【試乗レポート】ヤマハXSR700は見た目以上に豊かで気持ちいいバイク
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跨って感じていた「意外性」

2017年11月に発売されたヤマハのXSR700。

街中でもだいぶ見かけることが多くなったように思います。

実は欧州では2015年11月から発売されていたモデルで、国内発売を待っていた人も多かったようですね。

モーターサイクルナビゲーターの中でも、国内で初見参となったXSR700のディテールをお伝えしていました。

「ヤマハMTシリーズ試乗会」の一角に設けられた展示スペースで初お目見え。

このときは跨ってエンジンをかけることろまでは許されていたのですが、走行はNGという展示会。

しかし幸運にも、XSR700のベースとなっているMT-07 に試乗することができたので、XSR700との細部の違いから乗り味などを予測するというレポートになったわけです。

普段はXJR1300Lというローダウン&ローシート化された教習仕様車に乗っている筆者。

それだけにシート高は、パッと跨ったときにかなり高く感じました。

また同時に、マシンを垂直に引き起こすときの軽さに驚かされたのを覚えています。

  • 試乗したMT-07 の印象のこの腰高でロールの軽い感じを加味したときに、よりクイックなコーナリングが予見できたこと。
  • そして、兄貴分のXSR900もMT-09よりスポーツ性能が勝っているという評判を聞いていたこと。

不確かだったので記事には書きませんでしたが、実はXSR700に対して筆者は「MT-07 よりもスポーティーな一面があるのでは?」という予測を立てていました。

それだけに、実際に街中をXSR700で快走するなかで、この予測がどれほど正しかったのか、実に興味の高まるところです。

街中で噛みしめる豊かな乗り味

発売から一か月が経過し、YSPに店頭試乗車が用意されたというので、「前回の続き」として乗り味を確かめに行きました。

シート高は意外に…

MT-07のシート高は805mm、XSR700のシート高は835mmという高さ。

前回の展示ではMT-07と乗り比べたわけですが、比較した印象からシート高に関して乗る前から気持ち的にやや構えた気持ちを持っていました。

それは一つの「先入観」といってもいいでしょう。

しかし店頭でいざXSR700に乗ってみると、足が無理なく接地しているのに驚かされました。

流石に両足は無理でしたが、片足で親指の付け根辺りまではしっかり接地しているのが解ります。(筆者は身長162㎝にして座高91㎝という短足のオッサンです。)

前回どうしてそう感じなかったのかはわかりませんが、タンク周りやシートの周りが写真で見る以上にすっきりできているため、脚を下に自然な形で下せています。

また、ハンドルもMT-07よりもっとアップライトで、ライダーにより近い位置に寄った印象を得ます。

なのでしっかり跨ってみると状態が起きている分、脚をゆったりさせることができているのに気づきました。

またハンドル幅もかなりワイドなので、上半身もかなりゆとりがあります。

このおかげで、意外なほどシート高を高く感じることがありません。

その上、全体的にゆったりしたポジションであるのが解り、前回の印象がかなり改まりました。

魔法のように従順なCP2エンジン

キルスイッチと一体になったスターターボタンを手前に引くと、コンパクトなシリンダーの中で並列に並んだピストンたちが歌い始めます。

ツインエンジンというと、「ドカドカっ」という音のイメージが強いかと思います。

しかしXSR700はそうした重低音的な音ではなく、ルルルっという軽やかな音が心地いい感じです。

このエンジンは「CP2」CP2と呼ばれるエンジンで270°クランクが採用されています。

90°V型2気筒エンジンであれば粘り強く伸びやかな特性を持っているわけですが、270°クランクはコンパクトな並列2気筒でその特性を発揮できるのが特長です。

実際の乗り味としては、スルスルと滑らかに加速して、走り始めた瞬間から乗り手として心がウキウキしてきます。

というのも、アクセルがライダーの右手の動きに極めて従順な動きをしてくれるのがうれしくてたまらないのです。

なので初速からかなり嬉しい気持ちにさせてくれるんですね。

中速まではルルルルルーという何とも癒されるような音と共にシルキーな乗り味が続きます。

しかしアクセルを「ぐぉっ!」と開ければドドっという鼓動と共に、野太いトルクが呼び覚まされ、一気に速度を上げていきます。

これまで様々なバイクの試乗をしてきましたが、このCP2エンジンほどライダーの意図したとおりの動きをしてくれるエンジンは他に知りません。

もしも右手で魔法が使えるとしたら、たぶんこんな感じなのかもしれませんね。(笑)

やっぱりヤマハのハンドリングだ

今回の試乗は4車線道路を約15分だけお借りして行ったもの。

なのでコーナーリングを詳しくどうこういうところまでは試せませんでした。

しかし、信号が青になって加速しながら交差点を曲がるようなちょっとした場面でも、XSR700のコーン―リングの楽しさが十分にわかります。

まず、車体もエンジンと相まって従順なもので、視線を送るだけで「スッ」とそちらを向いてくれます。

左右のロールもとても軽やかで実に取り回しが楽。

これは腰高に設定されたシート高が功を奏している部分ですね。

マシンをちょっと寝かしこみつつアクセルを開けていくと、リアにしっかりしたトラクションがかかり、グイーンとコーナーを立ち上がっていく様子がわかります。

全域にわたってとにかく従順で、特に飛ばすわけでもなくただバイクに乗っているだけなのに、こうも愉快な気分になるものかと驚いてしまします。

もしこのXSR700をワインディングに持ち込めば、ロールの軽さを味方につけてひらりひらりとスポーティーな走りができるでしょうね。

普段SSバイクに慣れている人が乗ったとすれば、山の空気も一層新鮮に気持ちよく感じることでしょう。

レトロにして「ネオ」な部分

足回りについて

そんな走りを支えるタイヤは 120/70R17M/C (58V)/ 180/55R17M/C (73V)。

標準で装着されるタイヤはピレリ―のデーモンという往年のパターンを復刻させたもの。

タイヤまでもがネオレトロというのが何ともオシャレです。

走らせていて思ったのは、この両輪共にしっかりと接地感を感じること。

エンジンの楽しさに加えてこの接地感の良さが安心感をプラスしてくれています。

ホイールデザインはMT-07と同様ですが、ブラックにするとこの外装にはスポークっぽいイメージになるのが不思議です。

正立のフロントフォークには、住友の4ポットモノブロックキャリパーが左右一対で装備され、ABSが標準で備わります。

実は筆者はABS装着バイクに公道で乗るのは今回が初めて。

なので、後続車がいないのを確認してフルブレーキングを試しました。

まずは50km/h まで加速し、リアブレーキペダルをグイッと踏み込みます。

すると若干カタカタっという作動音はしましたが、車体に余計な挙動を与えることなく停車。

続いてフロントレバーもガツンと握ってみます。

当然と言ってしまえば当然なのですが、これも同じように自然に止めることができました。

サーキット以上にツーリングでは路面の変化は多いものですから、やはりこれは安心ですね。

個性的でコンパクトなリアビュー

コンパクトなテール周りは、リアタイヤを「もりッ」とした感じに見せながらこのバイクの魅力を引き立てていますね。

レトロな雰囲気を持ちながらリアサスはモノショック。

車体の扱いやすさの要となっています。

そして先述のように脚を下におろしやすいシート周り。

このシートも見た通り厚みがあってショックを非常によくいなしてくれるので、走行中の心地よさにかなり貢献している部分です。

またXSRシリーズに一貫しているLEDのテールライトも視認性が良くしっかりまとまっていますね。

ただ、非常にコンパクトなリア周りは、タンデムツーリングなどでの荷物の扱いにちょっと工夫が必要でしょう。

新しいスタンダードの顔

フロントビューはじっくり見てみるとユニークなもの。

小径ながら前後に長いデザインのライトケースの中でマルチリフレクターがハロゲン球を照らしています。

恐らくもっと前後長を小ぶりにしたライトでも実用には足りるものと思います。

でも、このライトは、引きで見たときのレトロ感に大きく貢献していますね。

メーターはかわいいけど…

メーターはXSR900同様のシンプルなデジタルメーター。

今回試乗して一番気になったのはこのメーターでした。

メーター自体はコンパクトにまとまっていて、丸みを帯びたフォントもユニークでかわいいものです。

通常といってよいのか、ネイキットモデルであればメーターはライトの上にあるもの。

しかしXSR700の場合、かなり手前に寄っているのです。

試乗の時はフルフェイスヘルメットをかぶっていたのですが、なんとチンガードにこのメーターがすっぽり隠れてしまいます。

なのでメーターを見るためにはやや首を下に下げなければならないので、視点移動が大きくなります。

乗車にはオープンタイプのヘルメットがお勧めですね。

また、ODO メーターを表示している部分は右下のボタンを使って、時計や燃費計にもなるのですが、いずれか一つだけしか表示できません。

やはり時計は時計で独立させたうえで別にファンクションメーターがあった方が、ツーリング中はありがたいのではないかと思います

ついでに言ってしまうと、左のスイッチボックスにもやや戸惑いました。

というのもホーンのスイッチがウインカースイッチに近すぎて、どうしてもキャンセルするときに当たって鳴らしてしまうんです。

特にこの日は厚めのタイチの電熱グローブを着用していたので、余計にそれを感じました。

XSR700諸元表

 

認定型式/原動機打刻型式 2BL-RM22J/M410E
全長/全幅/全高 2,075mm/820mm/1,130mm
シート高 835mm
軸間距離 1,405mm
最低地上高 140mm
車両重量 186kg
燃料消費率 *1 国土交通省届出値定地燃費値
*2 38.4km/L(60km/h)
2名乗車時WMTCモード値

*3 23.9km/L
(クラス3, サブクラス3-2)
1名乗車時舗装平坦路燃費

*4 -

原動機種類 水冷・4ストローク
・DOHC・4バルブ
気筒数配列 直列, 2気筒
総排気量  688cm3
内径×行程 80.0mm×68.5mm
圧縮比 11.5:1
最高出力 54kW(73PS)/9,000r/min
最大トルク 68N・m(6.9kgf・m)/6,500r/min
始動方式 セルフ式
潤滑方式 ウェットサンプ
エンジンオイル容量 3.00L
燃料タンク容量 13L
(無鉛レギュラーガソリン指定)
吸気・燃料装置/燃料供給方式 フューエルインジェクション
点火方式 TCI(トランジスタ式)
バッテリー容量/型式  12V, 8.6Ah(10HR)/YTZ10S
1次減速比/2次減速比  1.925/2.687
クラッチ形式 湿式, 多板
変速装置/変速方式 常時噛合式6速/リターン式
変速比 1速:2.846 2速:2.125 3速:1.631
4速:1.300 5速:1.090 6速:0.964
フレーム形式  ダイヤモンド
キャスター/トレール 25°00′/90mm
タイヤサイズ(前/後) 120/70R17M/C (58V)
(チューブレス)
/ 180/55R17M/C (73V)
(チューブレス)
制動装置形式(前/後) 油圧式ダブルディスクブレーキ/油圧式シングルディスクブレーキ
懸架方式(前/後) テレスコピック/スイングアーム(リンク式)
ヘッドランプバルブ種類/ヘッドランプ ハロゲンバルブ/12V, 60/55W×1
乗車定員 2名

※メーカー諸元表より参照

まとめ

 

全体を振り返ればエンジンも車体も実に扱いやすく従順で、この15分試乗もなんと豊かに感じたことでしょうか。

実はこの後、MT-10SPという電脳バイクにも試乗させていただいたのですが、XSR700の乗り味はまた格別なものでした。

XSR700にはIMUはもちろんトラコンもないわけで、極めてシンプルな造りのバイクだと言えます。

むしろ、というかだからこそ、バイクの基本を十二分に楽しめるキャラクターを持っている。

XSR700試乗後の余韻がとても深かったのは恐らくそれを感じたからなのだと思います。

XSR700を写真で見ながら、ツインエンジンであるとかレトロであるとか、あるいは諸元の数値だけを見て「ツマラナイ」という人もいるようです。

しかし、ひとたび試乗したならば、XSR700は既成概念を気持ちよく裏切って、バイクの楽しさを新しく考えるきっかけになると思います。

つまり、XSR700は数値以上に乗り味として非常に人の感覚に近いバイクなのです。

 

試乗を終え、筆者はXJR1300Lに乗って帰ったわけですが、なんともXJRが重たくモッサリした感じに思えて仕方ありませんでした。(笑)

 

とにかく一度、ご自身の感覚でXSR700を試してみて欲しいと思います。

全国のYSPで、試乗車の有無が検索できますので、こちらから検索してぜひお乗りになってみてください。

きっと試乗しながらヘルメットの中で「ニヤッ」と笑顔になれますよ。

取材協力店のご紹介

今回の試乗は東京都調布市にあるYSP三鷹さんに取材協力をいただきました。

試乗車は今回のXSR700のほかMT-09やMT-10SP、他にもいくつか用意されています。

ご試乗には予約が必要です。

詳しくはこちらへお問い合わせください。

 

またXSR700にはローシートやローダウンキットも用意されています。

「どうしても835mmじゃ乗れないよ」という方は同じくYSP各店にご相談ください。




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