平成最後の東京モーターサイクルショーは新時代へ向け何を見せたか?
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まだまだお伝えしたかった東京モーターサイクルショー

今年も華々しく開催された東京モーターサイクルショー。(以下TMCS)

2019年4月には新元号が発表になるとあって、平成最後のTMCSとなったわけです。

モーターサイクルナビゲーターではこの様子を.国際展示場から速報でお伝えしました。

できるだけ多くの内容を早くお伝えしようと張り切りましたが、完全ワンマン取材ゆえ、カメのように遅筆な私の執筆能力で撮って出しはキャパオーバー。

このほかにも、いくつかのブースを取材して撮りためている写真もあるのですが、上記5社のレポートがやっとやっとな状態でした。

そんなわけで、今回は平成最後に開催された「第46回東京モーターサイクルショー」を振り返りつつ、今回の出展内容から平成の先、新世代のバイクシーンを考えていきたいと思います。

来場者過去最高記録を更新!

第46回を数える今回は、延べ14万9524人もの来場者数を数え、過去最高を記録した昨年の来場者数(14万6823)を上回り、大盛況のうちに全日程を終えました。

ちなみに、主催者から公式に発表された来場者数は次の通り。

開催日 天候 入場者数 前回入場者 前年比
3月22日(金) 晴れ 32,930 32,557 101%
3月23日(土) 曇り時々雨 60,529 61,734 98%
3月24日(日) 晴れ 56,065 52,532 107%
合             計 149,524 146,823 102%
開催年 出展者数 入場者数
2016年 121者 132,575
2017年 155者 146,495
2018年 135者 146,823
2019年 153者 149,524

「第46回東京モーターサイクルショー」開催実績より

今年は昨秋に東京モーターショーの開催がなかっただけに、新生KATANAやYZF-R25など、昨年海外で発表されたモデルの国内一般初公開は、この動員増に少なからず影響を与えているのでしょう。

バイク人口の減少・高齢化が進んでいると言われるなかで、バイクの楽しさをお伝えしている者として、毎年この推移には励ませれるものがあります。

きっとこれは多くのライダーの皆さんにとってもうれしい傾向ですよね。


今回は高校生ライダーや、バイク免許取得後1年以内のライダーへの優待もありました。

来年もこれを活かして、若い世代の来場者をもっともっと増やして欲しいものです。

今年のモーターサイクルショーは体感型

ここ数年のTMCSを見ていると、出展内容にはいくつかの傾向に沿って変化しているように思います。

一つは「モノ」から「コト」への変化。

そしてもう一つは、

環境、つまり二輪電化の具体化です。

昨年からの変化

これまでも展示の中でも、実際に跨ることのできる車両の展示は珍しいことではありませんでした。

しかし、今回はこれまで以上に跨り可能なバイクが多かった気がします。

例えば昨年、発売間近な跨り可能車としては、


昨年のDUCATIブースにて↑

DUCATIがPANIGALE V4の跨り体験をしていたように記憶していますが、これは確か時間を区切っての体験コーナー。

発表して間もないモデルのオープン展示は、カブ125Cやモンキー等の小型車が中心だったと記憶しています。

昨年、多くの最新トップモデルは壇上にあり、まだ触れることは出来ませんでしたね。

昨年の第45回東京モーターサイクルショーで、壇上にあったトップモデルの展示↑

しかし今回は、殆どのメーカーが発表間もないトップモデルを跨り可能車として惜しみなく公開。その感触を多くの人が体験しました。

 

つまり、展示の変化としてはバイクを眺めるだけでなく、体験してもらうための展示が目立ったのが今回の特長だと言えます。

また、一昔前の展示では、各社とも最新スーパースポーツモデルの先進性を各社のブランディングとして前面に出す展示が多かった気がします。

今回もスピードやパワーをアピールするモデルも見られました。

でも全体的には、ツーリングでの快適性や、乗り味の楽しさをアピールするモデルの展示がメインになっていたのも一つの特長でしょう。

「モノ」から「コト」への変化

昨年、自動車工業会から発表された2017年度二輪車市場動向調査(以下、動向調査)によると、250㏄クラスに微増が見られ、若年層の減少は辛うじて下げ止まった模様。

そして、所有には至らないけれど、バイクには魅力を感じているという人も多く、彼らは「何かきっかけがあればバイクへの興味を深めたい」と考えているのだそうです。

これに対し業界は、バイクを単に「モノ」としてではなく、バイクを繋がりを広げて体験を得るためのツール、つまり「コト」として世の中に発信・提供していこうという動きを活発化させています。

今回のオープンな展示も、バイクを単に「モノ」としてだけではなく、「コト」として体験してもらうのが狙い。

さらに、各メーカーとも、各車の個性を体験できるようなユーザーイベントの開催をアピールしていたのも、その体験の拡大を狙ってのことですね。

また、動向調査によれば、2017年度のライダー人口の平均年齢は52.7歳。

年々バイク人口の高齢化が増していく中で、「今後10年以上バイクに乗り続ける」と答えた人は意外なほど少ないとも言います。

要するに業界は今、若年層への訴求と、経年ライダーのライダー年齢延命が課題なわけですね。

また、やみくもにスピードを追い求めることよりも、少ない時間の中でじっくりとバイクとの時間を味わおうとする人が多くなっているようです。

主力商品としての座がスーパースポーツ一色ではなくなり、ネイキットやスポーツツアラー、さらに250㏄~ミドルクラスになどに移ってきているのもこのため。

逆にスーパースポーツバイクあっても、最近のものにはハンドル切れ角を多くしたり、初速のトルクを豊かにするなど、フレンドリーに乗りこなせる性格も与えられていますね。

しかし、既に200万円以上が平均のスーパースポーツバイクは、新規の開発スパンがさらに長くなって、今後しばらくは各部の熟成という形での継続販売が続くことになるでしょう。

若年層への訴求、経年層の延命にとっても、スピード性能に特化して高価格というのは現実的ではないのかもしれません。

今回の展示では、

「バイク+旅」

というテーマが少なからず見られ、各メーカーとも、気軽に乗れてツーリング性能が豊かなバイクを前面にアピールしていました。

恐らくこれが、バイクシーンの課題に対する業界の回答。

新時代を迎える多くの人に向け、バイクを「モノ」から「コト」つまり、「新しい体験のツール」として提案しているのが今回の東京モーターサイクルショーだと言えるでしょう。

2輪電化への具体的なアプローチ

これまでの東京モーターサイクルショーも変遷を見ると、バイクニーズの変化に合わせ、さらに幅広い体験を実現してもらおうと、メーカーが車種の形態を多用に変化させていることがわかります。

また、環境規制もさらに強化される中、ゆくゆくバイクの電動化というのは避けられないことでしょう。

さらに、125㏄の優位性が見直され、これまで二輪需要を支えてきた原付き一種の需要が先細るなか、50㏄モビリティーの行方というものも気になります。

原付一種が二輪電化の礎になる?

昨年のHondaブースには、PCXエレクトリックが展示されていました。


2018年のHondaブースにて↑

またYAMAHAブースにも、


電動スクーター「Eビーノ」が展示されていましたが、

↑プーリーケースに刻印された「HONDA」の文字にご注目。

その傍らに置かれた、

「ホンダ製ヤマハJOG」

の実車を前に、

「原付もいよいよここまで追い詰められたか」

と思ったのを覚えています。

今年のTMCSでは、ホンダからPCXエレクトリックに続く電動モビリティーとして、


「ベンリー・エレクトリック」を発表するHondaモーターサイクルジャパンの加藤千秋社長。

実用車であるベンリーを電動化した「ベンリー・エレクトリック」のワールドプレミア発表がありました。

あるところでは「消滅」すら噂される50㏄モビリティーですが、なるほど電動車としてならまだまだ発展の道はあるわけですね。

電動2輪は自然な操作性で楽しめるようになる?

また、生活に必要な実用車を電動化することで、電動車全般の耐久性や各部の小型化など性能・効率の向上の礎として貢献する車種になると思います。

これに続いてホンダは、


ファンバイクにおいての電動化に、モトクロッサー「CRエレクトリック」を、同じくワールドプレミアとして発表。

電動2輪の世界がまた一歩近づいた気がしました。

ただ、このCRエレクトリックには、


写真のようにクラッチがないため、操作の面ではこれまでのモトクロッサーからして少し違ったものになるかもしれませんね。

実は昨年(2018年)のTMCSには、PCXエレクトリックやEビーノだけでなく、さらに注目すべき電動車があったのをご存知でしょうか?


それがこの、「E-TR」というトレールバイク。

これはスターターモーター等の電子パーツサプライヤー、MITSUBAのブースに昨年展示されていたもので、


内燃機エンジンの腰下にモーターを内挿するという、実にシンプルな外観を持っています。

このため、クラッチやミッションなどは、そのまま活きているのが特長です。

電動車は本来、ミッションは不要なため、操作が単調になるということが懸念されていたわけですが、E-TRは「バイクを操る」という楽しみが電動車の中で自然に楽しめる可能性を見せてくれていました。

そして今回のTMCSでは、この「EV+ミッション」という組み合わせをさらに発展させたバイクが出展されていました。

台湾のKYMCO(キムコ)が、昨秋のEICMA(ミラノ国際モータサイクルショー)で発表した「Super NEX(スーパーネクス)」というバイクがそれ。


今回Super NEXは、日本初公開となりましました。

このSuper NEX、見かけはショットしたスーパーバイクのようですが、中身は何と、「電動モーター+6速ミッション+スリッパークラッチ」付きという超画期的なEVバイク。

しかも、現代のスーパーバイクとしてジャックナイフ防止やウイリー制御を行うIMUも備えています。

電動車は低回転にパワーが集まり、パワーの伸びがないのが難点。

ミッションを介在させることで、その難点を克服できるばかりか、わずか2.9秒で100km/hに達するという強烈なスペックを持っています。

Super NEXはその超絶スペックもさることながら「アコースティックライブサウンドシステム」という音響発生装置を持っている点にも要注目。

自然な形でバイクを操る楽しみを、マシンの声と共に味わうことができるようになっている非常にユニークなEVマシンなのです。

ミッションの性格を変えていけば、電池の持ちを良くする方向にも使えそうですし、単気筒やツインエンジンのサウンドなどを再現する等、ユニークなバイクもできるかもしれません。

現段階で、Super NEXの発売日は未定ですが、このバイクが発売されれば「EV+ミッション」という組み合わせが発展が期待できますね。

今のところ、EVは充電時間の長さと電池の寿命が課題。

しかし、アジアでは電池交換ステーションのインフラも整備されてきているようです。

 

今後はさらにこうした電池交換式のEVがミッションを持つようになれば、EVが加速的発展を見せるのではないかと思います。

昨年のMITSUBAブースから今回のKYMCOブースを見てきた中で、EVが楽しい方向に発展しているように見えました。

まとめ

今回は今年のTMCSの内容から、バイクの将来を考えてみました。

ひとまず直近、出展された新しいバイクたちが新時代のツーリングスポットを賑わすのが楽しみですね。




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