目次
前回までのあらすじ
こんにちは、大学生ライダー板倉です!
この「I LOVE BIKE」というシリーズでは、僕が免許を取る前に体験したバイクにまつわるお話や、免許取得後にたくさんの距離を走ったなかで出逢った人々や様々なエピソードについてお話しています。
ここ数回は、昨年(2018年)の夏休みに長野(上田)の実家に帰って行った弾丸ツーリングの模様などをお伝えしていました。
前回は、9月に入って学校行事のため北海道へ戻らなければならなくなり、ならばと敢行した関東経由の北海道一周ツーリングのお話。
長野から富士を回って東京湾を横断したり、台風から逃れながら東北地方を縦断したり、四苦八苦しながらなんとか北海道へ再上陸。
しかし、僕の住んでいる札幌付近はあえて素通りして、免許取得前にお世話になった女満別のお師匠様と再会。
ライダーハウスEZOライダーで停泊した5日目の夜までをお話しました。
全9日間のツーリング、後半となる今回はこの女満別のEZOライダーが、道北へと向かう旅へのスタート地点となります。
知床を満喫したい!
台風が過ぎても風がまだ強く吹き、木の枝などがそこら中に散乱した状態で迎えた朝。
宿を共にしたライダーの方々の中には、天候を見て動き出す方々と待機する方々とがいました。
ちなみに、僕は後者から前者に転身。
午前10時過ぎまで待機していましたが、風が弱まった隙を見て出発です。
知床→網走へ、一人+一台の旅
台風の為、前日に見ることができなかった摩周湖と硫黄山へ。
摩周湖は霧に包まれ、さながら「霧の摩周湖」という感じに。
湖面も見えなかったので、すぐに硫黄山(サヌトヌプリ)へと向かいました。
知床周辺を訪れるのはこれで3度目。
ですが愛車のレイ(HONDA・XR230)では初めてのこと。
台風の過ぎ去ったにもかかわらず少し曇っていましたが、文句を言っても晴れるわけではありません。
摩周湖をぐるりと回るように迂回し、神の子池へ。
瑠璃色の澄んだ水を湛える湖面が、実に神秘的ですよね。
やはりはココは、知床に行ったら外せないスポットの一つでしょう。
そしてさらにアップダウンの直線が続くミルクロードで有名な開陽台周辺(中標津(なかしべつ)町)へ。
ここのマストアイテム「はちみつソフト」で疲れを癒しながら、暑さを癒しました。
映像参照元;ANA/道東・中標津エリア/「アイスを愛す」
こんな↓景色を眺めながら、食べるソフトは格別なので、オススメです。
水平線がはるかに続き、目をこらすと少し湾曲していて、「地球って丸いんだなぁ」と実感することができます。
この景色を堪能した後は、さらに東へと道を進め、野付半島へ向かいました。
ここは砂嘴〔さし〕と呼ばれる土地で出来ており、海抜はわずか2~3mほど。
左右をに広がる太平洋と、空まで続いているようなまっすぐな道。
後世は海水面上昇の影響でいつか沈んでしまうのではないかと言われていますが、恐らく僕が私が生きているうちは沈むことはないでしょう。
ずっとこのままであると良いのですが…。
そのまま北方四島の一つ、国後島を横目に知床半島を北上し、知床峠へ。
頂上で望むことができる羅臼岳に見事に霧がかかり、
我ながら見事な写真を撮ることができました。
恐らく条件が整わなければこのようにならなかったと思うので、これは奇跡の一枚。
訪れたタイミングも良かったのだと思います。
さらに知床峠を下り、今度はオシンコシンの滝へ向かいました。
既にこの時は日没に差し掛かるところ。
周囲の景色が夕日に赤らんできていて、滝の風情を深めていました。
結局、このままオシンコシンの滝で日没を迎えてしまいました。
北海道の夜道は人工的な光がヘッドライトとメーターの明かりだけになるので怖いんですよね。
宿に向かう足を速めなければなりません
宿泊を予定している網走の旅館までは、ここから約70㎞先。
それでも何とかたどり着き、この日はバイク漫画「ばくおん!」にも登場した、「呼人(よびと)旅館」に泊まりました。
夕食は宿のご主人自慢のジンギスカン定食。
このボリュームが宿泊費とセットで1700円というから驚きです。
お部屋も単身だと広く感じ、テレビもあってなかなか快適。
1泊ですがこれは贅沢なお宿です。
美味しいジンギスカンでおなかを満たし、その日の夜は次の日の稚内に向けて準備をして就寝。
しかしこの後、まさかあんなことが起こるとは誰が予想できたでしょう…?
網走で北海道胆振東部地震に遭遇!
旅の疲れで夢うつつだった夜中。
突然の大きな揺れに起こされました。
そうです、北海道胆振東部地震が発生したんです。
突然電気が消えましたが、揺れが収まったあと、すぐに復旧するだろうと寝てしまいました。
しかし、朝起きても電気は復旧しておらず、外を見ると信号も点灯していない。
完全に停電しているんだとそのとき改めて気が付きました。
スマホを見るとたくさんの心配の声が。
家族からも、北海道のライフラインが絶たれているようだと連絡が来て、さてどうしたものかと、家族やバイト先に電話をしたり。
早朝のうち、あっという間にスマホの充電が減っていきました。
ここでツーリングを続行するか、もしくは中断して家に帰るか、難しい選択が迫られます。
しかし、ふと外を見るとツーリングライダーたちは悠々と走っていたんですよね。
また、「札幌ではいまだ断水はしているものの一部電気が復旧してきている」という一報が。
『今家に帰ったところで水は手に入らないだろうし、電気が復旧してきているのであればそのうち何とかなるだろう』と思い、ツーリングを続行することを選択しました。
震災直後は宗谷岬へ
予定通り、というわけにはいかなくなりましたが、最北端稚内を目指して再出発しました。
僕の他にも、もしかしたらという希望を見出して観光地に出かける観光客の方々もいました。
稚内までの道中にある、能取(のとろ)岬と道の駅だけは営業していて、
稚内方面からやってきたツーリングライダーと、ガソリンスタンドなどの話などをして走り続けることができるのか情報を交換しました。
彼らの情報のおかげもあって、何とか夕方には宗谷岬へ。
宗谷岬は実は2回目。
6月末(3カ月前)に弾丸でツーリングを敢行した際に一度来たことがありました。
その時と比べても観光客はいないし、お土産も売ってない、おまけに地震の影響で海鳥たちも巣にこもって飛んでいないという状態。
ただただ波の音が聞こえるだけの静かな岬になっていました。
この日宿は「ライダーハウス みどり湯」。
ここはみんなで歌を歌ったりして盛り上がる有名な宿なのですが、稚内も停電している状態。
自家発電によるテレビとろうそくで過ごす夜でしたし、さすがにこの日、宴はありませんでした。
地震が起きて、ここで2泊目を過ごす人もいれば、僕のようにここを目指して走ってきた者もいます。
走り続けたからこそ、このように出会うことができたんですよね。
彼らは元気にしているでしょうか?
さらに北上!ノシャップ岬へ
実は稚内到着時、僕の財布はガソリンを補給できないくらい寂しくなっていました。
しかし、翌日になって稚内にもようやく電気が来るようになり、ATMで金欠を脱することができので少し安心。
そんなこんなでライダーズハウスみどり湯を後にして、で知り合い、ノシャップ岬へと向かいました。
写真の方々は「ライダーハウス みどり湯」で北海道の話で盛り上がった栗原さんとμさん。
別々に宿を出発したはずなのに、なぜかノシャップ岬で再会するという、不思議なご縁。
彼らとは、いまだに連絡を取り合っている仲になっています。
雲の低いノシャップ岬。
道北の9月は本州からすれば秋半ばといった寒さです。
その後、彼らとは道が分かれてお別れとなり、今度はオロロンラインを通り旭川を目指しました。
ここからが本当の「帰路」
前作からお読みいただいている方はお分かりのことと思いますが、出発はこの7日前。
そもそも長野県上田市の実家をスタートして札幌近郊にある拙宅がゴールなのですが、既に拙宅の近所は数日前に素通りし、富良野→女満別→知床→稚内を旅してきたわけです。
なので、このノシャップ岬が折り返し地点であり、本当の帰路とということになるでしょうか。
ノシャップ岬から旭川へ
ひとまず、ここノシャップ岬からは、いくつかのポイントを巡って旭川を目指します。
その途中、オトンルイ発電所で写真撮影。
風車がずらっと並んでいる風景、「絵になる風景」というのはこういう景色のこと?
というか、北海道ツーリング屈指の「映えポイント」というのは間違いないですね。
ここでは道内で被災したであろうツーリングチームにヤエーをして南下。
この後は旧三毛別(さんけべつ)村へ向かいました。
「クマ出没注意!」の意味を知る
この三毛別の六線沢には、「三毛別羆事件復元地」※というのがあります。
※(羆=クマのこと)
再現されているヒグマを見に行くと、その大きさに唖然。
で、デカすぎる…
体重340kg、大きさは2.7mと人間よりはるかに大きく、写真で比べても分かる通り、口には頭がすっぽりと入りそうな大きさをしています。
ちなみに「羆事件」というのは、大正4年12月9日から14日にかけて発生し、尊い10名の命が奪われた日本史上最悪の熊害事件。
このあたりは閑散としていて寂しい場所なのですが、、今でも実際にクマが出没すると言いますから、ご来訪にはご注意を。
クマの恐ろしさを改めて知ったそのあとは、留萌(るもい)で給油をして無料高速の深川留萌自動車道を使って旭川へ。
まずはレッドバロン旭川へ向かいました。
写真参照元;Googleマップ
このころには電気も復旧していたので、地震の影響でできなかったオイル交換を依頼。
復旧したばかりの慌ただしい状況にもかかわらず、なのに親切に引き受けてくださったメカニックの方に感謝します。
この旭川では知人と合流してそのお宅に一泊。
被災後でやはり大変な状況なのに泊めていただいて、ご迷惑をおかけしました。
いよいよラストスパート!旭川から札幌へ
計画では翌日、旭山動物園に行く予定。
地震の影響に遠慮しながら調べると、なんと開園予定!
それを知り、開園からしばらくたった時間を狙って知り合い宅を出発。
なかなか一人で動物園に来るというのはないですが、動物好きの僕はお構いなし。
特に好きなのが鳥類で、ペンギンはもうかわいいの一言に限ります。
写真↑はフンボルトペンギンで、南米に生息する、寒がりでシャイなペンギンです。
旭山動物園は、アザラシが通るチューブ水層があることでも有名ですよね。
こんなに目の前でアザラシが泳いでいるところを見ることができるし、アザラシの方もこのチューブはお気に入りの様子。
何度も行き交う姿を見ていると、楽しい気持ちになってきます。
そんな旭山動物園を後にし、再びオロロンラインを目指し、峠を越えて3時間。
昨年(2018年)に新しくできた道の駅「あいろーど厚田」(石狩市)で休憩。
夕陽を横目に大きなガソリンスタンドで給油し、いよいよ札幌市内へ。
既に寒くなってきた市内では、たい焼き屋「たいやき工房」へ行って軽食。
「ハネ」もついていて、ふちはカリカリ、生地はモフモフ。
ホカホカなあんこ(もうひとつはカスタード)が、寒さと長旅で疲れていた僕を回復させてくれました。
最後はさっぽろテレビ塔の下、大通公園で帰ってきたことと、旅の最後の通過点ということで写真撮影。
この時、偶然にも17:00ちょうどでした。
これまで数千㎞を走り、夕日に赤らんだレイ(HONDA・XR230)には貫禄がついた様に見えます。
そしてついに家に到着!
この夏休みの長旅に終止符を打ちました。
長かった夏休み、ここまで僕とレイはたった一か月で9000㎞という型破りなペースで走り抜きました。
223㏄単気筒・空冷・キャブのレイですが、結局転倒してミラーが壊れたくらいで、消耗品以外に壊れた部品はありません。
『無茶ぶりの様な僕の冒険に良く付き合い、故障もせずよく頑張ってくれた』
旅を振り返り、レイの頼もしさに感動です。
次回予告
このあと僕は、学校行事などでインターバルを置いて、次回お伝えする「秋ツーリング」の準備に入りました。
いよいよ、運命のあの(・・)日(・)を迎えてしまいますが、最後までお付き合いいただければ嬉しいです。