。Svartpilen 401(約373cc)は車検が必要です。この維持費の差は大きいです。
- 消耗品: オイルフィルターやガスケットなど、Hondaは汎用品が多く安価です。
購入前チェックリスト
最終的な決断をする前に、以下のポイントをチェックしてみてください。
- 自宅から30分圏内に信頼できる正規ディーラーがあるか(ハスクバーナは特に重要)。
- 両足のつま先がしっかりと地面に着くか(シート高の確認)。
- 転倒した際、パーツ代と納期を許容できるか。
- 「デザイン」と「安心感」、今の自分にとって優先順位が高いのはどちらか。
よくある質問(FAQ)
Q: 250ccだとパワー不足で高速道路がつらくないですか?
A: 私も昔は「排気量こそ正義」と思っていましたが、CB250Rは軽量なので加速は十分です。法定速度内であれば全く問題ありません。むしろNC750Xに乗る今、250ccの使い切れるパワー感が恋しくなることさえあります。
Q: みんなHondaに乗っていて個性がなくなりませんか?
A: 確かに台数は多いですが、それは信頼の証です。それに、ウェアやカスタムで幾らでも個性は出せます。故障で路肩に止まっている個性より、元気に走り回れる量産型の方が、私はカッコいいと思いますよ。
Q: ハスクバーナを選んだら後悔しますか?
A: 後悔はしないと思いますが、苦労はするかもしれません。その苦労を「愛着」と呼べるようになるには、少し経験が必要です。最初の1台は、バイクの楽しさを100%享受できるHondaを強くおすすめします。
あなたのバイクライフが素晴らしいものになることを、日本の空の下から応援しています。いつか道の上ですれ違うことがあれば、ピースサインを交わしましょう。
