
皆さん、こんにちは。週末の天気予報とにらめっこしながら、チェーンルブをさす時間が何よりの至福、ライターの井上 亮です。

今日は、コーヒー片手にガレージの愛車を眺めているときのような、リラックスした気分でお話しさせてください。さて、今回のテーマは、バイク乗りなら一度は直面するであろう「究極の二択」についてです。
「MT-09とMT-07、結局どっちを買えば幸せになれるの?」
この問い、ヤマハ党としては「カレー味のウンチかウンチ味のカレーか」みたいな意地悪な質問ではなく、「極上の寿司か、至高のフレンチか」という、どちらを選んでも正解しかない贅沢な悩みなんですよね。私自身、TRX850という稀代の名車(迷車?)に10年乗り続け、その後にMT-07を経て、現在はMT-09オーナーとして走っている身です。さらに言えば、手元にはまだTRX850とFZX250 ZEALも残しているという、ヤマハのハンドリング沼にどっぷり浸かった変態(褒め言葉)でもあります。
今回は、両車を所有し、峠からツーリングまで走り込んだ経験から、この「9 or 7」問題に理屈と愛を持って終止符を打ちたいと思います。
目次
結論:あなたが求めているのは「対話」か「支配」か
いきなり結論から申し上げます。
「バイクとの濃密な対話を楽しみたいならMT-07、テクノロジーで路面を支配したいならMT-09」です。
どちらもヤマハが誇る「人馬一体」の哲学が詰まっていますが、アプローチが異なります。MT-07は素手で素材の味を楽しむ料理、MT-09は最新調理器具を駆使した分子ガストロノミー料理みたいなものです。わかりにくいですか? では、比較表で整理してみましょう。
MT-09 vs MT-07 比較:理屈で見るスペックと官能評価
| 項目 | MT-07 (CP2エンジン) | MT-09 (CP3エンジン) |
|---|---|---|
| エンジンの性格 | 270度クランクの鼓動感が尊い。回さなくても楽しい実用域トルク。 | 滑らかかつ暴力的。高回転の咆哮はアドレナリン全開で草が生えるレベル。 |
| ハンドリング | ヒラヒラと軽い。ライダーの荷重移動に素直。TRX850の再来。 | フロントからグイグイ曲がる。電子制御でねじ伏せる感覚。 |
| 電子制御 | ほぼ無し(ABS程度)。そこが良い。 | 全部入り(IMU、QS、トラコン等)。現代の魔法。 |
| 所有満足度 | 「使い切れる」相棒感。 | 「所有する喜び」とプレミアム感。 |
MT-07:素性の良さが光る「現代のTRX」
私が30歳からの3年間、MT-07を選んだ理由は明確でした。TRX850で愛してやまなかった「270度クランクツインのトラクション感覚」を、現代の軽量シャシーで味わいたかったからです。
MT-07の最大の魅力は、その「軽さ」と「CP2エンジンの素直さ」にあります。アクセルを開けた瞬間、ドコドコというパルス感とともに路面を蹴り出す感覚。これは数値には表れないヤマハ独自の官能評価の賜物です。電子制御が介入しない分、自分の操作がダイレクトに挙動に現れます。ミスればギクシャクするし、上手く乗れれば吸い付くように曲がる。
まさに「バイクを操っている」という原体験。FZX250 ZEALからバイクライフを始めた私にとって、この等身大のサイズ感は実家のような安心感がありました。もしあなたが、自分のスキルでバイクと対話したいなら、MT-07は最高の先生であり、友です。これほどコストパフォーマンス良く「ヤマハハンドリング」を体感できるマシンは他にありません。
MT-09:理性を吹き飛ばす「マスター・オブ・トルク」
そして現在、私が乗っているMT-09。乗り換えた理由は単純、「電子制御の恩恵」と「3気筒の魔力」への好奇心でした。
MT-09に乗って最初に思ったのは「これ、公道で乗っていいの?(笑)」という驚きです。Aモードに入れた時のレスポンスは鋭すぎて、最初は体が置いていかれそうになります。しかし、そこに6軸IMUをはじめとする高度な電子制御が介入することで、その暴力を「快感」に変換してくれるのです。
TRX850で必死にトラクションを探っていたコーナーも、MT-09ならクイックシフターでスコスコとギアを落とし、トラコンに守られながらアクセルをワイドオープンできる。自分の運転が上手くなったと錯覚するほどです(これがいわゆる「沼」への入り口なんですが)。
特にヤマハがこだわる「サウンドデザイン」は秀逸。吸気音がライダーに向けて響くように設計されており、回した時の音は脳汁が出すぎてヤバイです。
おすすめの選び方
私の経験に基づき、独断と偏見で選び方を提案します。
MT-07を選ぶべき人
- 自分のアクセルワークと体重移動で、純粋にライディングスキルを磨きたい人。
- 「使い切れるパワー」に美学を感じる人(TRXやSRX好きなら絶対にこっち)。
- 維持費を抑えつつ、週末のワインディングを最高に楽しみたい人。
MT-09を選ぶべき人
- 最新のテクノロジーとパワーの洪水に溺れたい人。
- 長距離ツーリングもこなしたい(クルコン等は偉大です)。
- 「刺激」がないと生きていけない体になってしまった人。
注意点:サスペンションという名の「沼」
最後に、一つだけ注意点を。実はMT-09(特に初期〜中期型)もMT-07も、コストダウンの影響か、リアサスペンションが少々プアだと感じることがあります。私のTRX850もそうでしたが、ヤマハ車は足回りに手を入れると化けます。
ノーマルで楽しみ尽くした後、オーリンズやカヤバのサスペンションに交換すると、また別のバイクになったかのような感動が待っています。このカスタムの「沼」は深いので、お財布の紐はしっかり握っておいてくださいね。
どちらを選んでも、そこにあるのはヤマハのエンジニアたちが魂を込めた「感動」です。ぜひ、あなたに合った一台で、最高のエキゾーストノートを奏でてください。
それでは、また道の上でお会いしましょう。

