サンタになってバイクに乗って児童養護施設で子ども達の笑顔に触れて
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「TOYRUN(トイラン)」という言葉をご存知ですか?

クリスマスになると、全国のいろんなところで、沢山のライダーがサンタの格好して走っている様子がWEBにアップされます。

単にコスプレとして楽しむ人もいるようですが、子どもたちにプレゼントを届ける活動として真剣に取り組んでいる人たちも多いようですね。

ところで、皆さんは「TOYRUN(トイラン)」という言葉をご存知でしょうか?

海外ではライダー達が、寄付を募ったり、施設や難病の子どもたちを慰問するツーリングが盛んなんです。


Phot from Thurston TALK

つまりライダー達が、社会的な手助けが必要な子どもたちに、やさしい気持ちを持ち寄ってバイクを走らせること。

これを「トイラン」と呼ぶのですね。

我が国で急速に児童虐待が社会問題となっている今、こうした動きが日本のライダーの間でも盛んになってきているんです。

千葉県・大多喜市にあるライダースカフェ「Club Bigone 風の村」が主催する「Santariders」の活動もその一つ。

2018年12月23日、筆者も彼らとともににサンタクロースになりました。

バイクだって気持ち一つで多くの人をハッピーにする

「Santariders(サンタライダーズ)」は「Club Bigone 風の村」〔以下Bigone〕代表の道家さんが、お店に集まるバイク乗り達と共にコツコツとその礎を造ってきた活動。


Bigone代表の道家さん

千葉県下の児童養護施設に、手作りのお菓子や寄付で集まったおもちゃを持って、サンタ姿のライダーたちが訪問する社会活動で、今年開催10年を迎える歴史あるトイランです。

これまで、バイクは「反社会的な力」にイメージ付けられ、排除される傾向にありました。

善意で活動する彼らもまた、そんなステレオタイプに苦しんだ時代があったと言います。

しかし、この活動を始めて彼らが最初に味わった「バイク乗りがほんの少しの気持ちを持ち寄ることで、沢山の人たちに喜んでもらえる」という感動が今に続く原動力。

信念を曲げることなく、訪問先の児童施設や地域とのかかわりを密にするなど、年間を通して重ねてきた努力が多くの人の共感を呼び、大きな広がりを見せています。

2015年11月からは、このサンタライダーズの他にも、児童虐待防止強化月間に「オレンジライダーズ」を主催。

こちら活動は今、千葉の県・市の児童家庭部局からオファーを受けた児童虐待防止PRのための公式活動に位置付けられています。

つまり、バイクによるソーシャルアクションが「善い力」として認められ、今や地域から期待される存在になっているというのが素晴らしいところです。

何より安全、そしてマナーが最優先

Bigoneは千葉県に名だたるツーリングスポット。

ネットのつながりも層を増し、全国から多くのライダーがBigoneの自家製スペシャルハンバーガーを目当てに、ツーリングでこのお店を訪れます。

そんな中、Bigoneの活動に賛同するライダーも増え、1回のトイランは70台前後のバイクが集るのも珍しくはありません。(人数制限あり)

サンタライダーズはBigoneのスタッフと有志のライダーたちが協力して運営されるもの。

スタッフは、手作りお菓子の制作や寄付で集められたおもちゃのラッピングなどの他、

道順の確認や操列方法・ガイド役の配置など、綿密な打ち合わせを重ねて当日に臨みます。


それだけに、走行前のスタッフミーティングには並みならぬ緊張感が漂いますね。

参加者には事前にネットで、マナーに対する詳細の呼びかけが行われ、当日走行前にも注意事項等の確認が行われます。


単なるコスプレランとは一線を画し、参加者それぞれがツーリングの意義を共有して走るのがBigoneのサンタライダーズ。

事故などがあれば、せっかくの趣旨が世間から真逆に受け止められることも承知していて、説明に聞き入るサンタさんたちの表情も真剣そのもの。

マナー、そして安全が何より最優先です。


’’RUN FOR KIDS!!’’

と声を合わせ、いよいよ子どもたちが待つ施設に向けて出発です。

ライダーであることを誇りに思う

バイクを愛好しているからこそ、これだけ多くの人が集い、回を重ねて仲間も増えた。

そのことに感謝しながら走り出せば、沿道や対向車の窓の中から手を振ってくれる多くの人々の笑顔に出会えることも、またありがたく思います。

今年は10年目。

毎年、12月23日に開催され、ほぼ同じようなコースを走っているので、地元の方々も我々の趣旨を理解してくださっているようですね。

寒い中、その笑顔の一つ一つが、非常に心を温めてくれました。

さらに距離を走り、一行は幾度かの休憩をはさんで、施設を目前にしたところで隊列を整えるために待機していました。

エンジンを止めて、のどかな風景を楽しんでいると、空の上から、

「さんたさーん!!」

と、子どもたちが大きな声で呼んでいる声が聞こえました。

声の方向を見ると、丘の上にたくさんの子どもたちが鈴なりになって、ある子はジャンプしながら大手を振って、


※写真↑は施設許諾のものを、道家さんの許可を得て使用しています。

「さんたさーん!!」

と声を枯らして私たちを呼び続けています。

小さい子たちがほとんどでしたから、本当に我々をサンタだと思ってくれているのかもしれません。

こうやって書きながらその場面を思い浮かべるだけでも涙が出てくるのですが、たぶん筆者がこの光景を忘れることは一生ないでしょうね。

本当に何度でも胸が熱くなります。

筆者の場合、外見はサンタでも中身は何ができるわけでもない大人。

ですが子どもたちの姿を見て、にわかにサンタとしての自覚が湧き出し、もう、いてもたってもいられません。

「待っててね、今行くよ!」

丘を駆け上がって施設に着くと、子どもたちが指導員さんや保育士さんたちと一緒に花道のように並んで待っていてくれました。

バイクにの乗り続けていたからこそ、こんな天使たちに出会う機会に恵まれた。

ライダーであることを心から誇りに思う瞬間でした。

先日筆者はNIKEN の試乗レポートをお伝えしました。

この時期にヤマハさんからNIKEN の広報車をお借りしたのも実はこの訪問のため。

NIKENをトナカイ仕様のトナカイケンに変身させて訪問。

わー、変わってるぅ」

「トナカイさんだぁ~!」

「なんで、タイヤが前に2本あるのぉ?」

「カッコいい!、僕、これ気に入ったぁ!!」

集まる子どもたちが矢継ぎ早に質問を浴びせながら、とっかえひっかえいろいろな子どもたちが喜んで跨ってくれました。

お菓子とおもちゃ、そして真心をプレゼント

今回のサンタライダーズには、ピンストライプアーティストのビートンさんと、様々なバイクイベントのMCとしても活躍しているタレントの末飛登さんも一緒に参加しています。


左;ビートン画伯    右;末飛登さん

アーティストのビートンさんは即興で子どもたちに絵を描くパフォーマンスを披露。


※画像は、昨年千葉テレビニュースで放映されたものです。

ビートンさんの筆が走り出すと、「おぉっ、これは何ができていくのかな?」と末飛登さん巧みな話術で、子どもたちの想像力を掻き立てていきます。

「アンパンまーん!」

「うんちー!」

「あっ、バイクぅー!」

子どもたちの声を受けて、真っ白だった紙の上に様々なものが出現していきました。

子どもたちを引き寄せる2人の画と話術はもはや魔法。

最初、距離のあった子どもたちは筆が進むにつれてホワイトボードににじり寄り、最後はもうビートンさんの足元近くで夢中になっています。

そんな姿がもう…、可愛らしくてたまりません。

子どもたちのあの食いつきっぷり。

「どんな豪華なモノよりも、小さな真心を伝えることが何より大きなプレゼントなんだ」

筆者にとって参加2回目となるBigoneのサンタライダーズ。

今年も大人として一児の父として、子どもたちから学ばせてもらったような気がしました。

児童虐待をなくしたい

施設での子どもたちの表情を写した写真はないのか?

そうおっしゃる方もおいでになるかもしれませんね。

私もできるものならば、この素晴らしい雰囲気を皆さんにお伝えしたいと思います。

しかしそれは叶わぬ願い。

この輝く笑顔を見せていた子どもたちの7割以上が、児童虐待を主訴として児童相談所から措置されてきた子どもたち。

子どもの身体に危険がある場合等には実親から引き離し、実親に子どもの所在を秘匿する処置がとられることも少なくはないので、子どもたちを守るためにそれはできないのです。

実は、筆者も元児童養護施設の指導員。

今の筆者が子どもたちにしてあげられることがあるとすれば、一人でも多くの人に、彼らについてお伝えすることだと思っています。

  • この国で児童虐待が増え続けていること。
  • 被虐児には、顔見知りの近所のおじさんおばさんのように、会えば世話を焼いてくれるような「味方」がたくさん必要なこと。
  • バイク乗りは誰でも、気持ち一つで彼らのためのサンタになれること

今回はそれをお伝えしたくて、この稿を書いているのです。

サンタが来ない子をなくしたい

「子どもたちに真心を」

と思ってはじめたトイランへの参加ですが、実際に行ってみると、それを目当てにしているわけでもないのですが、逆に子どもたちから沢山の心をもらって励まされている自分に気づきます。

今年はもうクリスマスも終わり。

クリスマスには千葉だけでなく、様々なところで多くのライダーたちが、サンタクロースになって子どもたちに暖かい気持ちを届けています。

ある種、季節限定の仮面ライダー?

サンタライダーズは子どもたちの正義の味方です。

もし少しでも、興味を持ってくださった方がおいででしたら、ぜひ今度のクリスマスには最寄りの地域でサンタライダーになってみてください。

持ち物はサンタの衣装と小さな真心、そして参加マナーと安全運転。

きっと来年も、あなたがバイクでやってくることを喜んでくれる子どもたちが、施設でたくさん待っています。

サンタが来ない子をなくしましょう!

取材協力;Club Bigone 風の村

車両協力;ヤマハ発動機販売株式会社




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