HondaとLGが組むEVバイク充電網、インドネシアで何が動き出すのか
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HondaとLGが組むEVバイク充電網、インドネシアで何が動き出すのか

電動バイクの普及で一番のネックは、車両ではなく充電インフラです。今回、HondaがLGエナジーソリューションと組み、東南アジアの特定の国でEVモーターサイクル向け充電網の整備に乗り出すというニュースが入ってきました。私のガレージはCB1100やCBR600RRなど内燃機関ばかりですが、整備士目線で見ると、この提携は単なる充電器設置の話では終わりません。バッテリーセル供給から交換ステーション、二次利用までを見据えた、システム全体の設計思想が透けて見えます。今回は技術屋の視点で、この座組みの中身を分解していきます。

提携の中身、バッテリー供給と充電網がセットで動く理由

今回の提携は、Honda単独で充電器を撒く話ではありません。LGエナジーソリューション、つまり世界トップクラスのリチウムイオン電池セルメーカーが、車両側のバッテリーパックと充電インフラの両方に絡んでくる構造です。報じられている対象国はインドネシア。世界有数の二輪市場で、Honda系の販売シェアが7割を超えると言われる地域です。ここでEVシフトを仕掛けるなら、まず量産前提でセルを確保し、同時に充電ポイントを面で広げないと普及曲線が立ち上がりません。私は整備の現場で「部品が出るかどうか」「規格が統一されているか」をいつも気にしますが、EVの世界ではそれがセルの調達と充電コネクタの規格に置き換わります。HondaがLGと正面から組むということは、セル単位での安定供給を長期で押さえに行ったということ。これはCB族の純正部品供給の手厚さを支えてきたHondaの設計思想と、根っこのところで同じです。長く乗らせる、長く直せる体制を電動でもやろうとしている、と私は読んでいます。(出典: https://news.google.com/rss/articles/CBMigwFBVV95cUxPMzJlQnNfWDBXcEtJNEh0Nzh1aW9FZHhjQ3Q2TXB1bnhFRXBDam1XSVdVdWVLbTFwWElCcExnQ0dKU294dGVYSE0zRGJ3LUMyTDJsNmpQNFZZOHpZMTJDMFN1cDFYZ3d4aHF1T2VtNzZoaDAwQVlzd0pTQ0dmZUxDVEw4TQ?oc=5)

従来の充電方式と何が違うのか、交換式と据置式のせめぎ合い

EVバイクの充電には大きく分けて二系統あります。ひとつは車両に挿す据置充電式、もうひとつはバッテリーパックを丸ごと差し替える交換式、いわゆるスワップ方式です。Hondaは既に「Mobile Power Pack(モバイルパワーパック)」という規格の交換式バッテリーをアジア圏で展開しており、ガチャコ(Gachaco)という国内合弁でも実証を進めています。一方、LGと組む今回の動きは、セル供給だけでなく充電ステーション側のシステム構築にも踏み込むと見られています。ここがポイントで、コミューター用途は交換式、ツーリングやデリバリー長距離は据置急速、と棲み分ける思想がにじみます。私はCB400SFを部品取りに使うほど整備性にうるさい人間ですが、EVで一番怖いのは「規格が乱立して数年で孤立する」パターンです。VHSとベータの話を持ち出すまでもなく、規格戦争に負けた車両は中古市場で値が付かなくなります。Hondaが大手セルメーカーと正面から手を結んだことは、規格を取りに行く意思表示として読むべきです。

実走行で何が変わる、航続と充電時間のリアル

ユーザー目線で気になるのは、結局のところ「どれだけ走れて、どれだけ待たされるのか」です。現行のHondaモバイルパワーパック e:は1個あたり約1.3kWh、重量は10kg前後。EM1 e:のようなコミューターで航続は40km強です。交換式の利点は、待ち時間が30秒で済むこと。バッテリーが空になっても、ステーションでフル充電済みのパックを抜き出して差し込むだけです。一方、LGのセル技術を活かした次世代パックが入れば、エネルギー密度が上がって同じ重量でも航続が伸びる可能性があります。私はCBR600RRでサーキットを走るとき、ピットインのタイム短縮を死ぬほど気にしますが、EVバイクの世界では充電ステーションでの滞在時間がそれに相当します。1分でも短くする工夫がそのまま商品力です。さらにインドネシアのような渋滞の激しい都市部では、信号待ちでアイドリングしないEVのメリットが大きく、街乗り航続40km級でも実用十分というデータも出ています。配達業務での実証ではむしろガソリン車より稼働コストが下がる事例も報告されており、日本の感覚で「短い」と切り捨てる前に、現地の使われ方を踏まえる必要があります。

整備性と耐久性、バッテリー時代の「部品が出る」を考える

整備士として一番気にするのは、5年後10年後にこの車両を直せるかどうかです。内燃機関なら、Hondaは20年前のCB750のガスケット類でも純正で出てくるレベルの供給力があります。これがEVになるとどうなるか。バッテリーパックそのものが交換部品になるので、セル供給元との関係が切れた瞬間、車両が文鎮化します。今回LGと組んだということは、少なくともセル供給ルートを長期で確保したわけで、これは整備性の観点で大きな安心材料です。さらに交換式の利点として、劣化したパックだけを抜いて新しいパックに差し替えられる。エンジン載せ替えに比べて、はるかに敷居が低い設計です。私は自宅ガレージでCB1100のキャブ調整に半日かける人間ですが、EVは整備の中身が「機械の調整」から「診断機とソフトウェア」に移ります。OBDポートにつないでBMS(バッテリーマネジメントシステム)のログを読み、セル単位のバラつきを判断する世界です。Hondaが分解しやすい設計思想をEVでも貫けるか、そしてサードパーティの整備工場にも診断ツールを開放するか、ここが今後の評価ポイントになります。

EV二輪インフラの技術トレンド、アジアが主戦場になる

EV四輪は欧州と中国が主導してきましたが、二輪は明確にアジア、特に東南アジアとインドが主戦場です。理由は単純で、二輪が生活インフラとして根付いているから。インドネシアの年間二輪販売は600万台規模、ベトナム、タイ、インドを合わせれば数千万台市場です。ここでバッテリー規格と充電網を取った陣営が、世界の二輪EV標準を握ります。Honda、ヤマハ、KTM、ピアッジオが立ち上げた「Swappable Batteries Motorcycle Consortium」もこの流れの一部で、欧州ベースですが意識しているのは明らかにアジア展開です。今回のHonda×LGはこの大きな潮流の中の一手で、セルメーカーと完成車メーカーの垂直連携が、今後のEV二輪の常識になる予感があります。中国のCATL陣営や台湾のGogoroの動きも合わせて見ると、二輪EVは「車両の出来」より「インフラを誰が握るか」の勝負に入っています。日本の読者には縁遠く感じるかもしれませんが、ここで決まった規格が数年後に日本にも降りてきます。私のガレージのCBR600RRが現役のうちに、次世代EVが街中で当たり前に走る時代が来るはずです。

まとめ

今回のHondaとLGの提携は、EV二輪のインフラ整備という地味なテーマながら、技術屋から見れば本丸の動きです。セル供給と充電網をセットで押さえに行く姿勢は、Hondaが長年内燃機関で築いてきた「部品が出る」「直せる」という設計思想の電動版だと私は受け止めています。インドネシアという特定市場での実証ですが、ここで磨かれた仕組みは確実に日本やアジア他国に波及します。次に注目すべき技術ポイントは、LGの次世代セルがモバイルパワーパック規格にどう組み込まれるか。エネルギー密度が一段上がれば、コミューターを超えた中型EVの実用化が見えてきます。お近くのHondaドリームでEM1 e:に触れてみると、この話が一気に身近になります。




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