Ducati Hypermotard 698 Mono Nera登場、77馬力単気筒スーモタが漆黒で牙を剥く
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Ducati Hypermotard 698 Mono Nera登場、77馬力単気筒スーモタが漆黒で牙を剥く

Ducatiが新型「Hypermotard 698 Mono Nera」を発表しました。注目点は、すでに過激な77.5馬力の単気筒スーパーモタードを、ブラック&レッドの戦闘色でさらに尖らせてきたこと。標準でDucati Quick Shift、ブラックアウトされたTermignoniサイレンサー、そしてレッドフレーム。価格は13,990ユーロ。私はHonda党ですが、これは正直、ガレージで見ていたい一台です。整備士目線で見ても面白い設計が詰まっているので、今回はその中身を解剖していきます。

Hypermotard 698 Mono Nera、発表内容のおさらい

まず事実関係を整理します。Ducatiが発表したのは、既存のHypermotard 698 Monoをベースにした特別仕様「Nera」エディションです。車体色はブラック&レッドの2トーン、ホイールはレッド、フレームアクセントもレッド、そしてTermignoniのサイレンサーはブラックアウト処理。Ducati Quick Shift(クイックシフター)が標準装備となります。価格は13,990ユーロ、日本円換算でおよそ250万円前後の世界です(出典: https://www.rideapart.com/news/796161/ducati-hypermotard-698-nera-specs-features/)。エンジンは「Superquadro Mono」と名付けられた単気筒。ボア116mm、デスモドロミック動弁、チタン製インテークバルブ、10,250rpmまで回る回転域。これ、元ネタは1299 Panigaleの片肺と言っていい構成です。スーパーバイクのDNAを単気筒に押し込んだ、なかなか狂った設計。車両重量は燃料抜きで約151kg(333ポンド)。サスペンションはフルアジャスタブル、フレームは軽量トレリス。電子制御はコーナリングABSにスライド・バイ・ブレーキ機能、そしてオプションのレーシングエキゾーストを組むと馬力が+7馬力、さらに「Wheelie Assist」がアンロックされるという、もう用途を隠す気のない内容です。私のCB1100とは真逆のキャラクターですが、こういう振り切った企画は嫌いになれません。

注目ポイント①、単気筒にPanigaleの遺伝子を移植する設計思想

整備で7年メシを食ってきた人間として、まず引っかかるのはこのエンジンです。ボア116mmという数字、これは1299 Panigaleの片側そのまま。Ducatiは「片肺Panigale」を本気で作ってきた、と言える設計です。デスモドロミック、つまりバルブを開くだけでなく閉じる動作もカムで強制する機構を、単気筒でやってくる。普通のメーカーなら、単気筒スーパーモタードにそこまでやりません。KTM 690 SMC RやHusqvarna 701はSOHC4バルブで十分回す、というアプローチです。Ducatiはそこを敢えて、超ショートストローク・チタン吸気バルブ・デスモで10,250rpmまで引っ張る方向に振っている。馬力77.5psという数字以上に、回し方が異常なんです。整備性で言えば、デスモのバルブクリアランス調整は熟練を要します。私もCB400SFのバルブ調整は何度もやっていますが、ネジ式シムとデスモでは作業の性格が全然違う。シム交換でカム軸を抜く、専用ゲージ、開側・閉側それぞれの調整。正直、街のバイク屋で気軽に頼める作業ではないので、購入を検討する人は正規ディーラーでのメンテ前提と考えた方が現実的です。それでも、この設計に憧れる気持ちはわかる。Hondaのカタログにはまずない発想ですから。

注目ポイント②、Wheelie Assistとスライド・バイ・ブレーキという開き直り

もう一つ笑ってしまうのが電子制御です。コーナリングABSに「Slide-by-Brake」機能、つまりリアをスライドさせながらコーナーに進入する、いわゆるバックイン動作を電子制御がアシストする。さらにオプションエキゾーストを入れるとWheelie Assistがアンロックされ、ウィリー姿勢を電子制御がトルクマネジメントで保ってくれる。冷静に書くと、メーカーが「ウィリーしやすくする機能」を正式に商品として提供しているわけです。これは設計思想として相当開き直っている。日本の公道で使う場面はほぼありませんし、私自身は峠もCBR600RRでサーキット中心の人間なので、公道ウィリーは推奨しません。ただ、サーキットやカートコース、クローズドのスーパーモタードコースで遊ぶ層には強烈に刺さる装備です。27歳の頃にCBR1000RRで峠に通っていた時期、電子制御は最小限でした。今のリッターSSが持っているコーナリングABSやスライド制御の進化は本当にすごい。Ducatiはその技術を、77.5馬力の単気筒という「絶対パワーが足りない」車体に全部載せしてきた。やりすぎ、と言うべきか、面白すぎと言うべきか。少なくとも、ハードウェアより先にソフトウェアで遊ばせる時代になったことを象徴する一台です。

ライバル比較、KTM 690 SMC RやCRF450L系との立ち位置

このクラスでまず比較されるのはKTM 690 SMC Rです。LC4単気筒、約74馬力、車重は近い水準、価格は欧州で1万2000ユーロ前後。シンプルな硬派モタードとして長年カルト人気を持っています。Husqvarna 701 Supermotoも同系エンジンの兄弟車。Ducati 698 Mono Neraは、これらに対して「Desmoエンジン+電子制御てんこ盛り+ブランド力」で1.5万ユーロ近くまで持ち上げた立ち位置です。Honda側で言えば、純粋なスーパーモタードはラインナップに少なく、CRF450Lベースのカスタム、もしくはCRF250Mの時代を懐かしむ人が多い領域。日本市場での選択肢は限られます。私のガレージにあるCB1100は重量250kg超の対極キャラなので比較になりませんが、CBR600RRをサーキットで走らせる感覚から言うと、軽量×高回転×電子制御の組み合わせは絶対に楽しい。ただ、パーツ流通と整備性の観点では、KTM/Husqvarnaの方が国内の社外パーツも豊富で、ショップの対応経験も蓄積されています。Ducati 698 Monoはまだ国内で台数が出ていないので、消耗品やバルブ周りの整備工賃、待ち時間も含めて、購入後のランニングコストは事前にディーラーで確認すべきです。デザインとブランドで殴ってくる一台なので、そこに価値を見出せるかが分かれ目になります。

誰におすすめか、買う前に整備士目線で確認すべきこと

Nera仕様の買い手像は、はっきりしています。スーパーモタードを「移動手段」ではなく「自己表現」として乗る層、サーキットやカートコースで遊ぶセカンドバイク需要、そしてDucatiブランドへの強い愛着がある人。実用性で選ぶバイクではありません。私が中古車相場を扱っていて思うのは、こういう尖った限定色仕様は、新車プレミアより数年後の中古での値落ちと希少性の出方が読みにくい、ということ。標準色のHypermotard 698 Monoとの差額が、リセール時にどこまで残るかは未知数です。整備面で必ず押さえるべきは三点。一つ目、デスモのバルブ点検サイクルとディーラー工賃を見積もる。二つ目、Termignoniサイレンサーは公道仕様か確認する(レーシング側はクローズド専用)。三つ目、保管環境です。軽量トレリスフレームと赤いホイールは美しい反面、雨ざらしで使う車両ではありません。私のCB400SFは部品取り兼用でガレージに置いていますが、こういう繊細な車両こそ屋根付き保管が前提です。日本での正式な発売時期や価格は、輸入元の発表を待つ必要があります。気になる方はまずDucati正規ディーラーで実車を見て、メンテパッケージの内容まで聞いてから判断するのが堅実です。

まとめ

結局のところ、Hypermotard 698 Mono Neraは「単気筒にPanigaleの魂を入れる」というDucatiの趣味全開の一台です。77.5馬力、151kg、デスモ、Wheelie Assist。数字を並べるほど正気を疑いますが、それが魅力。買うべきはサーキットやカートコースで遊べる環境を持ち、デスモ整備をディーラーに任せる前提で楽しめる人。実用通勤バイクを探している人にはまったく向きません。日本での導入時期と価格は正規ディーラーの公式発表待ちですが、気になるなら標準のHypermotard 698 Monoを試乗して、自分にこのキャラがハマるか確かめるのが第一歩。次に、メンテナンス費用と保管環境を冷静に見積もる。そこまでして欲しいと思えたら、Nera仕様を狙う価値は十分あります。




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