
やあ、同志諸君。週末のタイヤの空気圧チェックは済ませましたか? 私は昨晩、ガレージでTRX850のキャブレターを眺めながらコーヒーを飲んでいたら、気づけば2時間経過していました。井上 亮です。

さて、今回取り上げるトピックは、海を越えてやってきた情熱の塊、「Redline from Italy」についてです。イタリアンレッドのタコメーターがレッドゾーンに飛び込む瞬間、それはもはや工業製品というよりは楽器に近い。おそらくドゥカティあたりのV4エンジンが咆哮を上げているシーンでしょう。
しかし、ここで冷静に(でも熱く)なりましょう。私たちYamaha党にとって、エンジンの価値は「どれだけ回るか」だけではありません。「どう回るか」、そして「その回転がどう路面に伝わるか」。ここに尽きるのです。TRX850でツインの鼓動に10年浸かり、現在はMT-09でCP3エンジンのトルクと踊っている私が、このイタリアンな挑発に対して、ヤマハ流の「人馬一体」の視点からアンサーを返したいと思います。
目次
結論:ピークパワーの「赤」か、過渡特性の「青」か
結論から申し上げますと、イタリア車のレッドラインが「劇的なクライマックス」だとすれば、ヤマハのエンジンとハンドリングは「そこに至るまでの美しいプロセス」です。
イタリア車、特にドゥカティなどは、高回転域で脳内麻薬がドバドバ出るような演出が上手い。これは認めます。しかし、ヤマハが目指すのは「官能評価」に基づいた、ライダーの意思と挙動の完全な同期です。レッドゾーンに当てることよりも、スロットルを開けた瞬間の「ツキ」と、コーナー脱出時のトラクションの粒立ち。ここにこそ、我々が愛してやまない「尊い」瞬間があるのです。
イタリアン・パッション vs ヤマハ・フィロソフィー
わかりやすく、イタリアのハイパフォーマンスマシン(想定)と、私の愛するヤマハ車(MT-09/TRX850)の特性を比較してみましょう。これは単なるスペック比較ではなく、私の「体感」に基づいた分析です。
| 比較項目 | イタリア車(Redlineの象徴) | ヤマハ車(TRX850/MT-09) |
|---|---|---|
| エンジンの性格 | 高回転で炸裂するパワー。ドラマチックな演出。 | 不等間隔爆発によるトラクション感覚。常用域の快感。 |
| ハンドリング | 情熱的で、ねじ伏せる楽しさがある。 | 素直でニュートラル。ライダーの思考に直結する。 |
| 音(サウンド) | 絶叫するオペラ歌手。 | 計算された吸気音と排気音のハーモニー。 |
| 所有感 | 特別な存在、アートとしての主張。 | 機能美と芸術性の融合(GKダイナミクス最高)。 |
なぜ「ヤマハのハンドリング」は沼なのか
ここからは、私の愛車遍歴を交えて、なぜイタリア車のレッドラインに浮気せず、ヤマハに乗り続けるのかを語らせてください。
TRX850が教えてくれた「270度の魔法」
私が20代の全てを捧げたTRX850。このバイクは、並列2気筒でありながら270度クランクを採用し、Vツインのような鼓動感を実現していました。実はこれ、今のMT-07やMT-09(CP3はまた別ですが思想は同じ)に繋がるご先祖様的な存在です。
イタリア車が「もっと回せ!」と急かしてくるのに対し、TRXは「右手の動きで路面を掴め」と語りかけてきます。コーナーの立ち上がりで、ドコドコというパルス感と共にリアタイヤが路面を蹴り出す感覚。これがもう、たまらなく気持ちいい。レッドゾーン手前のトルクバンドで繋いでいく走りは、まさに理屈を超えた快感、いわゆる「沼」です。
MT-09と電子制御の恩恵
そして現在、私はMT-09に乗っています。3気筒エンジンの「CP3」は、低回転のトルクと高回転の伸びを両立した、現代の傑作です。イタリア車の突き抜けるようなレッドラインも魅力的ですが、MT-09の、意のままに操れる電子制御スロットルと、軽量な車体が織りなすダンスのようなコーナリングは別格です。
特にクイックシフターを使って、レブリミット直前で「パンッ!」とシフトアップする瞬間。あれはもう、ヤマハの音響解析技術が生んだ芸術です。イタリア車が「爆音」なら、ヤマハは「調律された旋律」ですね。まあ、純正マフラーでも十分に良い音すぎて、深夜の住宅街では気を使いますが(草)。
おすすめの構成:ヤマハ流「官能」の味わい方
もしあなたが、イタリア車のような情熱的な走りをヤマハ車で再現したいなら、以下のセットアップをおすすめします。
- 吸排気系のファインチューン: SP忠男やアクラポビッチなど、トルク特性を大事にするマフラーを選んでください。単にうるさいだけの直管はヤマハの美学に反します。
- サスペンションのセッティング: これが最重要。ヤマハのハンドリングは、出荷時でも素晴らしいですが、自分の体重と乗り方に合わせてプリロードと減衰を調整することで、真の「人馬一体」が覚醒します。オーリンズを入れるのも良いですが、まずはノーマルを使い切るのが理論派の嗜みです。
- タイヤ選び: ハイグリップすぎない、ツーリングスポーツタイヤ(例えばミシュランのROADシリーズなど)で、タイヤの潰れ感を感じながら走るのが、ヤマハの車体設計と相性が良いと感じます。
注意点:情熱と理性のバランス
最後に、少しだけ現実的な注意点を。イタリア車の「Redline」は魅力的ですが、その代償として維持費や熱問題が発生することがあります。ドゥカティのライダーが夏場の信号待ちで股間を焼かれているのを見て「大変だなぁ」と思うこともありますが、実は最近のMT-09もラジエーターファンが回ると結構な熱風が来ます。こればかりは内燃機関の宿命ですね。
また、レッドゾーンまで回すこと自体が目的になってしまうと、公道ではリスクが高まります。ヤマハのバイクは、法定速度内やワインディングの流すペースでも「走っている感」が濃厚に味わえるように作られています。タコメーターの針が赤くなるまで回さなくても、心は十分に熱くなれる。それがヤマハというメーカーの凄みであり、私が一生ヤマハ党である理由なのです。
さあ、理屈はこれくらいにして、週末は愛車の3台(TRX、MT-09、ZEAL)のどれかで峠へ行ってきます。タイヤと会話するためにね。









