
こんにちは、モーターサイクルナビゲーターのライター、松井さちです。最近、ツーリング先の道の駅で食べるソフトクリームよりも、熱い缶コーヒーの温もりが恋しい季節になってきましたね。指先がかじかむ感覚さえも「バイクに乗ってる!」って感じで嫌いじゃないんですが、やっぱり暖かい飲み物が染み渡る瞬間は格別です。

目次
愛車を「Baby」と呼ぶ感覚、わかりますか?
さて、今回はネットの海を漂っていてふと目に入った話題についてお話ししたいと思います。あるライダーさんが自分の愛車にステッカーを貼って、それを「For some stickers for my baby(私のベイビーのためにステッカーを)」と紹介していたんです。この「Baby」って呼び方、海外っぽくてちょっと気恥ずかしい気もしますが、私たちライダーにとってバイクは単なる機械じゃないですからね。その気持ち、痛いほどわかります。
私も現在所有しているKawasaki Z900のことは、さすがに人前でベイビーとは呼びませんが、心の中では相棒以上の存在として溺愛しています。洗車した後の輝きなんて本当に尊いですよね。ただ、そこで湧き上がってくるのが「カスタム欲」という名の沼です。特にステッカーチューンは手軽に個性を出せる反面、一歩間違えると全体のバランスを崩しかねない諸刃の剣。今回はそんなステッカーにまつわる悩みと、私なりの解決策について語らせてください。
ステッカー1枚で変わる世界と、踏み出せない一歩
皆さんは愛車にステッカー、貼っていますか?「純正のデザインが完成されているから何も足さない」という硬派な方もいれば、「旅の思い出に訪れた場所のステッカーを増やしていく」という方もいるでしょう。私はどちらかというと、Kawasakiの『男らしさ』や『無骨さ』に惚れ込んでいるタイプなので、基本的にはシンプルイズベストを貫きたい派です。
でも、ふとした瞬間に思うんです。「もう少しだけ、自分だけの色を出したいな」って。例えば、同じZ900に乗っている人とすれ違ったとき、完全にノーマルだと親近感は湧きますが、「あ、私のはココが違うんだぞ」という密かな優越感も欲しくなる。これがカスタムの入り口なんですよね。
ただ、ここで立ち止まってしまうのが「センスへの不安」です。変な場所に貼ってしまって、せっかくのZ900の「凄み」デザインが台無しになったらどうしよう。剥がした跡が汚くなったら嫌だな。そんなことを考えていると、手元にあるかっこいいステッカーも引き出しの奥に眠ったままになりがちです。特にKawasaki車は、そのままで十分すぎるほどの存在感を放っているので、余計なことをするのが怖くなるんですよね。
バリオス時代の失敗とゼファーでの学び
振り返ってみれば、私が29歳で免許を取って最初に乗ったバリオス時代は、とにかく「バイクに乗れている自分」が嬉しくて、色々なステッカーをペタペタ貼っていました。今思うと、あれは若気の至りというか、少しごちゃごちゃしすぎていて草が生えるレベルでしたね。当時は「怖さが楽しさに変わった時期」だったので、バイクとの距離感を縮めるために必死だったのかもしれません。
その後、34歳でゼファー400に乗り換えたとき、私の考え方は一変しました。ゼファーのあの美しい空冷フィンの造形、タンクのライン。完成された機能美を前にして、「これは下手に触ってはいけない」という畏敬の念が生まれたんです。所有欲を満たしてくれるその姿に、ステッカーという異物を混入させるのが野暮に思えてしまったんですね。
そして現在、Z900。このバイクは現代的なアグレッシブさと、Kawasaki伝統の硬派な魂を併せ持っています。だからこそ、ステッカーを貼るなら「足し算」ではなく「引き算の美学」が必要だと気づきました。派手に飾るのではなく、車体のラインを強調したり、ワンポイントでピリッと引き締めたりするような貼り方。これが大人のステッカーチューンだと思うのです。
失敗しないステッカー貼りの極意
では、どうすれば愛車をダサくせずに、センスよくステッカーを貼れるのか。私が試行錯誤の末にたどり着いた具体的な手順とポイントをご紹介します。道具も大事ですが、一番大事なのは「心の余裕」と「位置決め」です。
まず、用意する道具はこちら。
- 貼りたいステッカー(耐候性のあるもの)
- パーツクリーナー(脱脂用)
- ウエス(毛羽立たないもの)
- マスキングテープ(位置決め用)
- スキージーまたはプラスチックのヘラ(気泡抜き用)
- ドライヤー(曲面に貼る場合)
一番重要なのは、貼る前の「脱脂」です。これをサボると、どんなにかっこいいステッカーもすぐに剥がれてきてしまい、それこそ見るも無惨な姿になります。パーツクリーナーで貼る面をしっかり拭き上げ、油分を完全に除去してください。私のZ900のように少し手がかかる子ほど、こういう下準備を丁寧にしてあげると愛着が深まるものです。
次に位置決め。いきなり剥離紙を剥がして「えいや!」と貼るのは絶対にNGです。マスキングテープを使って、仮止めをしましょう。そして、少し離れた位置からバイク全体を眺めてみてください。近くで見ると良くても、遠目で見るとバランスが悪いことはよくあります。スマホで写真を撮って確認するのもおすすめです。
Kawasaki車の場合、車体のデザイン自体が鋭いラインで構成されていることが多いので、そのプレスラインやカウルの流れに平行になるように配置すると、純正風の仕上がりになります。逆に、あえて角度をずらして貼るなら、思い切った角度をつけないと「貼り間違えた?」と思われてしまうので注意が必要です。
ビフォーアフター:Z900に命が宿る瞬間
実際に私がZ900のリム部分にステッカーを貼ったときの話をしましょう。最初は真っ黒なホイールで、それはそれで無骨でかっこよかったのですが、夜間の視認性も兼ねてグリーンのリムステッカーを貼ることにしました。
貼り付ける前は「ちょっと派手すぎるかな?」と心配していましたが、いざ丁寧に貼ってみると、足元がキュッと引き締まり、走っているときの残像が緑の輪になって本当に美しいんです。まさに「尊い」の一言。黒い車体にKawasakiグリーンのラインが入るだけで、こんなにも「私のバイク」感が出るとは思いませんでした。
バリオス時代のように無秩序に貼るのではなく、計算されたワンポイントは、バイクの品格を損なうことなく個性を主張してくれます。愛車(Baby)へのプレゼントとして、ステッカーチューンは決して悪いものではありません。むしろ、手をかければかけるほど、そのバイクは世界で唯一の存在になっていくのです。
よくある質問(FAQ)
Q. ステッカーを剥がしたくなったらどうすればいいですか?
A. 無理に爪でカリカリやると傷がつきますし、爪も痛むのでやめましょう。ドライヤーで温めて糊を柔らかくしてからゆっくり剥がすのがコツです。残った糊は、市販のステッカーはがし液やパーツクリーナーを使って優しく拭き取ってください。塗装への影響がないか、目立たない場所で試してから使うのが鉄則ですよ。
Q. 雨に濡れても大丈夫ですか?
A. バイク用に販売されているステッカーの多くは、耐候性・耐水性のある素材(塩ビなど)で作られていますが、紙製のステッカーはNGです。購入する際に「屋外用」「耐候性あり」と書かれているか必ずチェックしましょう。私のZ900は雨の日も走りますが、ちゃんとしたステッカーなら数年は余裕で持ちます。
Q. タンクに貼ると剥がれやすいですか?
A. タンクはニーグリップで膝が当たる場所なので、摩擦で剥がれやすいのは事実です。タンクパッドのように厚みのある樹脂盛りのタイプを選ぶか、膝が当たらない位置を選んで貼るのが賢明です。私はタンク横のエンブレム下あたりに小さく貼るのが、さりげなくて好きですね。
皆さんも、愛車へのちょっとした愛情表現として、ステッカーチューンを楽しんでみてはいかがでしょうか。無骨なKawasaki車も、ほんの少しの彩りでまた違った表情を見せてくれますよ。









