【試乗レポート】Honda 400X ゆったりと風景を愉しむアドベンチャー
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「400㏄のアドベンチャー」に注目!

2019年3月22日に発売されたホンダの400㏄アドベンチャーモデル400X。

2016年の初代登場以来、ビギナーからベテランまで、様々なライダーから幅広く支持を集める人気のアンダー・ミドル・アドベンチャーモデルです。

中型二輪免許で乗れるアドベンチャーと言えば、SUZUKIのV-STROME250やKawasakiのVERSYS-X250、ヤマハのツーリングセローをそれに数えても、250㏄クラスが中心。

400Xは現在、国産400㏄クラス唯一のアドベンチャーモデルであるだけに、興味を持っている人も多いのではないかと思います。

今回はホンダモーターサイクルジャパン様から400Xをお借りして、その乗り味の魅力について探っていきたいと思いますよ。

まずは外観を見てみよう

400XはVFR800XNC750Xといったホンダのアドベンチャーシリーズである「X」ファミリーの末っ子的存在。

流石に兄貴分の車両たちに比べるれば、実車の外観は小ぶりに感じるわけですが、


縦に長いスクリーンやハンドル幅の広さは、その車体を400㏄にしては少し大柄だと感じさせるところです。

スッキリとした印象を与えるフロントマスクをはじめ、全体のシャープなフォルムは先代から受け継がれたもの。

新型は、’16年モデルとの外観の差は少ないように見えますが、フロントホイールが17→19インチへと大径化されたことが大きな変更点です。


ホイールのデザインも一新されたこの19インチホイールからは、安定感の増した乗り味が予見されます。


前から見ると大きさを感じる反面、リア周りはコンパクトな印象。

乗り込もうとするこの角度からの眺めは、シート周りを低く見せていて、400xのウエルカムなキャラクターをうかがわせているようです。

足つき性やライディングポジションをチェック

196kgと200kgを切る車両装備重量は同クラスのホンダ車の中でも軽量なもの。

乗り込んで車体を垂直にすると、取り回しの軽さに親しみを感じます。

400Xのシート高は、800mmジャスト。

CB400SFが755mm、また400Xとフレームやエンジンを共有するCBR400Rが785mmなので、クラスの中では若干高めのシート高めな方だとは思います。

しかし、概して車格が大柄なアドベンチャーモデルに限って言えば決して高いシート高ではなく、むしろ低めで優しいシート高と言えるでしょう。

ちなみに、私の身長は162㎝で座高は91㎝と小柄で短足な体形。


それでも両足を足の親指の付け根まで深く接地させることができます。


ライディングポジションとしては、ハンドルがライダーに程よく近く、高さもひじの位置に近いため、ライダーは直立したポジションでゆったりと乗ることができ、視界も広くとることできます。

また、シートも座面が広く、それでいて股周りが絞り込まれているので足を下に降ろしやすいのが好印象です。

とにかくパッと跨った瞬間から、すぐに馴染めるライディングポジション。

「さて、どこへお連れしましょうか?」

と、誘われているかのように、ロングツーリングの行き先を様々に想像させてくれます。

乗り手を急かさないジェントルなエンジン

イグニッションキーを回すと、ネガポジ反転液晶のメーターパネルが起動。

タコメーターはもう少し大胆に大きくても良かったのかなとは思いますが、スピードメーターの丸みのある太い文字や、その他の情報の配列も視認性が高いものです。

スターターボタンを押すと、180度クランクの並列2気筒エンジンが、トットトトトォと軽ろやかな音とともに目を覚ましました。

ギアを入れて、クラッチをゆっくりとリリースしていくのですが、車体を押し出していくトルク感はそう太いようには感じません。

2気筒のアドベンチャーモデルということで、乗車前は初速にトルクの太さを期待していたのですが、エンジンフィーリングは実にフラット。


ホンダがHP上に示す出力特性表の通り、パワーの立ち上がり方には唐突さがなく、スーッと伸びやかに加速していきます。

これは恐らく、パワー感やスピード感にこだわれば、若干物足りいと感じるところかも知れません。

しかし、この癖のないパワーの伸び方は、ロングツーリングでも疲労につながる嫌味がなく、様々なスキルのライダーを受容し易い特性。

アドベンチャーバイクのパワーユニットとして非常にジェントルなエンジンだと言えるでしょう。

アクセルレスポンスも先代よりも向上したということですが、確かにアクセル操作に対する反応が良く、「ツキのいいエンジン」と言った印象です。

またクラッチはアシストスリッパークラッチとなっています。

まずアシスト機能に関してですが、クラッチレバーの操作感が本当に軽くて楽。

実は400Xの試乗直後に自分の愛車(MT-10SP)に乗ってみたのですが、「アレ、MTってこんなにクラッチ重かったっけ?」と思ってしまうほどでした。

例えばこれなら、積極的に下道を使って目的地をあえて設定しないいような気ままにツーリングでも、自然と航続距離を伸ばすことができるかもしれませんね。

また、スリッパー機構はシフトダウン時にリアタイヤにかかるの過度制動力を逃がしてくれるもの。

例えばサーキット走行などで、コーナー手前の過度なエンジンブレーキで、リアタイヤがホッピングするのを防いでくれるのがこのスリッパー機構。

アドベンチャーモデルである400Xの場合は、フラットダートなど、ラフな路面でのシフトチェンジを安心して行うのに有効で、舗装路においても減速時の扱いやすさを感じることができました。

アドベンチャーとして申し分ない車体のしっかり感

2019年11月開催のEICMA (ミラノ国際モーターサイクルショー)では、「500X」として発表されたこのモデル。

日本国内の免許制度に合わせて400ccにスケールダウンされていることを知れば、エンジンの大人しさも納得と言ったところかも知れません。

しかし、500ccのキャパシティーを備えたフレームだけあって、車体にはしっかりとした剛性感と、それに伴う安心感を感じますね。

先述の通り400Xは、2019年型CBR400Rとエンジンやフレームなど、基本的な車体構成を共有。

しかし、キャスター角はCBR400Rより  2°寝かせられたので、インチアップされたフロントホイールと共に直線での安定性を増強したものとなっています。

これを意識しながら、車体の安定感に注目しながら走らせてみると、その狙い通り、市街地から高速道路まで、ひとクラス上の安定感とともにゆったりとした気分で走ることができました。

かと言って、この乗り味は「ビギナー向けの退屈なバイク」ということではありません。

ひとたびワインディングに持ち込めば、タイトなコーナーもスパッとこなす器用さも見せ、ちょっとしたライダーの我儘にも難なく付き合ってくれます。


※公道では、速度を控えて安全運転を心がけましょう。

また、ブレーキはフロントにφ320mm・リアはφ240mmのウェーブディスク。

タッチに対してリニアな制動力の立ち上がり方は好印象で、先述のスリッパークラッチと共にリアブレーキをうまく使えば、コーナーでリズミカルな動きをしっかりと愉しむことができます。

タイヤもアドベンチャーらしくオフ走行を意識したデュアルパーパスタイヤ。

前後ともABSを標準装備しているので、ラフな路面でのブレーキングや、急な天候の変化など、様々な路面状況でも制動時の安度が高いのは、アドベンチャーモデルとして頼もしいところですね。

さらに、フロントリアともにプリロードアジャスターを装備。

コーナリング時のサスをの動きを好みの感触に変えることができます。

これらにより、積載物の重量が増した場合の姿勢変化を緩和させることもできるので、400Xにおいてはスポーツ装備というよりも、ツーリングの安全装備の一つとして捉えておくとよいでしょう。

リラックスして乗れる豊かな高速性能

馴染みやすいライディングポジションと先述のアシストクラッチのおかげで、市街地はギャロップをするように走ることができる400X。

高速道路に入ってアクセルを次第に開けていくと、ライダーに振動らしい振動を与えないまま「ドュララララぁー」と歌うように加速していきました。

400Xの場合、一度スクリーンを外せば、ステー側4本のボルトで留められる固定位置を変えればHI/LOW2段に可変させることができます。

スライドショーには JavaScript が必要です。

LOWでも割と高さがあるので、それなりのウィンドウプロテクションを発揮してくれるのですが、

HIではヘルメットにあたる耳周りの風音がかなり静かになるので、高速走行があらかじめ予定されるならHIの方がおすすめですね。

市街地走行においてもそうですが、見渡しのよい高速道路では、ポジションのゆったり感とともに視点の高さが感じられます。

楽なポジションと相まって見渡せる安心感があり、エンジンと風音の優しさが、周りの風景を愉しむ余裕を作ってくれているようでもありました。

およそ170㎞ほどを走行した中での実燃費は、29.6㎞/1L。

 

ホンダが公表する1名乗車の燃費は、28.3km/1L。

それを思えば、400Xを市街地や高速道路、さらにはワインディングや未地走行までの幅広い状況で走ってみた中で、これはかなりの好成績だと思います。

これがあればベターだと思うところ


試乗中の高速道路、パーキングエリアに立ち寄っていざヘルメットを脱いでみると、ヘルメットホルダーがないことに気付きました。

やはり、パッセンジャーシートの座面や、大き目のグラブバー等、タンデム性能もしっかり確保されている車体なので、ヘルメットホルダーは2つあるのが望ましいですね。

なのでオーナーになるとすれば、社外品を用意して納車を待つというのがベターかもしれません。

また、400Xには12VD.C電源の設置場所が確保されているのですが、今回はダミー。

3,600円(税別)のオプション装備なので、スマホナビなどを使われているライダーは、納車時に発注しておいた方が良いでしょう。

このほかセンタースタンドを初め、使い勝手をさらにUPさせるオプションがいくつか用意されているので、

オーナー志願の方はメーカーのオプションページをご覧になることをおすすめします。

400Xの本領は「旅」にあり

私はいつも一週間ほどの試乗レポートを行う際、ロケ地での天候を心配して、「予備撮影」を行っています。

ホンダ車の場合は、青山ホンダ本社からほど近い神宮外苑で予備撮影をするのですが、今回の400Xについても最初にそちらで撮影。

しかし、いざその写真を記事に貼ってみると、なぜか物足りない感じに苛まれました。

幸い、予定していた撮影日が好天に恵まれたので、キャンプ場でロケを行ったのですが、


清流のほとりで撮影機材を積んだまま、スマホでこのショットを撮った時、これまで物足りないと思った原因に気づきました。

『400Xは荷姿にしてスタイルが完成するようで、風景を着こなすのが上手なバイクなんだな』と。


400Xの本領は「旅すること」にあり。

ということですね。

親しみやすい400㏄アドベンチャーモデルの400Xなら、さらに上質な風景の元に連れて行ってくれるのではないでしょうか。

400X 主要諸元




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