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ドルナが発表「Moto E」その中身とは?
2018年2月6日、ドルナスポーツは、ローマで会見イベントを行い、2019年の開催を目指しす電動バイクレース、「Moto E」のスポンサー体制や、競技の概要について発表しました。
今回はその内容をお知らせしながら、今後の展望などを考えていこうと思います。
強力なスポンサーを獲得
その中で、イタリアを拠点とする大手電力会社「enel(エネル社)」が永続的なタイトルスポンサーとしての契約に合意したことを発表。
エネル社はイタリアの発送電に関する大手会社。
原子力発電所も持っていますが、近年では太陽光発電や地熱発電などの永続的エネルギーの開発に力を入れている多国籍企業です。
彼らは単に出資提携だけではなく、高速充電の設備や技術をサポートするテクニカルパートナーとしてMoto Eの重要な役割を担うことになります。
特に電動車で争われるクラスなので、充電設備はレースの要。
電動車のための専用設備を1から起こして転戦するわけですから、ドルナにとってエネル社は強力なパートナーというわけですね。
マシンの概要は?
このMoto Eクラスでは、イタリアのモデナに本拠を置く「エネルジカ社」の「EGO」という車種がレース仕様にモディファイされ、そのワンメイクレースとして展開されます。
会場でその姿をお披露目を担当したのが、元MotoGPライダーロリス・カピロッシ氏。
カピロッシ氏は、
「最初にテストで乗ったときは本当に驚かされたよ。
今までのバイクとはフィーリングが全く違うんだ。
遅いバイクだと思ってる人がいるかもしれないけど、これホントに速いんだよ。
開催までのあと一年あるけど、今も既に凄いレベルのバイクになっている。
そのすごさをみんなに証明して、このプロジェクトを一層盛り立てていくよ。」
と意気込みを語っていました。
彼の言う通り、発表されているエネルジカ・エゴのマシンスペックは
最高時速:250km/h
最高出力:110kw(147hp)/ 5,000rpm
最大トルク:200Nm(20.39kg-m)/0~ 5,000rpm
0㎞/h⇒100㎞/h加速:3秒
最高時速だけを見ると驚かないかもしれません。
しかし、例えばカワサキのH2Rのトルクは、165Nm(16.8kgf・m)/12,500rpm。
それに比較すると、エネルジカ・エゴは5000回転で200Nmなので、怒濤のトルクマシンであることは想像に難くないですね。
実際の走りはこちらでご覧いただけます。
参照元;https://youtu.be/0b2odONEJpc
いかがでしょうか、このジェットのような音。
聞きなれたMotoGPクラスの吠えるような音ではありませんが、生で聞いたらなかなかの迫力かもしれませんね。
チーム体制は?
Moto Eでは、シリーズを計11チーム18台のバイクで構成されることが発表されました。
内容としては、現在MotoGPに参戦する「テック3」、「グレッシーニ」、「LCR」、「プラマック」、「マークVDS」、「アンヘル」・「ニエト」などプライべーたーチームが2台ずつ。
さらにMoto2とMoto3クラスから、4チームが各1台ずつを走らせるということです。
まだ2019シリーズの具体的なスケジュールについては発表されていないものの、ヨーロッパ圏で全5戦が開催される予定。
決勝の周回数は10周の予定で、金曜日にフリー走行が行われ、土曜日が予選、そして日曜日に決勝というMotoGPと同様のレーススケジュールで開催されることも発表されました。
なお、ライダーとチーム関係者にとって初となる公式練習は、2019年のシーズン入りを前に同年2月にへレスサーキットで行われるということも発表になりました。
またMoto EクラスのタイヤサプライヤーはMotoGP同様、ミシュランが担当するということです。
MotoEの開催は実に意義深い
「競争しないと、いいものなんてできっこない」
そう言ったのは、かの本田宗一郎氏。
日本の自動車業界がまだよちよち歩きをしていたころに鈴鹿サーキット建設し、その言葉を具現化した人の言葉です。
『なぜ電動バイクでレースをすることになったのか?』
ドルナが語るその理由は本田宗一郎氏の言葉に通ずるものがあります。
↑ドルナスポーツのCEOカルメロ・エスペレータ氏
「今後は内燃機に頼らないスマートモビリティーの必要性が今以上に増すであろうと考えます。
そのためには、各分野にソリューションを起こし、電動車の世の中を構築していくことが最も重要だと考えました。
2019年にMoto Eを開催することは、将来のレースにおけるゼロエミッションシリーズの先駆けとなるものです。
最新の技術がこれまでのレース競技の尺度を明らかに変えていくことにるでしょう。
またMoto Eは技術開発を促進させ、モビリティーの革新の手本として、それをグローバルに示すことができると考えています。」
参照元;motogp.com HPを意訳
ドルナはMoto Eについてそのように期待しており、これをMoto Eクラス設立の理由としています。
2017年の東京モーターショーを見て明らかなように、世界の自動車は確実に電動化への道を歩んでいるようです。
例えば今、アメリカでも「車はデトロイトではなくてシリコンバレーで造られる」と言われるほどになってきました。
2輪も電動化は例外ではなく、内燃機に代わって実用的な、しかも二輪に搭載できるほどコンパクトな電動パワートレインの開発が急務となってきています。
今回の発表でMoto Eが具体的に進化する内容が明らかになったわけですが、まさに「競争してよいものを造ろう」というわけですね。
ゼロエミッションモータースポーツの発展は、これまでの内燃エンジン車の発展がそうであったように、環境とモビリティーの共生にとって大きなものをもたらしてくれるでしょう。
電動GPその先の期待
先述の通り、Moto E 2019年シリーズはひとまず5戦のヨーロッパラウンドのみということです。
しかし、ドルナは将来的にMoto Eを世界で転戦させ、技術的にも世界に門戸を開く構想を持っているようです。
エネルジカ・エゴのあの走りを見ると、「早くもてぎでMoto Eを観てみたいな」とも思いますが、世界のコンストラクターが造る電動車というのも見てみたいですよね。
そうなると気になるのは既にマン島TTに日本から参戦している無限の電動バイク、「神電」の存在です。
昨年はあのガイマーティン選手が駆って話題となりましたね。
まずはオンボード映像でその速さを見ていただきたいと思います。
どうでしょう。
「遠慮なく速い」ですよね。
神電には新幹線のモーター制御技術も投入されているというのを聞いたことがありますが、それもうなづける速さです。
これと絡む海外の電動バイクとの一騎打ち。
ぜひ見たいですよね。
マン島TTでは、600㏄や1000㏄・4サイドカーレーサーなどが3周ほどで争うわけですが、電動クラスは1周のみ。(一周約60㎞)
それでも毎回、バッテリーの寿命や様々な部分に改良が施しながら、スピード以外の限界にも挑んでいます。
Moto Eではこうした充電の課題をクリア、もしくは緩和させる技術の開発が期待されるわけですね。
2019年はイタリアのエネルジカ社製バイクのワンメイク、エネル社もイタリアンカンパニー。
いろいろとレギュレーションの壁もあるとは思いますが、各国バイクメーカーが自国の電子メーカーとコンソーシアムを組んで世界と闘う姿というのも、そのうち見られるかも知れません。
もちろんそこに、さらに進化した神電がMoto Eに参戦するというのも考えるだけでワクワクします。
さて、先述ご紹介させていただいたエネルジカのマシンを紹介するプロモーションビデオの最後で、カピロッシ氏は「未来は意外に近くにある」という旨のことを言っています。
我々はまだ2輪で電動車というと、電動の原付くらしか、乗り味としてイメージできるものがありません。
それだけにMoto Eは、「もう少し先」に感じている私たち日本人の電動バイクに対する未来感を、グッと近くに引き寄せてくれるようになるでしょう。
Moto Eの今後の発展に期待したいですね。