48気筒カワサキ「Tinker Toy」とは?KH250×16・4.2Lの世界記録車

映像で有名になった「48気筒カワサキ」の正式な呼び方は、製作者名を含む2003 Whitelock 4200cc Tinker Toyです。カワサキが試作・販売した車両ではなく、英国のスペシャルビルダーSimon Whitelock(サイモン・ホワイトロック)氏が世界記録を目的に製作したワンオフです。

要点

  • 48気筒・総排気量4,200ccの空冷2ストローク
  • 素材はKawasaki KH250の3気筒エンジン16基
  • 6列×8気筒に再構成した巨大な専用エンジン
  • エンジン始動用に別の単気筒2ストロークエンジンを搭載
  • Guinness World Recordsの「気筒数が最も多い車両用エンジン」記録
  • 2024年4月、Bonhamsで手数料込み9万2,000ポンドで落札

旧記事は短い動画紹介だけで、名称、製作者、構造、実走可否が曖昧でした。2026年8月、Guinness World RecordsとBonhamsのカタログを基準に全面改稿しています。

Tinker Toyの基本情報

項目 公表内容
製作者 Simon Whitelock氏(英国)
登録年 2003年
エンジン 空冷2ストローク・48気筒
総排気量 4,200cc
素材 Kawasaki KH250の3気筒エンジン16基
気筒配列 8気筒の列を6段
登録番号 A48 CYL
フレーム番号 SW000048
販売形態 量産・市販なし、世界に1台のカスタム

「KH250Sのエンジン1基を改造した48気筒」ではありません。KH250はもともと3気筒なので、16基分の構成部品から48本のシリンダーを集め、6つの直列8気筒列として巨大な一つの動力ユニットへまとめています。

どうやって48気筒を動かすのか

Bonhamsのオークションカタログによると、各8気筒列はKawasakiのクランクシャフト部品を組み合わせ、外側の歯車で6本のクランクシャフトを一つの主軸へ伝えます。そこからBMW K100系のトランスミッションとシャフトドライブを介して後輪を駆動する構成です。

吸気は6基のキャブレター、排気は左右それぞれ24本を集合させる構造です。48本の独立マフラーが並ぶわけではありません。点火や補機のために自動車用オルタネーターも備えます。

「49気筒」と呼ばれることがある理由

Guinness World Recordsは、巨大な48気筒本体を回すため、別の単気筒2ストロークエンジンをスターターモーターとして搭載していると説明しています。そのため車両全体には合計49本のシリンダーがありますが、走行用エンジンの記録は48気筒です。

通常の電動スターターでは本体を始動できず、小型エンジンそのものを始動装置にした発想です。48気筒が「実は飾り」で、125ccの補助エンジンだけで走るという意味ではありません。

本当に走れる?英国では公道登録

Guinnessの公式記録ページとBonhamsカタログは、この車両を英国で公道登録済みとしています。登録番号は「A48 CYL」で、英国のV5C登録書類もオークションに付属しました。

ただし、英国で登録できたことと、日本へ輸入すれば公道を走れることは別問題です。日本で登録するなら、保安基準、排出ガス・騒音、制動性能、車体寸法、灯火、製作車としての審査、通関・輸入書類などを個別に確認する必要があります。

重さ・出力・最高速は?

Bonhamsカタログは重量を約1,300lb(約590kg)としています。Gold Wing系のフロントまわり、強化されたリアサスペンション、巨大な専用フレームが必要になる規模です。

一方、信頼できる一次資料に確定した最高出力や最高速の実測値は見当たりません。KH250単体の出力を16倍する計算は、吸排気、冷却、結合損失、点火、回転数が異なるため成立しません。「500馬力」「時速320km」といった数字は推定・発言値として広まったもので、メーカー試験値ではありません。

製作者の目的は速さではなく、誰にも破られにくい気筒数記録でした。約590kgの重量、長大なホイールベース、空冷48気筒の熱を考えれば、一般的なスポーツバイクと性能を比べる車両ではありません。

2024年に9万2,000ポンドで落札

Tinker Toyは2024年4月21日、英国Staffordで開催されたBonhamsのオークションへ、製作者本人から出品されました。事前見積もりは4万~6万ポンド。落札結果は買い手手数料を含む9万2,000ポンドで、見積もり上限を大きく超えました。

落札されたのは量産車の相場ではなく、世界記録証明書、英国登録、製作来歴を備えた一点物のコレクター車です。「同じ物を注文できる価格」ではありません。

動画で始動音を確認

YouTubeで48気筒Tinker Toyの映像を見る

映像だけでは、撮影時期、路面、車両状態、暖機、燃料、整備状況までは判断できません。排気音から出力や最高速を断定しないことが大切です。

「カワサキの48気筒車」という表現の注意

エンジン素材と外装にKawasaki KH250の要素を使うため、通称として「48-cylinder Kawasaki」と呼ばれます。しかしメーカー欄として正確なのはWhitelockで、カワサキ純正の試作車・レース車・市販車ではありません。

  • 正確:カワサキKH250の部品を使ったWhitelock製48気筒カスタム
  • 誤解を招く:カワサキが開発した48気筒モデル
  • 誤り:次期KH250、限定販売車、量産プロトタイプ
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一次情報・落札記録

初出:2015年/2026年8月21日、製作者・記録・構造・落札結果を一次資料中心に確認して全面改稿。




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