街で見かけた怪物ワルキューレ。X4乗りだった私が語る水平対向6気筒の圧倒的な魔力と造形美
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どうも、こんにちは。いつもの散歩コースにある自販機で、微糖コーヒーを飲みながら愛車のカブを眺めるのが至福のひととき、モーターサイクルナビゲーターのライター、田中恒一です。

街で見かけた怪物ワルキューレ。X4乗りだった私が語る水平対向6気筒の圧倒的な魔力と造形美

最近はすっかり暖かくなってきて、古傷の膝も調子が良いので、休日はつい遠出したくなりますね。50代を超えると、マシンの性能よりも自分の体のメンテナンスサイクルのほうが気になってくるものです。

さて、今回はあるニュースというか、一枚の写真をきっかけにお話しさせてください。海外のライダーが、地元のスーパーマーケットの前でとんでもないバイクを見かけたと話題にしていました。そのバイクとは、ホンダが誇る超弩級クルーザー、「ワルキューレ(Valkyrie)」です。投稿者はカワサキのバルカン乗りだそうですが、「他社製だけど認めざるを得ない。こいつはヤバいバイクだ」と脱帽しています。

この気持ち、痛いほどわかります。今日は、かつてX4という「ドラッグスターの皮を被った精密機械」を乗り回し、現在はNC750Xで「あがりのバイク」を堪能している私の視点から、この怪物の魅力について語らせてください。

結論:ワルキューレは「エンジンの上に跨る」という狂気と理性の結晶です

一言で言えば、ワルキューレはバイクというよりも「走るエンジン」です。ゴールドウイングの水平対向6気筒エンジンをネイキッド化してクルーザーフレームに積むという発想。これはもう、良い意味でホンダの技術者が悪ふざけをして、本気で作ってしまったオーパーツのような存在です。

他社メーカーのファンですら、目の前に現れたら敬礼してしまうような圧倒的な存在感。X4に乗っていた頃の私ですら、信号待ちで並ばれると「あ、すみません」と道を譲りたくなるような迫力がありました。あのエンジン音、そして存在感は、まさに二輪車の形をした「尊い」工芸品と言えるでしょう。

業界視点で紐解く、ワルキューレが伝説である3つの理由

1. シルキーシックスという名の「沼」

私がかつて所有していたX4は、1300ccの直列4気筒でした。アクセルを開ければ怒涛の加速を見せる、まさに筋肉の塊のようなバイクでした。しかし、ワルキューレの水平対向6気筒(フラットシックス)は、次元が違います。

X4が爆発的な瞬発力だとすれば、ワルキューレは「無限に湧き出るトルクの海」です。振動が極限まで消されたエンジンは、モーターのように滑らか。コインをエンジンヘッドに立てても倒れないと言われるほどのバランス感覚です。一度このシルキーな回転フィールを味わってしまうと、他のエンジンの振動が雑味に感じてしまうほどの「沼」がそこにはあります。

現在私が乗っているNC750Xの2気筒は、実用域での鼓動感が心地よいエンジンですが、ワルキューレの6気筒は、もはや内燃機関を超越した何か別の動力源のようにすら感じさせます。

2. ホンダの技術屋魂が生んだ「走る」巨体

普通、これほどの巨大なエンジン(1500cc超)を積めば、ハンドリングは破綻します。直線番長にしかならないはずです。しかし、そこは私が全幅の信頼を置くホンダです。

低重心化の徹底により、走り出してしまえば嘘のように軽快に曲がります。私の愛車遍歴にあるST1300パン・ヨーロピアンもそうでしたが、ホンダのビッグバイクは「走り出すと重さが消える」魔法がかかっています。見た目の威圧感とは裏腹に、乗り手に対してはどこまでもジェントル。このギャップこそが、ホンダの優等生たる所以であり、最高の性能なのです。

バルカン乗りが「Bad ass(最高にカッコいい)」と評したのも、単に見た目だけでなく、その巨体が優雅に走る姿に畏敬の念を抱いたからではないでしょうか。

3. エンジンを見せるためのデザインが「草」を超えて芸術

最近のネットスラングで笑ってしまうことを「草」と言いますが、ワルキューレのエンジン周りの造形は、あまりに巨大すぎて一瞬笑ってしまいそうになり、その直後に圧倒されて言葉を失うレベルです。

ラジエーターをサイドに配置してまで、美しいメッキのシリンダーヘッドを前方に見せつけるレイアウト。機能美を追求した結果、配管やフレームの取り回しが芸術の域に達しています。私が所有するBROSのようなVツインの機能美とも違いますし、カブの実用美とも違います。「過剰であること」を美学とした、バブル期の香りも残る贅沢な設計です。

維持費と現実:6気筒との生活には覚悟が必要

さて、もしあなたが中古市場でこの怪物に出会い、購入を検討するとしたら、現実的なコストの話もしなければなりません。元業界人として、甘いことばかりは言えません。

まず、キャブレター仕様(F6Cなど)の場合、キャブが6個あります。同調を取る作業工賃だけで、若者の原付が買えそうな金額になることもあります。燃費に関しては、X4も大概でしたが、ワルキューレも豪快にガソリンを飲みます。リッター10km前後を覚悟してください。

タイヤ代も重量車ゆえに嵩みますし、交換工賃もヘビー級です。年間維持費は、車検を含めずとも消耗品だけで10〜15万円は見積もっておくべきでしょう。それでも、このバイクにはそれ以上の価値があると断言できます。

購入前のチェックリスト

もし実車を確認する機会があれば、以下のポイントは必ずチェックしてください。

  • タイミングベルトの履歴:ゴールドウイング系のエンジンはタイミングベルトを使用しています。交換履歴がない場合、購入直後に高額出費となります。
  • マフラーの腐食:複雑な取り回しのエキパイは、下回りの錆に注意が必要です。純正品はもはや希少金属並みの扱いになりつつあります。
  • 取り回しの確認:跨るだけでなく、必ず押し引きをしてください。300kgオーバーの車重は、平地以外での取り回しを拒絶します。私のX4も重かったですが、それ以上です。
  • メッキパーツの状態:ワルキューレの命とも言えるメッキパーツ。再メッキは非常にコストがかかります。

よくある質問(FAQ)

Q:身長165cmですが乗れますか?
A:シート高自体は低め(740mm前後)なので、足つきは意外と良いです。ただし、幅広のタンクとエンジンの張り出しがあるため、股を開く形になります。私のカブのように気軽にはいきませんが、慣れと気合でなんとかなる範囲です。

Q:ハーレーとどっちが良いですか?
A:これは宗教戦争になりそうですが(笑)、鼓動感とバイブレーションを楽しむならハーレー。シルキーな回転と精密機械のフィーリングを楽しむならワルキューレです。ホンダ党の私としては、故障の少なさと「壊れない安心感」でワルキューレを推します。

Q:NC750Xから乗り換える価値はありますか?
A:利便性と燃費を捨てて、「所有する喜び」と「非日常」を求めるならYESです。ただし、毎日の通勤には絶対に使いたくないでしょう。私なら、NC750Xを残したまま増車しますね。

街のスーパーに停まっているだけでニュースになるバイク、それがワルキューレです。もし見かけたら、その巨大なエンジンに敬意を表して、心の中で「いいものを見せてもらった」と呟いてみてください。それでは、また次回の記事でお会いしましょう。




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