東京モーターサイクルショー2018が私たちに見せてくれたもの
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東京モーターサイクルショー、今年も盛り上がっていましたね。

当日の駐輪場では遠方からお見えになった他県ナンバーのバイクも数多くお見受けしました。

皆さんはお出かけになられましたでしょうか。

さて、こうしたショーには必ず一般公開に先駆けて、メディア向けの公開枠があるものです。

一般のお客さんがいない状態なので、当然そうした日に取材した方が、一つ一つの展示をじっくりと見ることができます。

しかし諸般の事情により、今回筆者は特別公開日ではなく一般公開初日に取材をすることになりました。

最初はちょっと残念な気もしていましたが、お客さんがどっと押し寄せている状態だからからこそわかることも多くありました。

今回は、そこで聞こえた来場者のつぶやきなどを拾いながら、「今年のモーターサイクルショー2018が伝えたもの」をまとめてみようと思います。

乗りやすさで新しいファンを獲得

鈴鹿の8時間耐久レース、古くはその前身である浅間山火山レースの時代から、「レースで優勝することこそがバイクにとって最大の宣伝効果」と言われてきました。

過酷なレースを勝ち抜くということは、「速さ」を証明するのと同時に、「技術的な先端性」を誇るということ。

手に入れた人はそこに所有感を見出し、それを我ものにしようと多くの人とがあこがれを抱くものですよね。

今年はちょうど、全日本ロードレースにホンダワークスチームが復活することもあって、スーパースポーツ(以下SS )は更なる盛り上がりが期待されています。

各社ともに自慢のSSが美しく飾られていたわけですが、やはり一番注目を浴びていたのは昨年のミラノ国際モーターサイクルショー(EICMA)で発表されたDUCATIのパニガーレV4。

筆者も初めてその実車にお目にかかることができました。

外見上はV4でありながらLツインと比較しても変わらないように見えるコンパクトさ。

これは本当に驚かされました。

展示用のほか、跨りOKな車両もあり、ブースは大混雑。

人をよけてこのショットを撮るにも相当苦労しましたが、それだけにパニガーレV4に対する来場者の期待値の高さを感じることができました。

会場では既にバレンシアでこのパニガーレV4に試乗された、プロレーサー&モータージャーナリストの丸山浩氏によるマシンを解説を拝聴することができました。

ありがたく拝聴する中で、丸山氏が繰り返し語られていたのが、「パニガーレV4は、新しいDUCATIファンを作るマシンだ」という言葉。

V4でありつつも、これまでのLツインの鼓動感があり、どこまでもパワーが伸びていく214馬力のエンジンはGPマシンを体感させてくれるといいます。

特筆的なのは全域において滑らかなフィーリングであること。

Lツインではシビアになりがちだったコーナー立ち上がりもアクセルを開けやすく、サーキットではこれが確実にタイムに反映するだろうと丸山氏は語っていました。

また丸山氏の試乗初回は、濃霧のためにゆっくりとしたペースで走らざるを得なかったものの、これが全くストレスなく「平和な周回」だったとのこと。

「リアをスライドさせながらストレートに乗せることもできれば、のんびり走ってもマシンがサスをその速度に最適な状態にしてくれる。」

つまり、搭載されているIMUはじめ電子制御が秀逸で、高度な限界性能を持つがゆえに、常用域では相当な余裕をもって走ることができるというのです。

単に速いだけでなく、フレンドリーなキャラクターも併せ持つパニガーレV4。

「パニガーレV4が新しいDUCATIファンをつくる」というのは、その『親しみやすさ』を評して語られた言葉でした。

このモーターサイクルナビゲーターの中でも、「ス-パースポーツ日独伊使えて速いはどのバイク?」という記事を書いたことがあります。

各国のSS6車を比較していく中で、パニガーレV4だけではなく世界の最新SSマシンの傾向として感じられたのが、どんな乗り方にも順応する『親しみやすさ』でした。

タイムを上げるにしても、街乗りをするにしても、まずは親しみく乗りやすいことが肝心。

今やSSも、誰もついいてこれないほどのスピードや限界性能の高さだけを売り物にする時代は既に終わっているようです。

東京モーターサイクルショー今年の傾向

ヤマハブースで見つけた「時代の流れ」

ヤマハブースはノベルティーのトートバックがもらえるとあって長蛇の列。

筆者もいただきましたが、とにかくこの列の長さにふさがれて、ヤマハブースの正面にあるバイクを正面から撮影することがほぼ不可能な状態でした。

そんな中でも比較的見やすかったのが、ブース奥に展示されていたスクーターのラインナップ。

長らく続いたマジェスティーが生産終了となり、スポーティーな新世代スクーターX-MAXへと移っていく様子には興味をそそられます。

しかしそれ以上に筆者が注目したのは、今年からヤマハがホンダと協働して造ることになった50ccのラインアップ。

新しいJOGとVINOの姿には地味にインパクトをうけました。

 

JOGもVINOも、前から見ればそれらしい姿に違和感はありません。

しかし後ろをローアングルで捉えれば、パワーユニットにはしっかりとホンダの刻印があるのです。

お互いをライバルと認め、一時は「YH戦争」とまで言われるほど競争の激しかった両社。

以前から言われていることでしたがこのリアビューは、そんな両社がお互いに手を取り合って協業しなくてはならない原付一種の現状を、具体的に確認させてくれます。

会場にあふれるバイクファンと、減衰を続ける原付一種。

筆者はそんな対極的なコントラストを、人の波の中で眺めていました。

125化する?往年の原付たち

ホンダのブースに目をやると、そこにあるのは125㏄のカブやモンキー。

カブには新型に50㏄が残ったものの、原付一種の往年車種が125㏄に活路を得ようとしているように見えます。

「通勤の足」として見直され、スクーターを中心に活況を呈する125㏄市場。

業界としては何とかここを入り口に、普通二輪以上への波及効果を期待したいところです。

そこに風穴を開けてきたのがグロムやZ125といったミニスポーツ。

さらにこの2台の発売には多方面からの期待が寄せられていますね。

125の新たな挑戦

ホンダブースには、発売されたばかりのCB1000R。

現車を見ようと多くの来場者が詰めかけていました。

既にCB1000Rは、ホンダが提唱する「ネオ・スポーツカフェ」の旗艦として既に十分な風格を見せています。

またこのシリーズ機種としてCB250RそしてCB125Rも展示されていたわけですが、中でも興味深いのはCB125Rの方。

じっくりと実車のその造り込みを見ていくと、125㏄の新しい潮流のようなものをそこに感じます。

例えばこのフロント周り。

グロムの場合は同じ倒立サスでも、ミ二らしく31パイ。

対してこのCB125Rの場合は41パイとかなり本格的なものになっています。

全体的に見てみても、「ここまでしっかりした造りの国産125ってあったかな?」と思います。

スズキでも同じようにGSX-S125などが注目を集めていたわけですが、筆者にはこれらのミニストリートファイターから想起するものがありました。

つまりそれは、経年ライダーならその入門期にお世話になったであろうRZ50やRGΓ50、あるいはNS-1やAR-50といった、「0.5ファイター」たちの雰囲気。

上級クラスのバイクが持つ楽しさが凝縮され、小さいながらもシリーズのスピリッツを楽しむことができたあの熱い雰囲気。

噂される125㏄の免許取得緩和を睨み、現代の若い世代に向け、それが125㏄の中に再燃されようとしているのかもしれませんね。

ただ、人々の関心はどうしてもパワーのある豪華装備の大型車に注がれがちです。

それでも、バイクに対する間口を大きく広げてくれる車種として、125㏄の新しい挑戦は見過ごすことなく押さえておくべきかな?

筆者はそんな思いで新しいミニストリートファイターたちを見ていました。

造る楽しみもバイクの文化

モーターショー以上に国内の有名ショップのカスタムパーツやマシンをたくさん見ることができるのも、モーターサイクルショーの楽しいところです。

ユニコーンのブースにはハンスムートデザインの美しさを今に伝える刀たちが美しく並べられ、往年のファンは懐かしさを、若いファンには新鮮なカッコよさとして受け止められたようです。

特に受注によって製作される1400刀には「これいいよねぇ」とつぶやくファンの姿を多く見かけました。

こうして、ビンテージスタイルを現代にかっこよく見せているショップとして忘れてはいけないのが、ドレミコレクション。

ドレミコレクションは旧車の復刻パーツや、現行車を旧車のフォルムに仕立て直す外装キットに定評のあるショップです。

昨年発売されたZ900RSをアレンジしたいくつかのデモ車。

この中でも、これをFXの姿にするキットを組んだマシンが人気を集めていました。

おまけにスーパーチャージャー付きとは度肝を抜かれましたね。

ただ、エンジンはさておき、「俺もこれでFX造りたい!」という声がシャッターを押す筆者の回りでいくつか聞こえていました。

やはりバイクにはこうして、乗るだけではなくて好みの形に造っていく楽しみがありますよね。

時代感を現代風にアレンジする楽しみ方も味わい深いものだと感じました。

バイクの電化にひと塩のアイディア

昨年のモーターショーでは、バイクの電動化やAIの採用などがも話題でしたね。

今回のモーターサイクルショーではそれがメインテーマではないので、全体の展示を見ても「バイクの電化」について特に強調された印象はありませんでした。

しかし電子パーツ大手のMITSUBAのブースは、モーターショーでは見られなかった電動バイクの新しい可能性を見せてくれましたよ。

それは既存のバイクを電動化するキットと、それを搭載したトライアルマシン、「E-TR」の展示。

装着されたキットを見てみると、シリンダーやピストン、それにコネクティングロッドが取り払われています。

その代わりに、クランクケースの中には最高出力10kWに最高トルク18N・mの電動モーターがすっぽりと収まっているのです。

多分、電動化を嫌うライダーがいたとすれば、ミッション操作の小気味よさがなくなることをその理由として挙げる人も多いのではないでしょうか?

しかし、このマシンの面白いのは電動化すると不要になるはずのクラッチやミッションがそのまま生きていることです。

このトライアルマシンは実際に走行が可能で、会場ではトライアル国際A級スーパークラスの砂田真彦選手が、このE-TRで走行する映像も放映されていました。

モーターのパワーを活かして軽々と岩場を乗り越えていく姿は圧巻です。

今回、いくつか電動マシンの展示がありましたが、注目されていたのはマン島TTを戦う無限の電動レーサー「神電 7」。

カウルを取り去った形での展示もありましたが、こちらは制御装置やモーターがかなり大型なもの。

当然今のところMITSUBAと神電7の間には関連性はありませんが、いずれ来るといわれる「バイクの電化」。

MITSUBAのE-TRが見せてくれたように、将来的に「電動モーター+ミッション」の応用が進められたとすれば、こうした電動レーサーもいろいろ変わってくるかもしれません。

例えばミッションでモーター回転を抑えられる分バッテリーを小さくしたり。

さらに各ギアごとに制御ステージを設定していくことで、私たちが日ごろ親しんでいるエンジンバイクの乗り味にも近い電動車ができるかもしれません。

この2台にはそんな電動車の楽しい未来を想像をさせてもらいました。

関連記事;『MotoGPに電動車クラスができる!本格的に動き出した「Moto E」への道』←神電の走行動画ありです。

バイクファンのためにも専用会場を!

「バイクに対する親しみやすさ」これが今回の書くk者の展示の中で共通したテーマだったように思います。

大型モデルの中には電子制御によってそれが突き詰められていたり、小型モデルの拡充もそうでしょう。

値段が少し高くなっていくのが気がかりですが、バイクが人に親しまれるための技術的な努力には拍手を送るべきでしょう。

その甲斐あって第45回目を数えるモーターサイクルショーも、会場規模が約2,000㎡縮小されたに関わらず、総来場者数は146,823人。

過去4年の中で最多を記録した昨年よりもさらに微増し、過去5回で最多の来場者数を記録しました。

開催年 出店者数 入場者数
2014 122 113,830
2015 121 132,249
2016 121 132,575
2017 155 146,495
2018 135 146,825

(※数値は主催者発表)

今回の取材日は一般公開初日。

とにかくたくさんのライダーに愛されているバイクたち、そしてバイクを愛して止まないたくさんのライダーたちの姿をうれしく見守った一日となりました。

来場者に関する年代別の詳細なデーターは持ち合わせていませんが、業界団体の方の話によると、確実にその中の若年層の来場者数が増えているのだとか。

筆者の目から見てもそれは明らかで、会場・駐輪場ともに大学生くらいの若いライダー、さらには女性ライダーの姿を特別に思うことはありませんでした。

これは実にいい傾向だと思います。

ただ、周囲の来場者からちょくちょく聞こえていたのは、「場内の駐輪場がなくなって不便になった」という声や「会場人多すぎ」といった言葉。

展示も密度の高い人の波に押されて、ひとつづつのバイクをじっくり見て回るのが難しい状況に…。

大体の展示を見終わるころにはかなり消耗していました。

年々増加する来場者数に対して会場が縮小されるというのは、誰の目からもよい印象を持ちません。

「どうせ混んでてバイクゆっく見られないし、疲れるから来年はないな」

万一そんな風に思う人がいたとしたら悲しいことです。

毎年アニメなどの大きな催しと会場がバッティングするせいなのかはわかりません。

しかし毎年のことなので、幕張メッセやパシフィコ横浜など、別の見本市会場での占有開催を検討してほしいと思うのは筆者だけでしょうか?




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