【試乗レポート】 Kawasaki Z900RSは「再来」のレッテルに甘んじない
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2017年12月10日、茨城県かすみがうら市にあるトミンモーターランドにおいて、カワサキ正規店ネットワーク「カワサキCS2」による「Z900RSサーキット試乗会」が開催されました。

注目度の高いネオレトロバイクとあって、筆者も胸躍らせながら、このKawasaki Z900RSに試乗。

気になるそのディテール感や乗り味などを中心にレポートしていこうと思います。

ネオレトロ≠「再現」

Z900RSはZ1や750RS(Z2)をオマージュした、いわゆるネオレトロバイクです。

建築でもファッションでも今は 「ネオレトロブーム」。

だからと言って、ただ昔のものの形をなんでもまねればいいというものではありません。

例えば、とても人々に愛されたもので、時代のランドマークとして今も輝いているようなもの。

そういった製品が持っているエッセンスだからこそ、それをちりばめながら「懐かしくも斬新なもの」を生み出していく。

恐らくこれがネオでレトロの面白さなのでしょう。

1972年のZ1、1973年の750RS 。

海外市場を意識した、当時にして度肝を抜くような運動性能を持ったバイク。

逆輸入が難しかったこと、免許制度は大型に厳しかったこと、絶版となって多くの月日が流れたこと。

憧れる人を遠ざけるような条件が伝説を産み、Z1や750RS は、バイクの中で間違いなく時代のランドマーク的存在です。

時は流れ平成末期の現代は、昔のものが斬新に受け入れられる時代。

Z900RSが「懐かしくて新しい」と感じるならそれは、Z1が持っていた当時の「きらめき」がふんだんにちりばめられているからに違いありません。

やはり、このティアドロップタンクはその象徴です。

これはメーカー写真で見るともっと濃い色に見えるんですが、こうして朝日に照らされるとメタリックな感じであり、またオレンジ部分も角度によって表情を変えます。

なので、やっぱり実車に接することは大事なんだと改めて思いました。

「ツッパリテール」のひさし感も健在で、LEDテールランプとのコンビネーションがナウい感じです。(笑)

灯火類はナンバー灯に至るまですべてLED。

アフターパーツで買おうとすると高い装備ですが、今時のバイクなので当然の装備。

やはりこの辺も昭和っぽい平成としてうまくまとまっていますね。

 

メーターは240km/h まで刻まれたフルスケール。

もちろん、国内仕様なので180km/h でリミッター作動。

左右のメータ間にはデジタルでシフトインジケーターや燃料計もあります。

時計の下にはオド・トリップメーターのほか平均燃費計や航続可能距離計といった装備もあり、ツーリングにはありがたい情報ですよね。

更にタコメーター内にはETCのインジケーターもついていています。

ETC(しかも2.0)が標準で装備されているのが国内仕様のいいところ。

シート下ユーティリティーはこういった具合。

激狭のスーパースポーツのそれよりはいいと思いますが、結構このテールデザインも絞られているので、恐らくここにものを入れようとは思わないでしょうね。

ちなみに工具類はシート側。

後端のこの部分にマウントされていました。

左右の超ネジを外して使うのですが、ちょっと内容が少ないように思います。

ただ使うときに工具袋に押し込手間がないのでいいですね。

東京モーターショーでも実車は見ていますが、空の下で見るZ900RSは、コンパクトに良くまと目られている感じを強く持ちました。

筆者はかつて務めたバイク店でZ1を販売していたこともあるので、Z900RSの全体を見ると懐かしさを感じることができます。

しかし、こういうユーティリティーを一つ一つ見るにつけ、Z1の「再現」ではなくオマージュ作という印象を強く持ちました。

見た目懐かしく跨って新しい

「Z1のオマージュ」をどう受け止めるかによってZ900RSへの評価というのは人それぞれに違いがあるようです。

早くもSNSや知恵袋などでは、当時の「Z」と見比べて、合っているとか間違っているとか、そんな話もあるようですね。

例えば今回のZ900RSでは水冷948㏄エンジンが搭載されていて、これについては「水冷バイクはZにあらず」という意見もあるようです。

確かにZ1の 空冷フィンの直線的なラインは今見てもきれいで、Z1の 存在感をグッと際立たせていましたね。

Z900RSの水冷エンジンンにも、空冷風なフィンのデザインがあります。

言われてみるとZ1のエンジンほどの主張感というかボリュームはない感じもします。

しかし空冷に厳しい環境規制の中、規制が今後ますます強化されることを考えていくと、水冷化を残念がってばかりもいられません。

 

強度メンバーの一つとしてつつましくダブルクレードルフレームに収まっているエンジンは、しっかりとハイオクを要求しています。

「Z1の影を追って下げた見方をするなよっ!」

確かにこれは単なる油種の注意書きですが、このルックスだからこそそういっているかのようにも見えました。

コンパクトなエンジンの恩恵として、スタンドを跳ね上げるためにマシンをクッと起こしただけで、取り回しの軽さに驚かされます。

これが215㎏の車体かと思うと同時に、運動性能の高さを予感することができます。

つまり、跨ってみるとすぐに重たい旧車のイメージは打ち砕かれるというわけです。

 

また、このシート周りがコンパクトにまとまっていて足つき性もよく、何よりタンクをホールドするのがものすごく楽で自然な感じがしました。

筆者はこの日XJR1300L(空冷)で会場入りしたのですが、パッと跨ってマシンを起こすまでの動作の中に、軽くてまとまりの良い感じを幾つも羨ましく思ってしまいました。

エンジンもそうですが恐らく「Z信者」さんたちの物議の多い部分がこのすっきりしたリアサス周りでしょうか。

個人的にはZ1より シャープになって、「ツッパリテール」のひさしが伸び、ツッパリぶりがいい感じにアップしていると思っていますがどうでしょう?

カワサキも多分それらを見越したうえで、外見より運動性にこだわりを持ってツインサスを思い切ってものサスにしたのだと思います。

それはやはり、フロントサス周りを見ると明らかです。

例えばスポークホイールのイメージに騙されそうになるこのフロント周り。

よく見ると倒立サスにTOKICOの4ポットモノブロックキャリパーがラジアルで2つ、しかも標準義務化でABSまでついています。

近代装備あフルにおごられていて、これはもうスポーツバイクとしての性能を期待しないわけにはいかないでしょう。

サスの動きを含め、走行中の様子については後述しますが、マシンを起こした段階で前後共にサスはスっと沈み、柔らかい動きをします。

ただ、初期の動きが柔らかいだけで、奥に行くにしたがってしっかりした感じの設定になっていました。

またこのZ900RSには、

2段階+OFFのトラクションコントローラーもついています。

これは「レトロ」としての外見からすると相当「ネオ寄り」で意外な感じがしたので、思わず「へー!」と驚いてしまいました。

つまり、アグレッシブな走行性能の匂いが漂っているわけで、やはり当時の人たちがZ1の運動性の良さに驚いたように、カワサキはそうした興奮を今のバイクで演出しようしている。

マシンのディテールを深く見ながら乗車前にそんなことを確認することができました。

テールのツッパリは伊達じゃない

スタンドを上げてエンジンを始動すると、「るぉんっ!」

という丸くて低めの太い音と共にマシンが目覚めます。

会場にはワイバンのスタッフさんもおられたのですが、「ノーマルでこんなに音のいいマフラーが出るんですから、うちも頑張りますよ」とおっしゃっていたくらい。

回せばそれなりにワイルドな音色ですが、音量よりも音質の良いマフラー音は心地い感じです。

アクセルに対する応答性も敏感で、「ピックアップの良いバイクだ」という印象を得ました。

最高出力111馬力。

走り出せば、低速にはあまり太いトルク感は感じなかったものの、ふけあがりは軽く、ズバッとシャープな加速が伸びやかに続きます。

トミンモーターランドはサーキットといってもミニサーキットなので、流石に「6速全開」というわけにはいきませんが、本稿としては常用域での乗り味を主に興味があったので、この状況はむしろ打ってつけ。

サスは、低速でのんびり走るとしなやかで気持ちよく走ることができますが、奥はやや硬めのセッティング。

そのせいか、減速中にピッチングがあまり起きなかったのは少し気になりました。

試しに直線で速度を上げて、エンジンブレーキをかけながらコーナーイン。

やはり、フロントには大きな挙動を感じません。

筆者個人はもう少し寝かしこみのきっかけをバイクが教えてくれるようなセッティングが好みなので、戸惑った点ではありました。

でもハンドリング自体が入力に対して応答性が良く、軽快に「すぱっ」と曲がってくれるので、「いいの?いいの?曲げちゃうよ、エイっ」

という感じです。

もちろん前後共にフルアジャスタブルなので、もっと違う性格になるものとも思います。

しかし基本的に、見かけ以上にレーシーな乗り方を想定した作り込みが感じられます。

「もっと速度を上げて奥まで攻めながら、グッとトラクションをかけながら曲がって行きたい。」

そんな気持ちを理性で押さえる15分でした。


実はこのZ900RS、スイングアームにレーサースタンドのVフックに対応するのためのボルト穴を持っています。

「その気になったら、俺行っちゃうよぉ」

試乗をしてからこれを見ると、マシンがそんな風に言っているように思えてきます。

ゆっくりしたスピードではあったけれど、幅の広い走り方を受け止めてくれる操作感の楽しさを感じることができました。

今度はテールだけではなく、スイングアームも「ツッパリ」なんですね。(笑)

「再来」というレッテルを超えた上質

Z900といえばまさしく、世界初のDOHC直列4気筒として1972年に登場した「Z1」であり、その後に続く「RS」という名前はその国内向け仕様だった750RSがその名の由来。

現存車は、相当に高価で取引されることもあるほどで、未だにその人気は衰えません。

そんな名車の「ダブルネーム」をもって登場したZ900RSだけに、登場前から「あのZが帰ってくる」と期待値を高めているモデル。

35年の時を超え、いよいよその姿が披露されると、バイク専門誌各誌は「Z1の再来」という言葉でZ900RSを迎えましたし、多くのファンも同じ気持ちでしょう。

変な話、例えば山口百恵の再来とか、ピンクレディーの再来とか…。

「再来」と呼ばれた人はそれを光栄に思いつつも、先輩の影と当然のように比較されることを本当にうれしく思うのだろうか?

いわんやもし、Z900RSに口があったら何と言うだろう?

そんな風に、今回の試乗で一番考えさせられたのは「再来」という言葉の意味でした。

考えてみれば、当時のZ1も最新かつ最高の技術を惜しみなく投入した今でいえばH2のような存在。

ただ結論として、Z1や750RSと「同じもの」を求めるのを「再来」というならば、このZ900RSはいい意味でその影を追うだけの「再来」ではないと思います。

これまでカワサキにはゼファーシリーズの中でZ1をオマージュしたカラーリングを再現したものはありました。

でもそれはあくまでゼファー。

Z900RSはネオレトロの波のなか、「再来」以上に「切り札」としての使命があるからこそ、伝説のダブルネームを拝命している。

それを証明するのは、Z900RSが持つ各部の最新の作り込み。

そして何よりZ900RSの走りからは、かなりスポーツ色の強い「現代のスポーツバイク」、でるであることが確認できます。

その意味においては「Z」の名を名乗るにふさわしい上質な風格を備えたバイクだと言えるでしょう。

更にうれしいことに、東京モーターショーで有名プロダクション各社が見せてくれた神々しいいカスタムZ900RSたち。

これらのパーツやコンプリートモデルも続々と登場する見込みです。

こちらの記事にもありますが、先日のミラノショーでもカワサキはレトロなCAFEスタイルのZ900RSを披露していましたね。

つまり、乗る楽しみだけでなく、いじる楽しみ、そして愛でる楽しみ。

バイクがこれまで築いてきたものを、文化として先の時代に引き連れていくのが、このZ900RSなのではないでしょうか?

取材協力店ご紹介

今回試乗のご協力は、カワサキフリーダムナナ八王子店にご協力をいただきました。

カワサキフリーダムナナではZ900RSをはじめとするカワサキ車はもちろん、KTMの車両にも試乗することができます。

お近くの方はぜひこちらにお問い合わせください。

 

 

 

 




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