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ここまで来ているITS

皆さんは「ITS」という言葉をご存知でしょうか?

これは(Intelligent Transport Systems)の略で、人・道路・車両間のネットワークを構築し、交通事故や渋滞などの道路交通問題の解決を図る「高度道路交通システム」のことを指します。

例えば、車同士がインターネットで車速・位置などの情報を共有し、渋滞を回避するための情報をドライバーに提供したりするのもこのうちの一つ。

全車両にというわけではないですが、既に実用化されていますね。

こうしてITSは今、運転に必要な情報をリアルタイムに教えてくれるところまでは来ていて、すでに利用しているサービスもあります。

今後は車単体だけでなく、道路にも危険を知らせる装置が取り付け、さらに高度化したシステムが交通事故防止に役立てられる予定です。

このシステムが完成すると、例えば「交差点左側から歩行者接近中!」といった具体的な警告を表示して、ドライバーに危険をいち早く予見させることができるのです。


※イラスト;古野電機株式会社ホームページ、車車間通信/路車間通信(インフラ協調システム、ITSコネクト)より引用

今のところはこれも、車が人に知らせて、人が回避行動をとる。

つまり現段階でそれらは、人の判断を補助するシステムとして考えられているようです。

これが将来的には、このシステムをGPSやAI技術と連動してもっと高度なものになるといいます。

ドライバーの認知より早く車が危険を検知して、車自身が回避行動をとる危険回避のための先進技術。

少なくとも、人の判断よりも機械の判断を優先させて車を制御するというのはすでに始まっていて、オプション装備としていくつかの車に装備されるようにもなってきています。

ゆくゆくは車を人の判断ではなく、機械の判断で制御することもそう遠い未来の話ではなくなりました。

ただ、今後自動運転車を珍しくなくなるとして、バイクもそれにつられて運転を自動化するようになるのでしょうか?

バイクとITSの今

バイクも交通社会の一員であることは間違いないわけで、交通がITSを基調としたものになっていく中、技術革新に乗り遅れてバイクが排除されることがあってはなりません。

今以上に安全にバイクが愛される社会をつくるため、バイクメーカー各社は、ITSとバイクを協調させる取り組みを続けています。

あるメーカーの技術者にお話を伺ったところによると、二輪では今C-ITS、つまり協調型ITSの構想が実験段階まで来ているといいます。

具体的には、交差点や死角に入っている場合でも、バイクの存在を周囲のドライバーに知らせ、事故を未然に防ぐ技術が試されているということです。

4輪用としては既にある程度のものはできてきているそうですが、2輪には小型化や耐震性が必要で、4輪用の装置をそのまま使うことはできないのだそうです。

そうなると市販車に取り付けるまでには、更なる技術開発やそれに伴うコストの増加も課題になります。

しかし、それらの課題をクリアするために、ライバル会社同士がコンソーシアム(力を合わせて共同事業を行うこと)を組んで問題の克服に挑み、実用化を目指しているのだそうです。

バイクに自動化はあり得ない

先日、モーターサイクルジャーナリストの柏秀樹先生が、ご自身が開かれた講習会の中で「バイクは絶対に完全自動運転にならない」とおっしゃっておられました。

 ←デモンストレーション中の柏先生

つまり、バイクの走る・曲がる・止まるという動きのすべては、ライダーの身体の動き、もっと言えばライダーの意思をきっかけにしているもの。

なので、「人の意思に関係なく勝手にバイクが曲がったり、ブレーキをかけたらライダーは飛ばされてしまいます。

ですから、バイクの運転を完全に自動化することは不可能なんです。」

確かにその通りだと思います。

人のエラーにいよって引き起こされるのが交通事故。

二輪を含む自動車業界では、「今後10年をめどに交通事故死者数を今の半数に減らす」という命題を掲げています。

「人のエラー」を様々な角度から見つめなおし、人の感覚を最大限に引き上げることで事故を防ごうというのが、先生の講義の主たる内容。

ただ、メーカーとしては、「人のエラー」をある程度機械に補ってもらおうという方向にあるのようです。

ヒントはモーターショーのITバイクたち

バイクも今後社会と共存するためには、ITSと協調ししなくてはならないのは間違いないわけです。

しかし、そうした時代の変化に伴って将来のバイクの姿はどのように変っていくのでしょうか?

そのヒントはどうやら、2017年の東京モーターショーで二輪ブースに出展された、バイクたちの中にあるようです。

「彼ら」が生まれた背景を探っていきましょう。

例えばヤマハのMOTOBOT ver.2(記事はこちら)

 

YZF-R1mをロボットに操縦させて、あのヴァレンティーノ・ロッシに勝つことを目指したMOTOBOT ver.2。(モトボット ヴァージョン2)

ロッシとの対決動画にワクワクした人も多いのではないでしょうか?

確かにロッシに勝つというのは、MOTOBOT君に与えられたミッションでもありますが、「彼」にはもう一つ重要なミッションがあります。

要するにそれは「人間がバイクで走る中で、どんなことを楽しいと感じているのか?」、それを具体的に探るのがMOTOBOT 君に与えられた使命なのです。

本来、個人の抽象的な感想の中にしかない「バイクの楽しさ」というものを数値におこして、ライダーにより多くの感動を与えられるようなバイクを造るための基礎データーとして活かす。

ロッシとの対決はその指標として行われたものでした。

2017年の東京モーターショーで、開発陣の方はこうお話しをされていました。

「プログラムさえ組めば、彼は文字通り人間離れしたライディングもできるのです。

しかし、コースに石が落ちていたり、不意にタイヤが滑ったりした場合に、人間なら反射的にリカバーするところが彼にはできないんです。

つまり、彼は人間ができないことはできるけど、人間ができることはできないんですね。

彼を通して、何よりわかったのは『人間ってすごいんだなぁ』ということです。

そうした回避行動もそうですが、バイクを運転中の人の感覚というのを深く解析することが出きました。

バイクというのは人が中心の乗り物なのですが、その関係の最適化をはかるために「機械の側から見た人間」というのを見ておく必要があると考えたんです。

今回我々はそれをMOTOBOTから学んだのです。

要するにMOTOBOT ver.2は、機械が人に代わってライディングをするのが目的なのではなく、人を中心にマシンがどうアシストするかを考えるためのものだったのですね。

「MOTORiD」はもう一つの方向性(記事はこちら)

ヤマハが「人機官能」を企業理念とする中で、高次元な人とバイクとの関係を提案したのがこのMOTORiD(モトロイド)。

「Come on MOTORiD!」という柳社長の呼びかけに応え、MOTORiDが自立してスーッと柳社長に歩み寄る。

筆者もそんな光景を、驚きとともに見守りました。

これについて柳社長は、

「MOTORiDは、極低速での安全性をライダーに提供すること、そしてモーターサイクルのさらにインタラクティブ(相互的)な関係を具現化したものです」

と説明されていました。

つまりMOTORiDが電動でゆっくり立ち上がる姿を見せたのは、人間の意思をさておいてバイクが勝手に走るためではなく、まずは人の苦手をバイクが補完するのが大きな狙い。

そこに「呼んだら来てくれる機能」をつけて、まるでペットのように可愛がれるような存在としながら、バイク本来の動きを楽しめるようにと考えられたものでした。

ヤマハが出展していたITバイクたちは、人に代わって動くのではなく、あくまで人を中心にしながらアシストする方向で未来に向かっていることを示していたのですね。

ホンダ Riding Asist-e の向かうところ

2017年の東京モーターショーには、ホンダも自立走行が可能なマシンを出展していました。

このRidinng Asist-eでホンダが向かおうとしているのは、いったいどんな方向なのでしょうか?

Riding Asistについてはかつて、ホンダ二輪R&Dの上席研究員、林 徹(あきら)氏からお話しを伺ったことがあります。


↑ホンダ技術研究所二輪R&D上席研究員(シニアエキスパート) 林 徹(あきら)氏

バイクと言えば事故や騒音が想起されがちです。
ですので、こうして事故と騒音を防ぎ、自動運転の世の中でも二輪が社会的役割を果たし、社会から排除されないようにしたいと考えたわけです。
特にRiding Asistは、人間中心の自動化を具現化する目的で造りました。
まず事故を防ぐ、求めたのは、どんなスキルのライダーが乗っても転ばないことです。
バイクはもともと、低速時に不安定になる性質を持っています。
ライディングアシストでは、そこを『※ネガティブトレール』というシステムで転倒を防ぐようにしました。
※ステムが車速に合わせて自動的にキャスター角を変えて安定を図るシステム
ただこれは、すべて機械の方で動けるようにするのではなく、あくまでも人の意思をきっかけにライダーのアシストをするように動くようにしているのです。
機械が中心なのではなくて、モビリティーはあくまで人間が中心。
やはり2輪の面白さはそこにあるわけですから、何とか人が操る楽しさというものを残していきたいんです。
社会の発展に合わせながら、ホンダはその発想をこれからも大切にしていきます。

何とも心強いお話ではありませんか。

先述しましたが、やはり事故というのは人のエラーがその原因の大半を占めます。

その反面、バイクを操る楽しみというのはやはり人間固有の感覚です。

ですからホンダもヤマハも、おそらくスズキやカワサキもバイクを完全自動化することはないでしょう。

人の感覚を中心としてそれをアシストし、事故の要因を減らしながらバイクをより安全に楽しめるようにする。

IT・AIの世の中で、バイクは社会から排除されることなく、バイクであり続けようとしている姿が林さんのお話からよく分かりました。

まとめ

 

ふと世の中を見渡すと、技術は進み、今や自動運転車も未来のものではなくなりましたよね。

最近では軽自動車ですら、衝突被害軽減ブレーキ(レーダーブレーキ)や、車線逸脱防止機能、おまけに誤発進防止装置までついています。

確かに、人のエラーによって引き起こされるのが交通事故なわけです。

しかし、「安全・安心」のためだと言っては、手間や記憶や判断を躊躇なく機械に委ねてそれに慣れていく。

なんとなく人の知恵や技の価値が下がっていくような気もして、そこに歯がゆさを感じたりもします。

しかし超高齢化社会に差し掛かた現代では、人の判断より機械の判断を優先することで回避するというのも、やむを得ないことなのでしょうね。

そんなことを思いながらある日、自筆で書類を書くことになり、いざ書き出してみたのですが簡単な字が思い出せません。

思えばスマホに頼りきり、文字だけではなく、GPSのおかげでいつしか道順も覚えようとしなくなった自分に気づかされました。

このとき、「自動運転車に慣れた人の安全に対する意識が、スマホで漢字を忘れるように希薄なものになったらどうしよう?」

ふとそんな恐れが頭をよぎり、それがこの稿の執筆動機となりました。

「まもなく人が機械に使われる時代がくるので、それ相応の備えをしなくてはならない」

そう言ったのは娘が通う小学校の校長先生。

「受動的に技術の進歩を受け入のではなく、それらに頼り切らず、工夫してさらに使いこなす。

そういう態度をもって機械の上に立つ人でなくてはならない」と、おっしゃいます。

お話してきたように、将来にわたっても「バイクは人を中心にあるべき」とメーカーが息を合わせているわけです。

しかし、高度に技術が発達した中で、中心に据えられるライダーとしては今後どうあるべきだろう?

それは非常に興味深いテーマです。

校長先生にならえば、ありがたく技術の恩恵に与るとしても、しっかりとバイクをリードしていくライダーであろうと工夫を忘れないことが必要…。

ということでしょうか?

ITSが当たり前になる新しい時代の中でも、そうやってバイクを楽しんでいたいと思いますね。




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